長編25
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小説  倭製 白雪姫

『白雪姫』

白雪姫という美しい姫がいた。

ある日、彼女の母である王妃が魔法の鏡に「世界で一番美しい女性は誰?」と聞くと、白雪姫だという答えが返ってきた。

王妃は怒りのあまり、白雪姫を森に追放した。

白雪姫は森の中で7人の小人と出会い、暮らし始めた。

白雪姫が無事であると知った王妃は、魔法使いの姿に変じると、白雪姫に毒のリンゴを食わせ、これを殺した。

長い年月が経つと、馬に乗った王子が現れ白雪姫を望んだ。

王子が白雪姫に接吻すると、白雪姫は目を覚ました。

王妃は驚き、二人を祝福しようとしたが、逆に弑された。

二人は末永く幸せに暮らした。

「トヨや、トヨ、みやれ。これをみやれ!」

畿内の邪馬台国にある迷宮のような巨大な大神殿。

その最奥部の一室で、ヒミコは抑えきれぬ喜びに震えていた。

大陸の魏の国より「漢委奴国王印」と彫られた金印。そして銅鏡100枚が送られてきたのだ。

(正式にわらわが邪馬台の国が、王国と認められたのだ)

王の威光をもってすれば、近隣諸国との戦を平定できる。

そしてとりわけ西で強大な力を持ちつつある、熊襲(クマソ)の国をも併合できるやもしれぬ。

このために遠く魏の国に多くの貢物をささげてきたのだ。

そして神秘の光を宿す、この銅鏡…。

この鏡の数が、それだけ呪力の大きさの象徴でもある。

これだけの枚数の、これだけの精度の銅鏡を持つ国はほかにあるまい。

一体、どれだけの呪力を宿すものなのだろう?

(早速、この鏡の力を用いて見よう)

ヒミコは火を焚くと、最新の銅鏡を用いて占いを始めた。

「漢委奴国王、卑弥呼より謹んで問う。

鏡よ、鏡、美しき大八州の国々を統べるべきはどの国か?

だれがその国を治めるべきであるか?」

トヨはそんな母、ヒミコの様子が嬉しかった。

ここのところ周辺諸国との戦は激しさをまし、母はふさぎこむ日が多かった。

祝詞の声も張りがなく、ただぶつぶつと叔父に愚痴を言うばかり。

娘のトヨに心配をかけさせたくはないという気持ちはわかるのだが、かつてのように誇り高く、堂々と理想を語る母の顔に戻ってほしかった。

いま、母は威厳と誇りを取り戻し、若かった頃のように輝いている。

トヨは涙がこぼれ落ちそうになるのを抑えながら、

「母様、長い間、ようお耐え遊ばした」

とほほ笑んだ。

しかし、幸せな時間は長くは続かなかった。

いや、このときを境にヒミコがトヨに心から笑って話しかけることは永遠に無くなった。

ヒミコの目は銅鏡にくぎ付けになったまま驚愕に開き、口はわなわなとふるえていた。

          「クマソ」「トヨ」

炎に照らされる鏡面には、その二語がはっきりと浮かんでいたのだった。

照りつける太陽の下、トヨは絶望に近い気持で遠い西の果て、熊襲に向かっていた。

(なぜ、このような目に合わなくてはならないのであろう?)

あの日、銅鏡で占いを行った日より母は変わってしまった。

何を話しかけてもそっけなく、それどころか明らかにトヨを避けよう、いや、遠ざけようとしているように思えた。

それどころではない―

(母は、妾を憎んでいるのではないか?)

そうとしか思えない言動が続くのである。今回の命令など、その最たるものだ。

『漢委奴国王の使者として、熊襲を服従させよ、相手にその気がないのなら、酋長を暗殺せよ』

とても実行できるとは思えない。

おまけに自分に付けられたのは、いかにも非力な、小人のような頼りない七人の従者のみ。

(これではまるで、追放されたかのよう。)

今にも、交戦中の投馬(とうま)国の追手に捕まるのではないか。

そう思って日中は街道を避け、森の道なき道を進む。しかしそれでも山賊、山狗の襲撃の恐れは免れない。

(投馬国では、捕虜の生き胆を抜くという)

