中編4
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ごめんね

これは 私が小学一年生の時に経験した体験です。

私のクラスには、入学した時から一つだけ空いている席がありました。

その席はある男の子の席らしく、先生から

『今は病気で入院していて学校に来れませんが、元気になって登校できるようになったら 皆さん仲良くしましょうね。』

と、私達は聞かされていました。

最初の内こそ 皆その席を気にしていたのですが、何日経ってもその男の子が来ないので 次第に気にしなくなっていきました。

しかしあと一ヶ月もすれば夏休みという頃、男の子は学校へ登校してきたのです。

ざわめくクラスメート達。

初めて見るその子は、少し話しかけずらい風貌でした。

髪の毛はほんの少ししか生えておらず、眉毛もありません。

肌は全体的にかさついていて、夏も近いというのに長袖を着ていました。

それでも初めのうちは、物珍しさもあってか何人か話し掛けたりしていましたが、彼自身が無口だった事もあり、少しずつ 彼の周りに人が集まる事もなくなっていったのです。

私も、話し掛けるきっかけもなく いつも遠巻きに見てるだけで、何もできませんでした。

ある日の昼休み、私は皆と外で遊んでいたのですが、何か用事があって 教室に戻りました。

すると、誰もいない教室で 彼がぽつんと窓ぎわの自分の席に座り、外を眺めているのに気づきました。

そのまま立ち去る事に なんとなく気まずさを感じた私は、思い切って話し掛けてみました。

「あの…〇〇君。何してんの?」

突然声をかけられ、少し驚いたような表情で

「え……?そ、外を見てた。」

と彼は、ボソリとこたえました。

「外行かないの?みんな遊んでるよ?」

と私が言うと

「暑いの苦手なんだ。……あんまり汗かかないから……。」

と、少し照れたようにはにかみながら、彼が言いました。

なんだ、思ったより怖くないや。

そんな風に思った事を覚えています。

「ふーん、そうなんだ。じゃあ、来れたらきてね!」

とだけ言い残し、私は校庭へと走って行きました。

私と彼が言葉を交わしたのは これだけでした。

たったのこれだけ……。

彼が亡くなったと聞かされたのは、夏休みが終わり 一週間程過ぎた頃だったと思います。

それまで、具合が悪くてしばらく学校に来れないと聞いていた私達は、突然の悲報に驚きました。

だけど涙を流しながら話す先生を見て、

『本当なんだ……。』

と、誰もが衝撃を受けていたはずです。

その頃の私達には、病気で『死ぬ』という事は思いもしない事でした。

病気といえば、何日かしたら治るものとしか 考えていなかった。

死自体を、きちんと理解できてはいなかったんだろうと思います。

亡くなったと聞き驚きはしたものの、そんなに親しくなかった事もあり、

『そうなんだ……。可哀相だね。』

そんな風に 皆友達同士で話していました。

お葬式には クラス全員で出席する事になり、何故か『お別れの手紙』を私が読む事に決まった為に、初めてのお葬式よりも 人前で文章を読む事に緊張していました。

いよいよ私が手紙を読む番になり、台に乗り手紙を読んでいる途中、ふと、おかしな光景が目に入ったのです。

『あれ?……〇〇君……?』

親族の方達が椅子に座り、彼の死を悲しみ泣いている後ろで、亡くなったはずの男の子が立っているのです。

学校へ来ていた時と同じような服装で、彼はたたずんでいました。

『え!? あれ?』

思わず私は、手紙を読んでいる最中だという事も忘れ、後ろを振り返り遺影を確認してしまいました。

『やっぱり〇〇君だ……。』

そう確信しましたが、何故か怖いという感じはなく ただただ不思議で、手紙を読み終わり台を降りてからも 私は男の子を見つめていました。

彼は無表情でしたが、その目は悲しそうに私には見えました。

しばらく彼を見ていたのですが、一瞬目を離して再び彼のいた場所を見た時には、もう いなくなっていました。

これが、私の小学一年生の時に経験した 体験です。

大人になった今だからこそわかる。

彼の病気は、小児がん。

髪の毛や眉毛がなかったのも、薬の副作用だったのでしょう。

まだ七歳。

彼はまだ、たったの七歳でした。

その小さな体で、どれほど苛酷な治療に耐えてきたのか。

学校での時間が、彼にとって どれほど大事で、大切な時間だったのか。

もっと遊んであげれば良かった……。

もっとたくさん、いろんな話をしてあげれば良かった……!

もっと楽しい思い出を、私達は作ってあげれたはずなのに……。

自分のお葬式を見ていたあの子は、あの時何を思っていたのでしょうか?

彼のあの表情と、悲しみをたたえたあの瞳を思い出すと 私は自分の子供を抱きしめずにはいられません。

そしてあの時に駆け戻り、彼を抱きしめてあげたい気持ちで いっぱいになるのです。

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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久しぶりに文章を読んで涙が出ました。
きっと筆者さんの想いゎその子に伝わっていると思います