中編5
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行く末が心配

今までちょっと幽霊っぽいような、そういう怖い話を投稿してきましたが、今回は生きている人間の方が怖いこともある、という話です……。

私は小学校5年生まで、公団に住んでいました。

公団といっても地方の片田舎ですから、たかが知れたもの。五年生までいれば、公団内の小学生なんて、転入出に至るまで把握していました。それどころか、町内会の関係もあって、近所の子供はみんな知っているくらいでした。

だからこそ、その手紙がきた時は気持ちが悪かったのです………。

ある日、私が学校から帰ると、母がエプロンのポケットから一通の手紙を出してきました。

団地の特性上、転勤族も多かったので引っ越した友人も多く、手紙がくるのも珍しいことではありませんでした。

でも、いつもは机の上に置いておいてくれるのに、何故か今日はポケットから。ついさっき共同玄関の郵便受けから持ってきたんだろうか、と思ったのですが、そうではありませんでした。

「今朝、見送る時にゴミ出しもしたじゃない?その時に郵便受けから持ってきたんだけど……これ、切手も消印もないの。直接投函だよ」

この時点で妙な話でした。

公団は、小学校も中学校も校区の一番端にありました。それゆえ、家を出るのも早めでなければならないのに、その時にはもう郵便受けに入っていたというのなら、前日夜か早朝に来なければいけません。

夜といっても、昨晩遅くに父が帰宅する際にも郵便受けを確認してから帰ってきているはずなので、夜だとしたら深夜ということになります。

でもそんな、一般的に人の出歩かない夜中や早朝に出歩くような所謂「悪い子」は心当たりなんてありませんでした。

私が学校へ行く前に出発した公団の誰かが登校途中で投函、なら不自然でもないのですが、封筒に書いてある名前にそんな子はいません。

なんか気持ち悪いな…と思いつつ開封した手紙の内容は、更に気持ちの悪いものでした。

端的に言うと、ストーカーです。

相手は小学生。しかも恐らくは年下の。同い年以上と推測するにはどうにも、漢字が少ないし、文章も稚拙な感じで、字も汚いからです。

内容はといえば、私が好きなキャラクター、クラスで仲の良い友人の名前等が書いてありました。

それらはまぁ、隠していることでもないし、すぐに情報収集できる範囲です。

ところが、週末に出掛けた場所、そして昨日コッソリ行った(親には言ってから出掛けましたが、校区外なので)店と、そこで買った物のことまで書いてあったのです。

そういった事を並べ立てて、僕はこんなにあなたを見ています、なんでも知っていますと言い、今日公園で待っているから来てほしいと言うのです。行かなければ死んでやる!とも。

私は凄く怖くなりました。

誰かに教えていないこと、しかもつい昨日のことまで知られているのは勿論、こんな尋常じゃない相手だったら本当に死んでしまうかもしれないと思うと、怖かったのです。

どんな手紙だったの、と気にした母に打ち明け、そんな気味悪いものに行かなくていい!と止められたので行きませんでしたが……。

それから暫くは、周囲、ことに後ろを気にする日々となりました。

学校での事をあれだけ書かれている以上、たぶん相手は同じ学校内……ロリコンの変態オヤジに目を付けられるのも気色悪いですが、身近すぎるのがまた気持ち悪かったからです。

でも、私が警戒するようになったからなのか、それとも趣味の悪い悪戯だったのか、怪しい誰かが居ることも、私について探りを入れる子が居たという話を聞くことも無く、日々がすぎました。

親の仕事の関係で、引っ越して転校することも決まったし、あれは性質の悪い悪戯だったんだ、もう大丈夫だろう……と親ともども思うようになったある日のこと。

再び、あの気持ち悪い手紙がきました。

内容はグレードアップしていました。

私が好きなキャラクターの便箋の可愛らしさも、なんの意味も成していません。むしろ私が好きだからこのキャラクターの物にしたんだ、と言われているようで気持ち悪さに拍車を掛けています。

一行につき二行分ずつ、事細かに観察された私のことがビッシリ書かれていました。

何月何日は誰と一緒に下校して、誰と遊んだか。何処に行って何をして、店に行けば何を買ったのか書いてある始末。私自身も些細な日常として忘れていることが記録されていたのです。

さらに、手書きの婚姻届のような物まであって、そこに自分の名前(前回と同じ名前でしたが、学校にはいませんでした)と私の名前を書き込み、血判が押してあったのです。

そしてまた、私を前回と同じ公園に呼び出す旨が書かれていました。今度こそ来なければ死ぬ!!と同じように脅し文句付きで。

あまりの異常さに、気色悪いとしか言いようがありませんでした。

もういっそコッソリと行ってどんな奴か正体を見てやろうかとまで思いましたが、呼び出された場所に気付かれずに行くつもりが後ろから「やっときてくれた」なんて登場されたら堪ったもんじゃありません。

死ぬっていうならいっそ死んでしまえ!!と手紙を破って灰皿で燃やし、無視しました。

それに、相手も私が転校することを知って焦っていることが書かれていました。

引っ越し先は後から手紙で知らせることにして、友人にも教えていませんでしたから、あとは「変な手紙がきた」と相談して事情を知っている担任から聞き出すほかはありません。でも、あれだけ私の事を観察しているようなことを書いて来たからには、私が担任に相談したことも知っているはず。

転校という幸運を、私はめいっぱい使って逃げることにしたのです。

転校後は平穏無事に過ぎました。

いずれは手紙だけでは済まさなくなりそうな異常者から、私は解放されたのです。

でも……小学生にしてあんなストーカー行為……年齢的にも経済的にも、手段や行動範囲が広まったはずの相手がどうなっているかを考えると、誰かが、被害に遭って無いことを祈るほかはありません。

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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