中編4
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僕はきっと

僕はきっと

わかっていたんだ…

でもあの頃は何も知らなかった…

気付くこともできなかった。

小学生のころ、僕は周りに迷惑をかけてばかりのいわゆる問題児のようなものだった。

5年生のときの担任がその年新しく転任してきた先生で、40歳くらいの男の先生だった。

僕は初めから気に入らなかった。

というのも僕はクラスの子とうまくコミュニケーションが取れていなかったと思う。

中には仲のいい子もいたが少数だ。

だが、その担任はどんな子にでも明るくみんなの人気者であった。

僕はわかりながらも少し嫉妬した。

新学期が始まって2ヶ月ほどたったころ、先生が

「クラスの子とは仲良くやっているか?」

笑顔で聞いてきた。

「先生ほどじゃないけど。」

たくさん皮肉を込めて言葉を吐き捨てて、その場から逃げた。

僕は悔しかった、本気で憎んだ…。

僕は何か問題を起こしてやろうとして理科の実験でわざとアルコールに火をつけた。

先生は慌てて消していた。

怒られ、殴られるのも覚悟していた。

ただ教室が破損したため僕と先生は職員室に呼ばれた。

そこでもやはり覚悟していた。

「私が彼にやらせてしまったんです…。これも実験だと…」

いきなり先生が喋りだした。

《なんでだ?どうしてかばってんの?》

当然僕も怒られたが、それよりひどかったのが先生だ。

始末書的なのを書かされていた。

一段落して教室に戻るとき

「理科は面白いだろう?」

どうしてそんなに笑顔なんだ?

急に罪悪感におそわれた。

それから何故か僕にやたらとかんでくる。

最初はうっとうしくて嫌いでしかなかったのが、自然と話せるようになったのがそれから1ヶ月ほどしてからだ。

いつの間にかどの先生よりも担任が大好きになっていて、来年もこの先生がいいと思うほどだった。

そして2月くらいになってもうすぐ6年生になろうかとしていたとき。

いつものように朝先生を教室で待っていた。

廊下を歩く音、だんだん近づいてくる。

先生だ。

ガラガラっ

入ってきたのは校長だった。

体調でも悪いのかあまり元気がなかった。

「残念なお話があります…」

話始めたときには教室は静まり返っていた。

「昨晩、○○先生がお亡くなりになりました…」

校長はすでに泣きそうな表情で僕らに向かって話した。

「嘘だぁ〜」

一人の女子が半分笑って半分泣きながら言った。

「○○先生は、小さな子が飛び出したのをかばって車に跳ねられてしまって…」

もうそれ以上喋れないだろうと思った。

あとから聞いた話だが、結局小さい子も助からなかったそうだ…

それだけ言うと校長は出ていった…

まもなく次は教頭が入ってきた。

「今日から私がこのクラスの担任をします。」

重い口調だった…

クラスの大半が泣き崩れ、言葉など到底届くはずもなかった。

僕は数分放心状態が続いたあと次は涙が溢れてきた。

心のなかで何回も嘘だと言った。

嘘だと言ってほしかった。

数日後先生の葬式が行われクラス全員が出席した。

もちろんみんな泣いていた。

僕もだ。

飾られた先生の写真は笑っていた。

しかも、どんなやつでも幸せにできるだろというくらい天使のような笑みだった。

それを見て、余計に涙がでた。

先生の母親がきて

「いつもあなたたちの話を電話できいたの…すごい幸せだったのよ…」

母親は先生の写真を見た

「○○、生徒さん来てくれたのよ。幸せだよね…」

その場から逃げたかった…

身体中の水分が涙で枯れるんじゃないかってほど泣いた。

葬儀の次の日普通に学校があった。

いつもよりやけに静かな教室だったのを覚えている。だれも騒いでいなかった。

廊下を歩く音、だんだん近づいてくる。

ガラガラっ

「おはよう。」

それは教頭の声じゃなかった…

全員が扉の方を見る

そこにいたのは先生だった

訳がわからなかった…

中には泣いてるやつもいた

「どうしたんだみんな?先生はここにいるんだぞ?」

そんな笑顔で言われたら笑っちゃうよね。

「授業を始める前に言いたいことがあります。」

みんなは目の前のことを信じるしかなかった。

先生は生きているんだと。

「先生は、君たちが大好きです。でも、いつまでも一緒にいられるわけではありません。」

「どうして?」

「先生もね、一緒にいたいけど君たちは出会いを経験したら別れも経験しなければいけません。これは君たちがこれから生きていく上で大切なことです。」

先生が泣いているように見えた…

「あっ教科書忘れた!!笑

ちょっと待っててくれ。」

先生は教室を飛び出し教科書を取りにいった

廊下を走る音、だんだん近づいてくる

ガラガラっ

「すまんすまんっ遅れて。」

教頭だ。

「先生は?○○先生は?」

女子の一人が言った。

「何言ってるんだ。昨日葬式したばっかりじゃないか。」

でも確かに…

「授業始めます。教科書の…」

先生は僕らに伝えに来た

最後に僕らに伝えたかったんだ。

言えずにいたことを。

今になって思う…

先生は教科書を取りに行ったまま帰ってこなかったけど、やり残したことはこの世に取りに来た、と。

先生…

今の僕は先生に近づいていますか…?

僕は今日も生徒が待つ教室の扉を開く

ガラガラっ

「おはよう。」

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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