中編6
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壁紙工事

中年のおっさんです。

学がないので誤字脱字を勘弁してくれたら幸いだ。

あれはまだ若い頃そう親方の会社で内装(壁紙)職人をしていた時の事だ。

春になると地元に国立大学があるためアパートの転入出で寝る間も無いほど壁紙の張り替えが忙しい。

その一室でおきた不思議な出来事だ。

ある晩同業者のK君から応援要請があった。

「夜遅くに悪いんですけど手伝って貰えないですか?」

現場を聞くと自分のいた現場から車で20分ぐらいの場所だった。

時計を見ると23時近くを指していた。忙しいのか何か切羽詰まった感じだったので片付けが終わり次第向かうと答えた。

24時近くにK君の待つ現場に到着した。

するとK君は自分の車の横でしゃがみ込んでいた。

なるほど大分お疲れの様子だ。

軽く挨拶を交わし差し入れの缶コーヒーを渡すとK君が話しだした。

「明日10時に入居でハウスクリーニングはクロス(壁紙)工事の前に終わってるから絶対に朝までに仕上げなきゃまずいんですよ」

なるほど焦るわけだ。

しかしそのわりに部屋に入りたがらない。

するとK君が

「正直に言いますけど馬鹿にしないで下さいね。

実は和室の押し入れにおじいさんと小学生くらいの子供二人の三人で体育座りしてるんですよ俯いて」

鳥肌がたった。

ちょっとまってそれって入居者が居座ってるのか?

それともアレかな?

