昔、地元の高校の野球部が甲子園に出場する事になり、友人と私計三人で応援に行くことになりました。
大阪に知り合いが居るので大阪のホテルに泊まる事にしました。
大阪に着いて、その日は街を観光して夜は飲みに行こうと言う話になりました。
夕方大阪の友人と合流して北新地で飲みたいと言ったら、あそこはとても高級で東京で言えば銀座みたいなところで、自分も飲みに行った事が無いから梅田で飲もうと言われました。
と言っても、大阪の友人は行きつけの店は無く、会社の人に電話して聞いていました。
どこかの交差点から電話していたのですが、電話の相手にそこから東へ20歩歩いたビルの3階の○○と言う店と教えられた様です。
ずいぶんアバウトだなぁと思いました。
やはりビルの3階に行っても、教えてもらった店は有りませんでした。
仕方が無いのでとりあえず飛び込みで知らない店に入りました。
そこの店には年配のママと小太りの若い女の子と二人の客がいました。
私たちはボックス席に案内され、テーブルにはママが着きました。
カウンターでは店の女の子が二人の客の相手をしています。
関東では考えられないくらいママのテンションは高く大いに盛り上がったのを覚えています。
私たちがはしゃぎ過ぎたのか、カウンターの客は怒って居る様でママが諌める事も有りました。
私はトイレに行きたくなり
トイレに行くと、洗面台の前で青いドレスを着た痩せた髪の長い女性がいました。
「失礼」と一礼しトイレに入り用を足しながら、遅番の店の女の子かなぁと思っていました。
席に戻り相変わらずテンションの高いママと盛り上がっていると、ママが不意に「女の子居なくてごめんね」と言ってきました。
私は「さっきトイレで遅番?の女の子と会ったよ。」と言いました。
カウンターの客も話を聞いているようです。
ママは「どんな子?」と聞いたので、特徴を伝えました。
するとカウンターの客が「ゆうちゃんや」とママに話し掛けます。
私たちは普通に飲んでいましたが、ママはゆうちゃんについて話してくれました。
ゆうちゃんは元々千葉県の出身らしく、ここの店に二年近く勤めて賑やかな雰囲気が好きだった事。
青い色が好きで良く着ていた事。
自宅のアパートでくも膜下で突然亡くなってしまった事。
カウンターではさっきまで怒っていた客がゆうちゃんを懐かしむように穏やかな感じになり、「あの子は賑やかなのが好きだったから今日は楽しんで行ってくれ」と関西弁で言ってチェックして帰りました。
ママも「久しぶりに関東のお客さんが来たから、あの子も懐かしかったのかもね。」と関西弁で言っていました。
その日は四人でボトルを空け、ビールもかなり飲んだのに凄くサービスしてもらって会計が安かったのを覚えています。
ずいぶん昔の話で翌日甲子園で応援した地元の高校のピッチャーは延長17回を投げきり、今はメジャーリーガーです。
怖い話投稿:ホラーテラー オレンジさん
作者怖話