短編2
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賽銭箱

祖母から聞いた祖母出身地茨城県の村に古くから伝わる話です。

当時の村民の生計は農作物で立てるのが普通で、凶作にでもなれば餓死するのが珍しくもない時代。 ある年、その村では天候の悪化により農作物が全滅する事態になった。このままでは村人全員が飢え死にするため、打開策を見つけるべく村の村長は世帯主達を家に呼び寄せ、会議する事にした。しかし、何時間も話し合ってもいい案が出てくる気配もなく皆が諦めかけた頃にある男が

「裏山の神社の賽銭箱を失敬しよう」と喋った。

もちろん今より神罰等を恐れる時代だけに反対の声があがったが、打開策も見つからずとうとうくじ引きで賽銭箱を盗みに行く役を決める事にした。 運悪くくじを引いてしまったのが、会議に唯一来ていた女だった。彼女は早くに夫を亡くし、まだ生後間もない赤子をその日もおぶりながら会議に参加していた。皆は哀れに思いながらも代わりに行く気にもならず、結局彼女が夜中に賽銭箱を盗みに行く事になった。

夜中になると彼女はすやすやと寝る赤子をおぶり神社に向かった。月明かりを頼りに暗い山道を登り薄汚れた鳥居を潜り抜け幾分かすると目的の賽銭箱が見えた。

稲荷様に何度も女は頭を下げると意を決し、持っていた木槌で賽銭箱を叩き壊し半狂乱になりながらも巾着に賽銭を掴み入れた。その音にびっくりしたのか、赤子がギャーギャーと泣き出した。女はあやす事もせず、全て賽銭をかき集めると逃げるようにその場を立ち去った。

我に返ると神社からだいぶ離れた田園沿いに佇んでいて、村灯りを遠くに見ると女は少し安心した様でひたひたと歩き出した。赤子も今は静かにしているようだ。

村にもそろそろ着くという頃、女は何かが後ろからぴちゃぴちゃと微かに音を立て着いてくる事に気づいた。しかし、振り返る度胸もなく震えながら念仏を唱えたそうだ。

家の戸口に着き、手をかけるとやっと女は少し安心したようだが、まだぴちゃぴちゃと音が聞こえる事に気づいた。

女は恐る恐る後ろを振り返る事にした。

誰もいない。

ただ、赤子の首がそっくりそのままなくなっていて血を垂らしていたそうだ。

その時の女の叫び声は村人全員を起こしたそうで、。

その日から首取り神社と呼ばれるようになったそうだ。

怖い話投稿:ホラーテラー リオンさん  

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