中編3
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駐車場

私が幼い頃、私の家族は毎年夏休みになると栃木県の那須にある親類の別荘を借り、そこを避暑地としておりました。

この話はその旅行中に起きたなんとも恐ろしい体験です。

私が小学校五年の夏。

この年も恒例でその別荘に来ておりました。

かなり山奥にあり電気も通っておらず、人気も無く、のんびりと夏を過ごすには絶好の場所でした。

滞在四日目。

カラオケ好きの私の両親はこんな場所に来てまでもどうしても唄が歌いたくなってしまったらしく、山を少し下った場所にあるカラオケスナックへと向かいました。

カラオケスナックとは言えども名ばかりで、畑の真中にポツンと一件建ってるだけの寂れた所でした。

二時間もそこに居た頃だったでしょうか。

時計は11時をまわり、私は必死に睡魔と格闘していました。

そんな私を見て父が車の中で眠る事を勧めてくれたので、私は父から車のキーを借り駐車場へと向かったのです。

しかし車の中に入り、いざ眠ろうとすると面白いもので全く眠気が襲って来ません。

私はする事も無く車の中に置かれていた懐中電灯を手にし、それで辺りを何の気なく照らしていました。

すると、我が家の車の隣に止まっていた車の中に人影があることに気が付いたのです。

子供心に懐中電灯で照らすなんて失礼に当たると思い懐中電灯を別の方向に向け、ゆっくりと電気を消しました。

しかしながらどうしてもその人影が気になり、横になり眠ったフリをしながらその車をジッと凝視していました。

確かに人がいるようですがその人も私に背を向けている様子で顔などは全く判りません。

でも・・・・・。何かがおかしい・・・・・。

その人は全く動かないのです。

横になっているでもない、かといって何か人と見間違えるような物にも見えない・・・・・。

私は少し背中に寒いものを感じ、その場を離れる決意をしました。

その時です。今まで何の動きも見せなかったその人が徐々にその体をこちらに向けようとしているではありませんか!

いや、それは正確な表現ではありません。

体ではないのです。首から上の頭部だけがゆっくりとこちらを向こうとしてるのです!!

私は動こうにもその場から身動きがとれなくなってしまいました。

長く暗闇に居たせいで目が慣れ、今まさにこちらを向こうとしているその人の顔の輪郭さえもハッキリと伺えるようになっていました。

徐々に、徐々に・・・・・・。

顔が半分もこちらを向いた時、私は絶句したまま完全に固まってしまいました。

振り向いたその人の顔は全面がケロイド状態になっており、どこが鼻でどこが目なのかすら判別がつきかねるようなものだったのです。

『逃げなければ!!』

瞬間的にそう思ったのですが、体が金縛りのようになり、まったく身動きが取れないのです。

兎に角目を閉じ、

『夢なら醒めてくれ!』と、何度念じた事でしょうか。

4、5分後。ゆっくりと目を開きました・・・・・。

そこで私が見たものは・・・・・・。

私の眼前まで迫ったその人の顔!!

その後の記憶はまったく無いのです。

気絶したのでしょう・・・・・。

父に揺り起こされて目を覚ましました。

その事を父に話したのですが、

「夢でも見たんだろう」と全く取り合ってくれません。

しかし、私のあまりの狂乱振りに母がお店の人に誰か車に乗っていたか聞きに行ってくれました。

数分後店からは母と共に店のマスターが出てきました。

そして私にこう尋ねたのです。

『その人はどんな人でしたか?』

私は夢中でその人の特徴を彼に伝えました。

するとマスターの目から一筋の涙がこぼれたのです。

そして彼は淡々とした口調で語り始めました。

『それはおそらく4年前に焼身自殺をしたうちの娘です・・・・・。』

マスターの娘さんは高校でのいじめを苦に自殺してしまっていたのでした。

彼女は駐車場にあったガソリンをかぶり焼身自殺を図ったのだそうです・・・・・。

その時、私は思い出しました。

私が気絶する前、彼女が発した言葉を・・・・・。

「憎い・・・・・。」

怖い話投稿:ホラーテラー TRIANGLEさん  

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