自分が捕らえられる姿を想像し、身を震わせながら眠れぬ夜を過ごす。

火を起こさねば獣を払えぬし、しかし火をおこせばいつ敵国のものに気づかれぬやもしれぬ。

トヨたち一行は、悲嘆にくれながら長い道のりを進んだ。

一行は幸いにも、大きな不幸に合わずして、熊襲の国に着くことができ、酋長に合うことができた。

「いや、遠路はるばる御苦労でござった」

巨大な山をそのまま砦にしたつくりの要塞。

街を見下ろす位置という邪馬台国と全く異なる宮殿で、熊襲の酋長、サルタヒコは一行を温かく迎えた。

40過ぎの老人のようだが、赤ら顔の目は精悍さに満ち、獣の皮をまとう小岩のような風貌は、狩人を連想させた。

そんな中で胸に下げた赤い勾玉が、一種滑稽なぐらいに大きいのが、ひときわ目立っていた。

「して、ご使者の口上は?」

トヨは、ヒミコからの木簡を取り出した。

「邪馬台国の王、卑弥呼の使いとして参りました。第一王女、台与(トヨ)と申します。

このたび、卑弥呼は魏の国より正式に親魏倭王に任ぜられ、倭の国の統治を任されました。

邪馬台国としては、統治を預かる身として、昨今の戦乱を収め、平和な秩序を取り戻すべく各地に使者を派遣しております。

熊襲の国としても、早急に邪馬台国に帰順し、ともに戦乱を収めるべく尽力するよう望みます。

これが書簡です」

トヨが差し出した木簡を受け取ると、サルタヒコは素早く目を通した。

最後の紐をほどいたとき、サルタヒコの後に控えている参謀のような背の高い男が、ふふっと笑いを洩らす。

サルタヒコが激しい怒りを込めた視線を送ると、男は慌てて表情を無くした。

(なんであろう?)

トヨは不安を感じたが、表面は平静を尽くさねばならなかった。

「ご使者の要件はわかり申した」

しばしの沈黙のあと、サルタヒコは口を開いた。

「お前たちは下がっておれ」

サルタヒコは周りの者を遠ざけ、トヨと二人きりになると、おもむろに口を開いた。

「のう、台与どの。彼の大陸では、今国が魏と呉と蜀、三つに分かれ互いに争うておる。

だが、戦乱はほどなく魏の国により治められるであろう。

問題はその後。

彼の国は戦乱統一後、必ず余った戦力で周辺諸国を滅ぼそうとしてくる。

そんなとき我ら大八州が互いにばらばらに争うておったらどうなると思われる?

飢えた山狗に肉を与えるようなものだとは思われぬか?

無論、それがやつらの思惑。貴国を王国と認めた真の狙いでござる」

トヨはサルタヒコの真意を測りかね、じっとサルタヒコの目を見つめ返すしかなかった。

「彼の大陸と付き合うには、彼の大陸のやり方ををよく知らねばいかん。つまり……」

サルタヒコは傍らにある木箱を取りよせ、中からなにか小さいものを取り出した。

 

「こういうことでござる」

「それは……」

トヨは驚愕に目を見開き、口を震わせた。

サルタヒコの手の中には、母、卑弥呼が持っていたものと同じ「漢委奴国王印」の金印が、鈍く輝いていたのである。

「なぜそれを……、よもや邪馬台国に刺客を放たれたか?」

トヨの頭は混乱している。

「とんでもない。それが彼の国のやり方と申し上げておる。この印綬も紛れもない本物。貴国にある印綬も本物。

双方に権威を与えて、つぶし合わせることこそが彼の国の真の目的。

しかし、そのような事はおそらく卑弥呼殿も存じ上げなんだろうに、御息女を使者とされるとは。

いやはや、恐るべき直観というか、それとも呪力の賜物なのか……」

サルタヒコの声は最後の方は呟くようになっていた。

「台与どの。熊襲国王猿田彦としてご使者の口上に答える。我が国は王国として、貴国に服従する気はない。

だが、ともに大八州の戦乱に終止符を打つということに異存はない。

我が国と同盟を組み、対等に大八州発展のために尽くすべきことを希望する。それが我が国の意思。そう心得なされ」

「同盟……」

「左様。儂は彼の大陸を見て、今の戦乱の状況を見て、潰し、潰される国の関係が嫌になった。

否、その先に発展などないと悟ったというべきか…。せめて大八州では国どおしが対等に、同盟関係をもって共に発展を目指す。

そのような関係でいたい。我が国と貴国がそれをなせば、後に続く勢力も多かろう。いかがか?」

「それは…」

それができればどれほどいいだろう。長引く戦乱で母国邪馬台国の経済は破綻し、働き手も次々に減って行く。

苦悩に潰されていくような母の顔が脳裏に浮かんだ。

トヨはサルタヒコの考えに魅かれている自分を意識した。そしてこの男は、本気で諸国同盟をなそうとしている。

だが、気位の高い母がそれを許すだろうか?

そして、対等と言っておきながら、実際本当に対等関係でいられるものだろうか?

