短編2
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スフィアのおじさん

『EXPO 恐○博』というのをご存知だろうか。福井県でやってた恐竜をテーマにした万博のようなものである。当時小学生で、大の恐竜好きだった僕は、親にせがんで連れていってもらう事になった。

 

皆さんも経験があると思うが、ああいうテーマパークや遊園地といったものの土産物屋には、えてして全然関係ない玩具が多数並べられているものである。

そして大抵の小さな子供は、マスコットキャラクターのキーホルダー等より、そういった玩具の方に興味を持つ。僕もその一人だった。

 

『伝説の~~』などと名のついた、全く恐竜に関係ないメッキの龍のキーホルダーを物色していた時、その人は突然僕の前に現れた。

 

「ねぇボク!これ、面白いよぉ~!?」

 

そう言って、話しかけて来たのは、3~40代?の、スーツをビチッと着た、手にスフィア(エガちゃんがCMをやってた、ツマミを持って広げると何倍にも大きくなる多角形の玩具)を持ったおじさん。

「どう?これ。ダメならまだまだ大きいのも、向こうにあるよ!?」

と、実演しながら売り場に連れていこうとする。

子供心に、タチの悪い販売員に捕まったとオロオロしていた。

大人にこう詰め寄られては、小学生にはどうしようもない。

その時。

 

「コラ!○○!一人で動き回るなって言っただろ!来なさい!」

 

父さんが駆け寄ってきて、助けてくれた。

それを見ると、販売員は悔しそうにスゴスゴ奥に引っ込んでいった。

 

と、ここまでが最近までの記憶である。

実際忘れかけてた思い出だが、ふとしたひょうしに思い返し、どうにも違和感を感じた。

 

まず、子供だけにあんなに売り込んでどうするのか。安いものじゃないんだし、父さん、つまりが財布が来た時こそ、セールスのしどころではないのか?何故引っ込んでしまったのか?

 

次に、土産物屋の販売員は、よく考えたら全員EXPOのエプロンをつけてたハズである。なぜ彼だけ恰好が違ったのか。

 

最後に、『売り場に連れていこうとした』と記憶していたが、そもそも僕がいた場所が、そういう関係ない玩具を陳列しているスペースである。

 

被害妄想気味な記憶の脚色が無いとは限らないが、なにしろ印象が強烈すぎてその人の声や顔まで覚えているのだ。

 

今僕は19歳。児童を狙った犯罪とは無縁だったつもりでいたが、案外、知らないうちに危ない目にあっていたのかもしれない。

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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