短編2
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ヒップホップ

この前仕入れた、同僚Uから聞いた話です。

週末、夜遅くになると近くのビルの広場で、ヒップホップダンスの練習をする20歳位の男子3人組がいた。

その広場は、Uの部屋の窓から20M位に見える場所だった。

その日、Uはクレーム応対等で、すごく疲れていて帰宅後すぐに寝たが、地面を蹴る音に目を覚まし、思わず言ってしまった。

「うるせーな静かにしてくれよ!」

と、怒鳴ったのだ。

そしたら、3人は素直に「すいませんっしたっ!」 と、すぐに謝った。

悪っぽい見た目とは違う彼らに、好感をもった同僚は

「いや、こっちも色々あって、イライラしてたんだ・・・・。」

それから少し仲良くなったので、週末になると窓から、彼らのダンスを眺めたりしていた。

ところがある夜から、3人はパッタリと姿を見せなくなった。

それから3週間が過ぎた雨の夜、残業で真夜中に帰宅したUは、

タン・タタタン・タタン・トン!

と聞き慣れた音がしたので窓を開けた。

「おー、ご無沙汰っ・・」

と言った瞬間、固まってしまった。

・・・・誰もいないのに、ステップの音だけが響く。

よく見ると、うっすらと白い湯気の様なモヤが動いている。

彼らだ!・・・Uは悟った。

だが、次の瞬間・・・!

「ドダダダダダダダダッ!!!」

いきなり全速力で走って来た白いモヤに、恐怖を感じ、慌てて窓を閉めかけたが、

あとチョットのところで閉まらない!

その隙間から、男の手が無理矢理、窓枠から入って来た!

全部で6本の腕が、入り乱れて窓枠からグリグリ暴れ狂っている!

もう耐えきれない!

と思った瞬間、

「ガラガラガラッ!!!」

全開にされると同時に、モヤが部屋に入って来てしまった!

3体のモヤは同僚を掴むと、ものすごい力で揺さぶり、

「タスケテ!・タスケテ!!助けて!戻りたい!コッチに戻りたい!」

その必死の思いが、同僚をグイグイ締め上げる。

「わからない!俺にはわからない!スマン!!」

気が付くと、モヤはいなかったが、しばらく謝り続けていたという。

その翌週、ビルの広場の片隅には、白い花束が添えられていた。

近々、何があったのか、花束の置き主に聞いてみるそうです。

怖い話投稿:ホラーテラー りんごあめさん  

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