「そこで提案がござる」

サルタヒコがトヨの内心を見透かすかのように言葉を続ける。

「儂の息子、熊襲の第一皇子タケルと、台与どの、結婚してくれぬか?」

「は?」

今度こそトヨは仰天した。王族が他国に嫁ぐなど、聞いたことがない。

ましてや、母卑弥呼が許すはずなどないではないか。

「大陸でよく用いられている方法でござる。さすがに王族が婚姻関係にある中で裏切る道理はないでござろう。

わが王子が貴国に入ってヤマタイタケルになるもよし、トヨどのがクマソトヨになるもよし。それは儂の後の世のこと。

いかがか?そもそも、儂が服従を断ったことでご使者として帰っても無事では済まぬ、と推察するが?」

その通りだった。今の母の様子では、断られたといって帰国したところで何らかの処罰が下されるであろう。ましてや服従を迫るはずの国に婚姻を求められたなどと言ったらどのようなことになるであろうか?

と、なれば残る道はサルタヒコの暗殺……。

だが、自分よりも2手も3手も先を考えているこの男の裏をかくなど、到底出来るとは思えない。

「…何とおっしゃられても、妾の一存では決めかねること。帰って国王とよく協議いたしまする」

「よく考えて仰られよ。いまそのまま帰国されれば、いよいよ戦争でござる。貴女も無事では済まぬ。それを望まれるか?

それとも…手土産に何かお持ちになるおつもりか?例えば…そう、儂の首でも?」

嗚呼、なんという事…。この男はすべて読みぬいている。その上でこうして喋っているのだ。

(かなわない。とうていかなう相手ではない)

トヨは絶望感に包まれた。

と、不意にサルタヒコが大声で笑い出し、トヨは後ろにひっくり返りそうになった。

「戯れにござる。母君には今しばらく熊襲の様子をみたいとでも言っておけばよろしかろう。

手数だが、木簡にしたためていただけぬか?我が国より使者を使わそう。ゆっくり我が国を見物しながらお考えなさるがよい。

これ、誰ぞある。話は終わった。ご使者をおもてなしせよ。宴の準備じゃ!」

トヨの7人の従者たちも呼び戻され、「宴」が催された。

山海の珍味、精巧な土器、青銅器、強烈な酒類、獣の皮を使った太鼓の音、幻想的でもあり、鉄器を惜しげもなく使う演武……。

その全てが圧倒的な規模で、「もてなす」というよりも、「見せつける」意味あいのほうが強いと思われた。

それに、確かにこの圧倒的な統率力、組織力、文明度。

(まともに戦っても勝てぬ)

トヨが確信を得るに十分だった。

(どうする?宴に乗じて猿田彦と刺し違えるか)

トヨは懐に隠し持った短剣をそれとわからぬように握りしめる。

(一人では無理でも、従者7人とともにかかればあるいは…)

トヨは従者たちに目くばせするが、みな宴に興を乗せて、トヨの視線に気づきもしなかった。

(ええい、頼りない事。

ならばわが身ひとつでも、酒をすすめるふりでもして…)

トヨがサルタヒコの方を窺った時トヨはぎょっとして動きをとめた。

こちらをじっと見ているサルタヒコと目があったのだ。

「いかがされた?我が国の宴はお気に召さぬか?ならばとっておきの余興をお目にかけよう。

これ、タケルを呼べい!」

サルタヒコの声とともに演武をしていた者たちが姿を消し、太鼓の調子が変わった。

ヒヒヒヒヒヒヒイイン

なんともおぞましい音が聞こえる。獣の声か?

