短編2
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A子さん

父が親戚の葬儀に参列した時の話。

父は葬儀から帰ってくるなり、「いや〜A子さんは凄いなや〜」と、感心のような、畏怖のような微妙な面持ちで葬儀の内容を話し始めた。

亡くなったのはA子さんの父である。遠縁の為、うちとどんな間柄かまでは私には分からない。

このA子さん、40歳を過ぎたおばさんなのだが、幼い頃から物凄く霊感が強いのだそうだ。

初めてソレを見たのは5歳の頃。自宅の庭の井戸から全身緑色の人間がはい上がって来たのだそうだ。その人間はおぼつかない足取りで敷地の外に去って行った…。

お祖母さんに見たままを報告した所、「それは戦争時代に亡くなった兵隊さんなんだろうね」と、A子さんの頭を撫でながら優しく言ってくれ、その後2人で井戸の傍に稲荷寿司をお供えした。

その後も次々と見てきたそうだが、霊感が強いA子さんを気味悪がる人は周りには誰もおらず、A子さん自身、幼い頃から見ていて耐性がついている為、それを自分の個性と受け止めてあっけらかんとしていた。

話を葬儀に戻す。

和尚の読経の最中、A子さんは棺の上にソレを見つけていた。亡くなった父の顔である。棺から起き上がったような態勢だが首から下は透けていた。目を瞑り、頭に三角の布(天冠?)を巻き、棺の中に入った状態の顔なのだろうが、じっと読経を聞いているようだった。

読経が終わり、和尚が立ち上がった瞬間、父の霊もすっと立ち上がった。そして和尚が歩く方に付いていったのだ。その瞬間、A子さんが「あ、お父さんが行っちゃう…」と呟いた。

その言葉を近くに座っていたうちの父が聞き、A子さんに話し掛けてみた所、彼女の霊感話を詳しく聞く経緯に至ったのだそうだ。

A子さんには子供がいるが、霊感は遺伝しなかったようだ。というか、血縁者の中でA子さんしか霊感を授かっていない。

「きっと何かの使命なんだろうね。見守ることしかできないんだけどね」

そう、さらっと言ってのけたA子さんは、今日も日常の中にソレを見つけているんだと思う。

私…零感で良かった…。

怖い話投稿:ホラーテラー ちゃこさん  

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