中編3
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坂の上の神社

今から10年前、仕事の都合で都内から実家に戻った年の6月の事。

我が家の裏には坂道がある。山の斜面を切り崩して作られた坂道だ。そこを上ると左手に神社があり鬱蒼とした林が広がる。坂道を真っ直ぐ行くと平野・・畑が広がる。

その神社には鎌倉か江戸なのか時代は知らないが、この地方を仕切っていた殿様の墓を祭ってある。いわば菩提寺も兼ねている。

そして神社の御神体は鏡。

いつの頃に植えられたか分からないが、杉の木が多量に植えられている。ご神木として祭られる樹もなかにはあるのだがー。

神社を管理・運営している神主は神社・本殿から50メートルほど近くにある家で暮らしている。

さて私が実家に戻って初夏を迎えた頃。

坂に面した部屋で寝ていた私は、奇妙な音で目が覚めた。カーンカーンと鐘を叩くような音。家の中ではなく外から聞こえてくる。

思わず窓を開け聞いてしまった。確かに聞こえる。坂のほうから。神社がある林のほうから。だけど坂道の外灯しかみえない。時間は朝の3時。不思議に思ったのだが、仕事もあるし気味も悪いし布団かぶって寝てしまった。

しばらくその音を聞いていた。時間は朝の2時から3時にかけて・・。

気にしないで寝るようになっていた。親に言っても知らぬ存ぜぬで聞き入ってくれない。

8月になっても毎日ではないがその音は聞こえていた。しかし盆を向かえると聞こえなくなった。

盆に姉が子供を連れて里帰りしてきたので、一連の話をしてみると「あたしも聞いた」と「2時ごろから3時にかけて聞こえてきた。とても怖かった」と話してくれた。

お産のときに里帰りした際に聞いたのだそうだ。不思議な事もあるもんだねーと二人で話してその話は終わった。

そして冬になってそこの神主と話をする機会に恵まれたので、不思議な音の話をした。

すると神主はいとも簡単に

「ああ、それは、」

「わら人形を打つ音だよ」と

さらりと言ってのけた。

「たまにあるんだ。たまにって言っても何年かに一度くらいなんだけどな。

音聞こえたら、昼間、ご神木とか林の樹を見て回らなきゃならないんだ。

なぜかって?そりゃわら人形を探すためさ。もう大変でさ。

え?音が聞こえてるときに探しに行けばいいって?手間が省けるって?

バカいうな。丑の刻参りしてるのを誰かに見られたら、呪いが失敗して刻参してる人間に災いが行くんだぞ。

だから昼間行って探すんだ。すげー大変なんだぞ。あの林だぜ?

でもまぁ大抵はご神木なんだけどな。ははは。

音が聞こえなくなったら引き抜くのかって?

いや、引き抜く前から祝詞は上げておくんだよ。

だから探すのさ。それこそ血眼になってな。それも大変なんだぞ。

祝詞をあげてるのを刻参りしてる人間にばれないようにしないといけないからな。

なんで祝詞をあげてるのかって?

そりゃ呪いを封じるためさ。そんで釘打つ音が聞こえなくなって、それからしばらく経ってから抜いて護摩と一緒に燃やすんだー」

と愉快そうに笑いながら話をしていた。

「だけど、どうして見つからないときもある。」

と少し悲しそうな表情で話もした。

そういうのは年数がすぎてから、かなり朽ちた状態で見つかるのだという。

念入りに祝詞をあげるのだとか。

音が聞こえるからと言って不安な気持ちになってはいけない。

呪いは人の念だ。そういうのにはやはり気持ち、心の強さが必要になってくる。気持ちを強く持ちなさい。はっはっはっ。と笑いながら話をしてくれた。

鐘の音が釘打つ音だったとは・・

しかもわら人形だなんて・・

正直びっくりし、もうその音は聞きたくないなと思った。

幸い、この数年間は聞いていない。

最後に

「呪われた相手はどうなったのですか?」と神主に聞いたのだが

「そんなもんは知らん」と一蹴されてしまった。

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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