短編2
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微笑

あまり思い出したくない話ですが……

二年前、都内某駅構内で若い女性の飛び降り自殺を目撃してしまいました。

私自身があまり人の死に接した事は少なく、それだけでもショッキングな話だったのですが、その“死”以上に恐ろしい記憶を焼き付けられました。

私が電車を待っていたのはホームの右端に近い場所で、女性が居たのは少し離れた中央寄りの場所でした。

カジュアルな服装の成人女性で、黒髪のセミロング、化粧は薄めでした。

プアァ、と警笛を鳴らしながら走ってくる電車。

私は何気なしに女性のいる辺りに目をやっていたのですが、

女性は首だけをこちらに向けて、冷笑を浮かべ、視線を固定したまま体を浮かせて……

背中に冷たい何かが走った直後、物凄い音がホームに響き渡りました。

そのホームに居た人達も何が起きたのかを知りパニックでした。過剰な表現ではなく、地獄絵図と言わざるを得ない状態でした。

周囲が混乱する中、私はほんの一瞬前の彼女が浮かべた薄ら笑いの表情が頭から離れませんでした。

まるで静止画のように、凍りついた笑顔が頭を支配していました。

不謹慎ではありますが、世間から見ればよくある飛び込み自殺のひとつなのでしょう。

ですが、私はあの微笑を思い出すだけで今でも震えが止まりません……。

あの笑顔の真意は分かりませんが、身の毛もよだつような負の感情を孕んでいたのは明らかでした。

最後に。私自身に霊感はなく、あれから怪異の類いは全くありません。

そしてこの事件についての個人的な願いを述べさせて頂きます。

彼女の視線が捉えていたものは、私でなく、私の周りに居たのは誰かに向けられていたと願いたい次第です。

私は浅ましいでしょうか?

怖い話投稿:ホラーテラー 403さん  

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