と、すさまじい地鳴りのような音が響き、地面がかすかに揺れているような震動が体に伝わってきた。

遠くの方から、先ほどまで演武を催していた広場に向って黒い塊のような一団が押し寄せてくる。

首の長い、巨大な獣の群れがかけてくる。よく見ると、獣の背に人が乗っているではないか。

獣に乗った一団は、広場をぐるりと一周すると、サルタヒコに向けて整列した。

トヨは声も出ない。

従者たちはと見るとあっけにとられるもの、腰を抜かすもの、涙を流すもの……。完全に我を忘れている様子だった。

「クマソタケル、お召しにより参上いたしました」

中央の白い獣にまたがった若者が声を張り上げる。

「大義である」

サルタヒコが応じる。

「百済より取り寄せた、馬と申す獣にござる。熊のように力強く、猪のように勇猛で、犬のように従順にござる。

食べるものは草のみで千里の道も苦にはせぬ。輸送にも、農耕にも、軍事にも強力な力になり申す。

まあ、あまりににぎにぎしいのでわが国ではニニギで通っておりますがな。

この獣の力によって、大八州の国力は一変するであろう。

いかがでござる?とっておきの余興はお気に召されたかな?」

トヨは声も出ない。この獣にのった武者たちが邪馬台国に槍を振りかざして暴れまわるところを想像しただけで、トヨの体はすくみ、身も凍るようであった。

熊襲を服従させる……。当初の目的を、トヨが完全にあきらめた瞬間であった。

それからしばらく後、トヨは母、卑弥呼に木簡をしたためた。

「邪馬台国の第一皇女台与より、邪馬台国国王卑弥呼に書をいたす。恙無き(つつがなき)や。

熊襲は獣の肉を食らい、獣の皮をまとい、獣にまたがり野を駆ける。野蛮なことこの上なし。

しかれども百済と通じ、鉄は豊富、農耕の技術にも優れ、民の気力も充実し、決して侮るべからず。

熊襲族長、猿田彦(サルタヒコ)は壮年で誇大妄想ゆえ、邪馬台国に服従する気なく、対等の同盟を要求するのみ。

さらに皇子武(タケル)はじめ皇族も数多おり、遺憾ながら暗殺もかなわず。

猿田彦申すに、台与と武に婚姻を結び、同盟関係を築きたいとの由、なにとぞ国王に取りなしをとのこと。

台与熟慮して申すに、この上は我が身を熊襲にあたえ、持って彼の国を教化し、邪馬台国繁栄の贄とならんことを欲す。

国王において同意されることを望み、書を持って検討を願うなり」

ヤタと呼ばれる黒衣の男が使者となり、一個師団を率いて風のように去っていくのを眺めながら、トヨは不安だった。

(このままでは済むまい。母はどう思うだろうか)

ヤタ一行の姿は、邪馬台国に黒い嵐を訪れさせているような…トヨはそんな気持になり、胸が潰されそうになるのだった。

それからしばらく、トヨ一行は熊襲で生活した。

トヨの案内をしたのはもっぱらタケルであった。

トヨはタケルから、馬の扱い方、山の傾斜を利用した水田耕作、また小型の吹き矢を使った狩猟方法など、様々な技術を学んだ。

この国を知れば知るほど、トヨはその文化の懐深さに惹かれざるを得なかった。

そして2か月ほどの時間が流れ、邪馬台国からの返書をもったヤタ一行が帰還した。

(母はどう出るだろうか?)

場合によってはヤタ一行すら無事には戻れないかもしれない…。

トヨはそんなことも考えていたので、黒衣の男が帰ってきたところでほっとしていた。

あとは返書の中身…。

「東夷将軍八咫(ヤタ)、ただいま邪馬台国より帰還いたしました」

「役目大義である」

儀礼的な挨拶ももどかしい。

トヨは早く母の様子を聞きたかった。

「母は…いえ、邪馬台国国王卑弥呼はどのような様子でしたか?」

トヨは思わず口走っていた。居並ぶ家臣たちが一斉にトヨの方を見る。

明らかな越権行為であった。

「トヨどのは母上のことがよほど気になると見える。

よい。結論から先に申せ」

サルタヒコが豪快に笑いながら言った。

「は…、邪馬台国王は我が君の親書をことのほかお喜びで、第一皇子と第一皇女の婚姻を大いに祝福するとおおせられておりました。

まずは手始めに祝賀の品をお納めくださいとのこと。ここに目録と木簡を持参いたしました」

「うむ。これへ持て」

サルタヒコは書簡に素早く目を通し、それをトヨに渡し、

「これが母君のお気持ちでござる。心配することもなかったでござろう」

と言った。妙に意味ありげな表情である。

(母が祝賀の意を示す?)

考えられないことだった。だが、まぎれもない母の筆跡で木簡には祝意が述べられている。

(占いの結果がそうだったのだろうか?だが、それにしても……)

