短編2
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伝 言

ちょうど一年前。

僕はコンビニでバイトをしていた。

深夜から明け方までのシフトが多かったが、この辺は、利用客もご近所の方が多く、物騒な事とは無縁で平和に働かせてもらっていた。

ある日の午前3時頃、珍しく県外ナンバーの車が止まり、男女が降りてきた。

男性の方はキチンとしたスーツを着ていた。

女性の方は長めのコートを襟を立てて着ていた。

僕は何か違和感を感じた。

女性の足元が裸足にサンダルなのだ。

長い髪で顔半分が隠れているが、顔色がよくない。

男性はサンドイッチやおにぎりを物色しながら、女性に何か言っている。

言葉はハッキリと聞こえないが、きつい口調で何か急かしているようだった。

何か嫌な予感がした。

女性がレジに近付いてきた。

僕は警戒しつつ女性と向き合った。

『すみません…トイレを貸してください。』

消え入るような小さな声で女性は言った。

軽く前髪をかき上げたため、隠れていた顔がちらっと見えた。

殴られたようなアザがあり、瞼が腫れていた。

『…!?』

驚いた僕が声を上げそうになるのを女性は眼差しで制した。

そしてさらに小さな声で、

『トイレは男女別?』と聞いた。

僕が頷くと微かに女性の微笑んだように見えた。

女性はトイレに行き、男性はレジに来た。

男性は無言だった。

午前3時に何一つ乱れのない格好で無表情、無言で立つ男は不気味でもあった。

やがて女性がトイレから出てきて、二人は車に乗り込んだ。

行きしなに女性が僕をちらっと見た。

僕はなんとなくトイレを確かめなければならないような気がした。

女子トイレに行ってみると

『私は〇〇〇〇

タスケテ。ケイサツ』と壁に口紅で書かれていた。

僕はすぐに店長に連絡した。

店長はいたずらの可能性もあると言ったが、一応、警察に連絡した。

あれから一年。

新聞にもテレビにも、それらしい記事はない。

あの女性はどうなったのだろうか…

いたずらなら、それでも構わない。

無事でいてほしい…

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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