K君

「はい アレですね」

混乱した。

いや固まった。

そうだK君は見えちゃう人だった。失敗した。

電話で詳しい状況を聞くべきだった。

そうして落ち込む二人は例の部屋の玄関をため息まじりに開けるしかなかった。

部屋に入る前にK君にいくつかアドバイスをしてもらった。

『もし見えてしまっても驚いて騒がない』

『故意に目を合わせない』『ようは気付いていない振りをする事』

難しいな自信がない。

意を決してドアを開けた。

確かに空気が重いし室温が外にくらべて寒い 。

いくら鉄骨のマンションで空き部屋だからといっても寒すぎる。

簡単に間取りを説明しておく。想像してほしい。

まず玄関を開けてすぐにダイニングキッチンで入ってすぐ左に造り付けの下駄箱。そのうらに隠れるようにシステムキッチン。

入って右には和室の入口さらに右奥に洋間の入口。

ダイニングキッチンの左壁側にトイレ風呂クローゼットがある。

この説明では分かりづらいがようは2DKだ。

K君と段取りをして仕事を始めた。

まずはダイニングキッチンだ。もちろんK君と二人で作業をする事にした。

まず面倒な所を引き受けた。

キッチン周りから張りだし下駄箱周りと玄関だ。

下駄箱周りで作業しているころから異変を感じた。

視線を感じる。

ずーっと見られている感じだ。K君を見ると遅れを取り戻すのに夢中で作業している。

参ったなぁと天井を仰いだ時に固まった。

有り得ない。

下駄箱の上におばあさんの顔が

しかも鼻から上だけちょこんとのっている。

その目がじぃっとこちらを見ている。

あぁやっぱり出たかぁ。

しかしK君のアドバイスが良かったのか気持ちに余裕が出来ていたようだ。余り恐怖感がない。

しかし余り見つめ合うのも気が引ける。

なるべく自然に視線を手元に戻し作業を続ける。

「あぁ早く帰りたい」

一人つぶやいた。

相変わらず夢中で作業しているK君。

そのおかけで例の和室以外の壁紙はだいたい張り替えが終わった。

いよいよメインの和室に挑む頃には時計の針が深夜3時を指していた。

K君が

「ちょっと休憩しながら作戦考えましょうか」

そうだね疲れたしね。

と二人で部屋をでた。

煙草に火をともしやっと一息ついた。

あぁ初めて見ちゃったな。

申し訳なさそうにK君が

「あのですね例の和室にある押し入れなんですけどね実はあの中に和室に張る壁紙が置いてあるんですよ」

固まった。

押し入れには老人と子供のアレが要るはず。

しかし壁紙が無ければ仕事にもならない。

するとK君は驚く事を言い出した。

「たしか幽霊とか見たことないですよねぇ」

「材料を押し入れからとって襖閉めてくれませんか」

参ったなぁ。

ついさっき見てしまったんだよ。

言えないよな。

やっぱり今夜は諦めてあしたに

言いかけたらK君が被せるように

「絶対に今夜仕上げるしかないんです!お願いします!」

心の中で無理に決まってるだろ。

つぶやく自分。

しかしK君の期待を裏切れない。

頼める人が他にはいなかったのだろう。たぶん・・・。

分かった。俺が材料を押し入れからだすよ。

それに襖も閉める。

でもな和室には二人で入ろうな。

喜ぶK君。

先ほどとは違い明暗のはっきり別れた二人が重いドアを開けた。

覚悟を決めて和室に入る。

さらに寒く感じる。

まだ押し入れに老人や子供のアレがいるとはかぎらない

い いた。

確かに俯いて体育座りをしている。

もうこうなると笑うしかなさそうだ。

K君は押し入れに背を向けている。

よし気合いを入れて材料をさがす。

ないなぁまさかなぁ。

あぁやっぱりだ。

老人と子供の座っているであろうあたりに壁紙がある。

さてと帰るか。

無理に決まっている。

しかしK君のすがるような眼差し。

はぁぁ。

ため息を一つついて壁紙に手をのばす。

そしてついに壁紙を引っ張り出す。

なんだ壁紙に座っているかと思ったら実は見えるだけなんだ。

よし材料確保。

あとは襖を閉めて終わりだ。

スッー。パタ。

あれ!マズイ!

閉めた襖のすき間から子供のアレの腕がパタパタしている。

閉めたらやっぱりマズイのか?

よし知らないフリして

K君材料とって襖しめたよ。と声をかけた。

振り向くK君。

一瞬固まるK君。

引きつりながら

「じゃあ始めますか」

さすがK君だ。

気付かないフリをしている。

アレの腕も消えたみたいでスムーズに壁紙工事は無事?に終わった。

片付けをすまし車に乗り込もうとした瞬間に突然K君が

「あっ!ちよちょっと待って!」と叫んだ。

一瞬びっくとして振り返る。

何?何?何?

近寄って来たK君。

おもむろに何かを振りかけられ更にびくつく。

K君いわく

「いちを塩で清めますから。車の中までついて来たらやじゃないですか?」

そう言って自分にも塩を振るK君。

おまじない的なものらしい。

ちょっと先のコンビニで一息つけて帰ろうとK君を誘った。

二、三聞きたい事ももちろんあるからだ。

すでに明け方5時近くになっていたが不思議な事に眠さは感じなかった。ただ全身を達成感が包んでいた。

缶コーヒーを一口飲み煙草に火をつける。

紫煙が目にしみる。

なぁさっきの現場はなんかあったのか?

K君の話しでは

「別に事故物件でもなんでもないんですよ。

ただ霊の通り道みたいな感じなんですかね。

だから悪い感じはないし。しいて言えば着いて来たらマズイかな。みたいな、ね。」

釈然としないな。

続けてK君は

「それに見えて無かったでしょ?」

イヤイヤ見えてました。

「あれ!じゃダイニングキッチンで浮いてたおばあさんも気付いてました?

ずーっと後ろで浮いて不思議そうに見てましたよ。

壁紙張るの」

気付いてたのK君も。

人が悪いな。

「下駄箱に刺さってましたよね。だから俺気味悪いから夢中で張ってましたよ。見えないみたいで良かったと思ってました」

だってK君気付かないフリしろって言っただろ!

まぁ何事も終わりよければ全てよしとするか。

帰りぎわにK君が

「なにかあったら連絡下さいね。今日はありがとうございました。お疲れ様でした」

そうしてお互い車にもどり仮眠をとって仕事に向かった。

幸いな事に浮いていたおばあさんもついて来ていないみたいだ。

今でもあの部屋は入居者の出入りは頻繁らしい。

終わり

怖い話投稿:ホラーテラー プリン体さん  

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