トヨが混乱していると、

「祝いだ。皆の者、宴の準備をせよ!」

サルタヒコの声が広間に響き渡り、トヨは我に返った。

おお、という声とともに臣下たちが広間を出て行く。

がらんとした広間に残ったものはサルタヒコ、ヤタ、タケル、トヨの4人のみであった。

「して、八咫。真実卑弥呼殿の様子はいかがであった?」

サルタヒコの口調が改まっている。

「は…、それは…」

ヤタはちらり、とトヨの方を見た。

「構わぬ。見たもの、聞いたこと。ありのままを申せ。一片の偽りも許さぬ」

有無を言わせぬものがあった。

「は、しからば…。

我が君の木簡を読んだ卑弥呼様は、取り乱すこと甚だしく、まともに交渉する余地はなし。

髪を振り乱し、手当たり次第に物をぶつける様は正気とも思われず、まるで鬼女の如し。

しばらく我々のことを罵ったのち、傍らの皇族と思われる男と女官たちに抑えられ、奥の間へと姿を消され申しました」

「何と罵った?」

「は…、山猿がたわけたことを。漢委奴国王の命令に従えぬか。

慈悲をもって接しておる親魏倭王に娘をよこせとは不埒にもあたわぬ。

呪い殺してくれようか剣で滅ぼしてくれようかその方で選べ、とそれはそれはすごい剣幕で…」

トヨは聞いていて頭が痛くなってきた。予想通り、否、それ以上の反応であった。

「それだけか?」

「は…あ…」

ヤタが言いよどむ

「父上、それ以上は…」

タケルが何か言いかけた。

「申せ」

サルタヒコの逆らうことを許さない迫力に、その場にいる全員の身がすくむ。

「は・・・・・・。

あの小娘も、とんだ淫売。

猿に抱かれて国を捨てるとは言語道断。最早娘ではない。ただの…」

「嘘です!!」

トヨが叫んだ。予想していたこととはいえ、いざその言葉を聞かされると動揺を隠せない。

トヨの顔は色を失い、雪の様に白くなっていた。

「ただの、娼婦である、と」

一瞬の静寂ののち、

「嘘です!そのような暴言。たとえ戯言でも許しませぬ!」

トヨの声が響いた。

「台与どの。気を御確かに。取り乱してはなりません」

タケルの声もトヨには届かない。

「もしも、もしも母がそのように宣まったならば、このような祝賀の品など届くわけがありませぬ!」

「うむ。それも尤もな事。

八咫。卑弥呼殿はいかようにして考えを改められたのだ?」

「は、それが…

邪馬台国王はひとしきり罵られた後、近くの者に抑えられるようにして退出され、神殿の奥にある洞窟に隠れられ、3日3晩出てこられませんでした。

その間の事は使者である吾にはわかりかねること…。

吾らは使者の間にて待機を命じられ、4日後に再び国王に面会を許された時には国王は打って変わって穏やかになっており、このように祝賀の品を下賜され、先のような祝辞を仰ったしだいでございまする」

「ふむ。これは異なこと。台与どの。母君の心境の変化をいかが見られる?お得意の占いによる啓示であると思われるかの?」

トヨは返事が出来なかった。

「儂ならばこうみる。八咫、疲れているところすまんが、もうひと走りしてくれるか?」

「いかようにも」

サルタヒコに命じられ、ヤタは牢獄から死罪人を連れてきた。

サルタヒコが祝賀の品から林檎を死罪人に食べさせると、死罪人は口から泡を吹き、眼を飛びださせるようにして死んだ。

「そのような…そのような…」

凄惨な光景にトヨの口はわなわなとふるえ、全身が硬直していた。

目の前で起きたことがわからない、否、受け入れることができず、脳が思考を拒否していた。

あれは本来自分が口にしていたはずのもの…。

母は、私を、私を……    

「あああああああああああああああ!」

トヨは大いに動揺し、与えられた部屋へと走り込み、嘆き伏した。

「父上、このなさりようは、あまりに不憫でございます」

がらんとした広間にタケルの声が響く。

「不憫とな?ならばどうしたがよい?母君は貴女を常に想い、慈しんでおるとでも言えばよかったか?

毒の林檎を喰らわせておけばよいとでもいうのか?

仮に女性であろうと一国を背負おうという者。目の前の現実を受け止められんでなんで国を繁栄させ、民を導けようか?

タケルよ、よく聞け。卑弥呼はあまりに人間すぎた。女性にすぎたのだ。

実の娘に対し、この仕打ち。八百万の神々も今度ばかりは慈悲も尽きたであろう。

恐らく、あせらずとも卑弥呼の命は長くはもつまい。

だがタケルよ、それは何も卑弥呼にのみ限ったことではないぞ。

よく覚えておけ。常に現実を直視して受け入れ、対処せよ。そのことを忘れたら、お前とて命の保証はなくなるのだ。よいな?」

「は…、肝に銘じましてございます」

「方針は決まった。我が国からは手を出さず、邪馬台国の自壊を待つことにする。

タケルよ、台与を慈しみ、大切にせよ。しばらくしたら様子を見に行ってやるがよい」

「心得ました」

「二人は宴にでなくともよい。さて、では八咫、我らは宴に参ろうか」

「は、ならば死体をかたずけてから参ります」

広間はそれで散会となった。

トヨは泣き続けていた。

母が自分を疎ましく思っているとは薄々感じていた。送った書簡も、母の逆鱗に触れるであろうことは予想もしていた。

だが、だが…。妾を罵るだけではあきたらず、あまつさえ毒殺を図るとは……。

実際に人の目に触れるところでそのような目にあい、心に受けた衝撃は計り知れなかった。

トヨは長くそうしていたが、しかし時間とともにだんだん冷静になっていった。

(はたして、あれが本当に母からの贈り物だったのか)

ふと疑問が頭の中に起きる。

そうだ、あれがもしヤタが毒を仕込んでいたのだったら?

なにもかもが仕組まれていたとしたら?

あのサルタヒコのことだ。目的を達成するためだったらそれぐらい迷いなく命じるだろう。

(邪馬台国に帰ろう。そして母に真実を問いただそう)

トヨは悲壮ともいえる決意を固めた。

「あんのおー」

唐突な声にトヨは振り返った。

見ると部屋の入口に7人の従者のうちの2人、テナガとアシナガが立っている。

「どうしたのです?お前たち」

今まで泣いていたことを気づかれないよう、トヨは努めて明るい声をかけた。

「へえへえ、お姫様。こういうのは、その、へえ、なんっていうか…なあ?」

「へへへへ、どうも、どうもなんといったらいいのんか、えへへえへ」

「いったいどうしたというのです?何か話でもあるのですか?」

「いんやあ、おらたち、いつになったら国に帰れるのか、なあ、と」

「クマソにいるのもずいぶんになるもんで、はあ、どんなもんかなあ、と」

「そうですね、私も邪馬台国が恋しい気持はそなたたちと同じ…。

しかし今は国史としての交渉の最中です。おまえたちも私情にとらわれず、使者としての役目を全うしなさい」

(たった今まで私情にとらわれ、泣き伏していた妾が何を偉そうに…)

トヨの顔に、やや自虐的な微笑みが浮かんだ。

「へえ、へえ、でも、なんだかお姫様がこのままクマソにいついちまうんじゃねえかって、おらたち心配で」

「はあ、お姫様はどうなさるんで、このまま国には戻らないおつもりですかい?」

「…僭越ですよ。お前たち。

これは国家の大事。軽々に人になど言えるはずがないでしょう。

気持はわかりますが、時間をかけることも大切なのですよ」

「はははあ、やあっぱり戻らねえんだ。こいつはこまっちまったなあ」

「へへへえ、毒の林檎も食ってくれねえし、こいつあなんとも、なあ」

「?………お前たち?」

トヨはその一言にぎょっとした。

テナガとアシナガはトヨを気にするでもなくふらり、と二手に別れて距離を縮めてきた。と、次の瞬間、

「お命頂戴!」

二人揃ってトヨめがけて飛びかかってきた。

トヨはとっさに床に転がり、懐から短剣を取り出す。

ヒュッとなにかが空を切る音がして、立ち上がる間もなく頭上から鈎爪のようなものが打ちかかってきた。

トヨは何とか短剣でそれを受け止めると身をひねって相手の腹を蹴り、反動を利用して2,3床を転がると身を起こした。

「なんのつもりです!」

トヨは叫びながら身構える。

タケルに武術の手ほどきを受けていなければ、今の一瞬でやられていただろう。それほど相手は俊敏な動きだった。

二人は答えない。が、その目に明確な殺意の意思を認め、トヨは戦慄した。

いつの間にか取り出した鉄の鈎爪を手に、じりじりと二人が間合いを詰めてくる。

「どういうことです?まさか、お前たち、草の者…」

トヨが言い終わるより早く、再び二人が飛びかかってくる。

(いけない!)

逃げられない、と悟ったトヨはテナガに突進し、相手の懐に短剣を刺そうとする。

「っつ…」

だが、逆に動きを読まれ、短剣をたたき落とされた。

トヨはそのままの勢いでテナガに当て身を喰らわせ、短剣を拾おうとする。

キイイインン

固い音を立てて短剣が壁際まで吹き飛んだ

背後に忍び寄っていたアシナガが短剣を蹴り飛ばしたのだった。

「あっ」

短剣を拾いに行く間もなく、アシナガの鈎爪がトヨの顔面を襲う。

トヨはなんとかアシナガの手首をつかんで、相手の腹に蹴りを入れると間合いを取った。

アシナガはもんどりうったが、すぐに身を起こすと、ゆっくりと歩いて間合いを測りだす。

いつの間にかテナガも立ち上がっていた。

(また二人で飛びかかってくる)

トヨは懐に手を入れると、タケルから送られた狩猟用の吹き矢を取り出し、素早くアシナガに向けて矢を飛ばした。

「うがっ」

予想外だったのだろう。アシナガが目を押えてうずくまる。

「兄者!おのれえ」

テナガが憤怒に燃える眼でこちらを見る。

(いけない)

いまの状態では防ぎようがない。トヨは手当たり次第に調度品をつかみ上げると、無駄だと知りながら投げつけた。

テナガは難なく身をかわしながら距離を詰めてくる。

(やられる)

トヨが覚悟を決めた瞬間、

「狼藉者!」

部屋に聞きなれた声が響き、剣をとったタケルが風のように飛び込んできたかと思うと、一瞬でテナガと、うずくまるアシナガの胴体を薙ぎ払った。

二人の体は裂け、部屋は炎に包まれたかのように血で染まった。

「トヨどの、無事か?」

剣を納めたタケルが倒れそうになるトヨを支えた。

「何事ですか?皇子、これは…」

音もなくヤタが風のように姿を現したのは、それとほぼ同時だった。

「従者が…」

答えたのはタケルでなく、トヨだった。かすれそうな、だが毅然とした声でトヨは続ける。

「恥ずかしながら、妾が邪馬台国から連れてきた従者が草の者でした。

まだ残りの者がどこかに潜んでいるはず。急ぎ逮捕の手配を願います。この際、生死の違いは問いません」

「言われたようにせよ」

ヤタは、そういわれてはっとした表情になった。

「国王が…」

ヤタにしては珍しく動揺を隠せない様子である。

「どうした?」

「国王が、いま御一人で宴の席に向かっています」

「いかん!急ぎ父上の護衛に向かえ。台与どの、一緒にこちらへ」

タケルはトヨを連れ、宴の席へと急行した。

                                                 

「遅かったな、お前たち。おお、台与どのも一緒か」

サルタヒコは広間から外へ向う廊下の壁に寄り掛かって立っていた。

あたりにはトヨの従者たちだったものの死体があちこちに横たわっている。

サルタヒコはタケルの血に濡れた剣に気がついたようだった。

「タケルも襲われていたか。草の者か?そいつらはどうした?」

「二人、薙ぎ払ってございます」

サルタヒコは大声で笑った。

「それでこそわが息子よ。

儂はナガスネヒコとやらに逃げられたわ。さすがは草の者。なかなかやりおる。

宴の場の瞬間を狙うとは、儂も邪馬台国を侮ったな……。

タケルよ、笑うがいい。偉そうにお前に小言を言っておった儂が、相手を見誤ってこの様よ」

「父上、喋らないでください、体に触ります。

いま、祈祷師を呼びますので」

サルタヒコは左胸に深々と突き刺さった鈎爪から血をあふれさせながらせき込んだ。

同時に、ごふっと音がしてサルタヒコの口から血がほとばしる。

そこにいる誰もに、サルタヒコが致命傷を負っていることは明らかであった。

「ふん。まあ、よいわ。時間がない。

これより遺言を伝える。八咫、わぬし証人となれ」

「は」

ヤタが短く答える

「よく聞け。儂が死んだら後継はタケルとし、全権を速やかに移譲せよ。

タケルは富国強兵策を採れ。ニニギを増やし、鉄器を作り、国力を増力せよ。

決して事を構え、いたずらに兵を動かして国力を疲弊してはならぬ。

タケルよ、邪馬台国が憎いか?」

「……憎う、ございます」

「その恨みは胸にしまえ。台与どのとともに乗り越えよ。

よいな。必ず、大八州連合を成し遂げるのだ、その暁にはタケルよ、ヤマ…タケルを名乗れ」

ごほっ、と再びサルタヒコは血を吐き、語尾が途切れた。

慌てて駆け寄ろうとする一同を手で制し、サルタヒコは続ける。

「台与どの、このままでは熊襲にいても風当たりが強かろう。

台与どのもここで一度死んだと思いなされ。卑弥呼殿が身罷れるまで、そう、今日より弟橘(おとたちばな)を名乗るがよい」

その言葉にタケルとヤタがハッとした表情を浮かべる。

「昔、外遊で走り水に至った際、溺死した儂の娘の名よ。

ふふ、儂も我ながら未練がましいことだわ。

…………台与どのよ。素直な、心の美しい娘だ。

………いままで、厳しいことばかり言って済まなかった。

……娘が生きていたら、こう言っておった。そんなことばかりを貴女に申しておった。

…台与どの…短い間だったが、儂は貴女を実の娘のように、思っておった……」

「猿田彦様」

「…タケルを頼む」

サルタヒコの顔から急速に血の気が無くなっていく。その中で、強い光でまっすぐに見つめる眼光に、トヨの心は震えるばかりだった。

「八咫、しかと聞き届けたか?」

「は、確かに」

「若い二人にはこれから困難も多かろう。二人を護り、助けてくれ」

「御意のままに」

「よし、ではこれより誓いに入る。タケルはその草の者を薙ぎ払ったという剣に、

八咫には、邪馬台国より送られてきた大鏡があったであろう。わぬしに与えるので、誓いとせよ。

台与どの、これを受け取ってくれ」

サルタヒコは首にかけていた勾玉をトヨに差し出した。

ふるえる手でトヨが受け取る。

「半島より手に入れた儂の宝よ。大切にしてくれ。

皆、儂の遺言を理解し、各々、役割を果たすことを誓え。よいな?」

「誓います」

「は、確かに」

「…わかりました」

サルタヒコは大きく息をついた。

「よく、言ってくれた。

もう、思い残すこともないわ。

………

儂は、見守っておるぞ、八百万の神々とともに、この大八州の、行く末を……」

サルタヒコの体から急速に力が抜けていく。壁から崩れ落ちそうになるサルタヒコをタケルが抱きとめた。

「いかん。八咫、急ぎ祈祷師を連れて参れ!」

ヤタが風のように姿を消す。

「おお、見よ、八百万の神々が、儂を迎えに来たわ。

見えるぞ、大八州の繁栄が、…永久に続く、美しい…美しい国よ……」

「父上!」

「猿田彦様!」

サルタヒコの声がうわごとのようになっていく。やがてそれは意味をなさない音となり、風の中に消えた。

遠くから宴の始まりをつげる太鼓の音が聞こえてくる。

その中で、せまい廊下には、若い国王と、王女の嘆き声が響き渡っていた。

魏志倭人伝には、卑弥呼の様子として、

その國、本また男子を以て王となし。

住まること七、八十年。倭國乱れ、相攻伐すること歴年、乃ち共に一女子を立てて王となす。

名付けて卑弥呼という。鬼道に事え、能く衆を惑わす。

(その国は、もと男子が王であった。

ところが男王の治下、七、八十年以前のこと、倭国は大変に乱れて、国々は互いに攻撃し合って年が過ぎた。

そこで、国々が協同して一人の女子を立てて王としたのである。

彼女は名をヒミコ(卑弥呼)といい、鬼道に仕え、その霊力でうまく人心を眩惑している。)

とある。

明らかには書いていないが、卑弥呼によって戦乱が収まったとも読み取れる書き方ではある。

その後、卑弥呼の死後の様子として

卑弥呼以て死す。

大いにチョウを作る。径百余歩、徇葬する者、奴婢百余人。

更に男王を立てしも、國中服せず。

更更相誅殺し、当時千余人を殺す。

また卑弥呼の宗女壱与年十三なるを立てて王となし、國中遂に定まる。政等、檄を以て壱与を告喩す。

(卑弥呼はすでに死んだ。

大いに冢つかをつくった。

径(さしわたし)は百余歩・徇葬者(じゅんそう)の奴婢は百余人であった。

あらためて男王をたてたが、国中は不服であった。こもごもあい誅殺した。当時千余人を殺し(あっ)た。

(倭人たちは)また卑弥呼の宗女(一族の娘、世つぎの娘)の壱与(台与。『梁書』『北史』には、台与[臺與]とある)なるもの、年十三をたてて王とした。

国中はついに定まった。(張)政らは、檄をもって壱与を告諭した。)

と書かれており、卑弥呼の死後の混乱。そしてそれをトヨというものが収めたと書かれている。

そして、その後トヨが朝貢したという記述を最後に、邪馬台国に関する記述は姿を消す。

その後、邪馬台国がどうなったか、示す資料はない。

大王(おおきみ)を主権者とする連合国家、大和朝廷が歴史に姿を現すのは、それから約一世紀前後、4~6世紀ごろと考えられるが、もはや神話の世界の話であり、はっきりとはわからない。

だが、かつて大和朝廷という、大王のもとに地方豪族が連合するという連邦国家が存在し、戦乱荒れ狂う中国大陸と、朝鮮半島を介して渡りあっていたという事実は確かなようである。

しかし大和朝廷はやがて有力豪族の専横という弊害をおこし、国力は衰退する。

それを克服し、朝貢という習慣から脱し、天皇中心の中央集権国家として生まれ変わるには、飛鳥時代、聖徳太子の誕生を待たねばならなかった。

そしてその後大化の改新、白村江の戦いの敗北、壬申の乱という激動の時代を経て、さらに国家の枠組みを固めながら、日本の歴史は絢爛たる平安時代へと続いてゆく。

これを現代に置き換えたとき、中央権力が強力な中国、韓国、ロシアの台頭と、理想を高く掲げ、自由、人権、友愛精神をもって国家の基本とした日本、アメリカ、欧州の凋落と重ねるのは理論の飛躍が過ぎるであろうか。

我々は歴史を学ぶのではなく、歴史から知恵をくみ取る。つまり歴史から学ばなければならない時期に来ているのかもしれない。

グリム童話の白雪姫の最後は、

女王さまは、まねかれたご殿(てん)にはいりました。

そして、ふと見れば、わかい女王になる人とは白雪姫ではありませんか。

女王はおそろしさで、そこに立ちすくんだまま動くことができなくなりました。

けれども、そのときは、もう人々がまえから石炭(せきたん)の火の上に、鉄(てつ)でつくったうわぐつをのせておきましたのが、まっ赤にやけてきましたので、それを火ばしでへやの中に持ってきて、わるい女王さまの前におきました。

そして、むりやり女王さまに、そのまっ赤にやけたくつをはかせて、たおれて死ぬまでおどらせました。

(菊池寛訳)

とある。

ひょっとしたら、「真実を映す鏡」の言うことに一喜一憂し、善良なものをあの手この手で抹殺しようとし、挙句に他国の民衆にまっ赤にやけたくつをはかされて、たおれて死ぬまでおどらされる「わるい女王様」は、一部の政治家でも官僚でも財界人でもマスコミですらもなく、

我々、一般の日本国民、そのものかもしれない。

怖い話投稿:ホラーテラー 悪乗り倶楽部さん  

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