長編9
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僕は、ある事がきっかけで右目の視力を失った変わりに、今まで見えなかったものが見えるようになりました。

僕が、高校生の時の話です。つまらなかったらごめんなさい。

僕の高校生活は、アキ以外に友人と呼べるような存在はいませんでしたが 、アキの優しい人柄に

いつも救われていました

次第に僕は、アキに もっと自分を知ってもらいたいのと、隠していることへの罪悪感から、

自分の右目のことを打ち明けました。

話す事で、気味悪いと思われ 今の関係を失う覚悟だった僕は、アキの言葉を聞いて アキとは一生 親友でいたいと思いました。

「そんな事だったのか…もっと早くに話してくれればよかったのに。俺は見た事ないから何とも言えないけど、NIKOが見えるってんなら信じるし、何か困った事があればいつでも力になるから」

「ありがとう…僕もアキに何かあったら…絶対守るよ…!」

(ちなみに、ホモ・ゲイ的な要素はありません…。)

高校3年生のある日、

僕は、アキからある相談を受けました。

「俺の彼女のミカの事なんだけどさ…最近、変な事言うんだ…」

「変な事?」

「最近、深夜まで受験勉強してたら、二階なのに部屋の窓を人の影が、横切るって言うんだよ…こんな事、他のヤツには話せないし…NIKOなら詳しいかなって思ったんだ…」

僕は、理由は何であれ

アキが僕に頼ってくれたことが とても嬉しかった。そして、それに何としても力になりたいという思いでいっぱいになりました。

「詳しいかは分からないけど…僕に出来る事ならなんでもするよ。今度、ミカちゃんを連れて来てくれるかな…?」

「ありがとう…明日、放課後NIKOの家に連れて来ても大丈夫かな?」

「うん大丈夫だよ。うちは両親共働きで帰りが襲いから」

翌日、アキがミカちゃんを連れてやってきました。

ミカちゃんは近くにある女子校に通っていて、

アキとは、付き合いだして2ヶ月の頃でした。

「はじめまして。いつもアキから話しは聞いてました。」

「僕も、毎日のようにミカちゃんの事を聞かされてますよ(笑)」

そう言うと、ミカちゃんは少し照れた表情でアキの方をチラッと見ました。 アキも、少し照れた表情でした。

「毎日はないだろ!……それよか、ミカになんか見えるか…?」

「ちょっと待ってね…」

僕は、右目の眼帯を外しました。

僕は、眼帯を外した右目でミカちゃんを見ました

長時間眼帯を着けていてた右目を少し擦り、

左目を手で覆い隠しました。

【ん…赤ん坊…!?】

僕の右目に写ったのは、 生まれて間もないくらいの赤ん坊でした。

「NIKO!何か見えたのか…?」

「えっ…いや…ちょっと待ってね…」

僕は、思いもしなかった 状況に、すぐには事実を伝えず、答えを濁らせた。

僕の右目はほとんど視力のない状態で、薄暗い視界の中に、赤ん坊がポツリと浮かんでいました。

更に隠していた左目を開きました。右目だけだと 霊の姿ははっきり見えますが、その他の物が一切見えず、対象者にどのように憑いているのか分からないからです。

再び両目で見ると、

赤ん坊は、ミカちゃんの 肩に手をかけ、後ろに隠れるようにして こちらを見ていました。

両目だと、赤ん坊の表情がボヤけて見づらいため、再び右目だけで見てみると…

こちらを見ている赤ん坊の顔は、怒っているような、なにか威嚇しているような表情に見えました。

【…あれっ…?】

赤ん坊は確かに こちらを見ていますが、その視線は微妙に僕の少し上…

後ろの方を見ているようです。

その瞬間、

嫌な汗が背中に流れました。

おそらく、赤ん坊の威嚇しているような視線の先 は僕のすぐ後ろで、

そこには 何かがいる…

僕は、意を決して

思いっきり 後ろを振り返りました。

『…ズッ…ト…イタ…ヨ…』

男がいました。

全身の肌の色は赤黒く、 その瞳に白目は一切無く黒目のみ…

笑う口からは、涎なのか、黄色い液体が垂れています…

【…僕に憑いていたのか……いや、そんなはずはない…それなら直ぐに気付くはずだ…まさか…N村の……!?……ちがう…この男は学生服を着ている……】

僕は、見ることはできても霊視などは一切できないため、ミカちゃんの後ろにいる赤ん坊と、僕の後ろにいる、学生服の男に挟まれた状態で、

頭が混乱していました。

「………!」

「おい……!」

「おい!NIKO!!」

僕を呼ぶアキの声で、

我に返りました。

僕は、この状況を どう説明すればいいのか わかりません。

「急に後ろ向いてから、何度も呼びかけても、聞こえてないようだったぞ…!?何か見えたんだろ?」

僕は、この状況を二人にどう伝えるべきが悩んでいました。見たまんまを そのまま伝えるべきか… それだけだと、不安を与えるだけで何の解決にもならない…

僕は、さっき聞こえた

男の声を思い出した。

そういえば…声が聞こえる時は、いつも耳ではく 頭の中に、念のように入ってくる…それなら…

僕は、この時 初めて自分の方から 霊に対して、 交信を試みました。

「二人とも、もう少し待っててね…」

僕は 心の中で念じてみました。

【君は誰なんだ…?】

【……君は誰なんだ?】

【クックックックッ………】

再び、男の念が僕の頭の中に入り込んできた。

【もう一度聞く…お前は誰なんだ?…そして目的はなんだ?】

【…クックックックッ…クヒャハハハハハハァァアア…!!】

男の笑い声で、僕の頭に 鈍い痛みが走った。

…トンッ…………

僕の肩に、何かが触れた

男の手だと分かった瞬間、言葉ではうまく言い表せませんが、色んな感情と、記憶…場面が頭にいくつも もの凄い早さで流れてきました。

僕は耐えきれずに、

その場を離れ トイレに駆け込み、嘔吐しました。

直ぐにアキが来て、背中をさすってくれました。

「大丈夫か!?キツいんだったら無理はしなくていい…!」

「…大丈夫…わかったよ。わかった気がする………だけど、ミカちゃんも傷付くし、アキはもっと………」

僕はアキに肩を借りながら居間へと戻った。

「…大丈夫なの…?」

ミカちゃんが、とても不安そうな顔をしていた。 その表情を見て、話す事を再びためらったが、

アキの目が、話す事を

承諾しているようでした。

「何から話していいかわからないけど…ミカちゃんは、前に妊娠していなかった…?……その子は生まれてはいないよね…?」

「………………」

ミカちゃんは、無言で驚いた顔をしてるが、

これ以上 聞く必要もなさそうでした。

「でも…その子はミカちゃんを守ってくれてる……」

「それじゃあ…ミカは大丈夫なんだな…!?」

「それが……」

「…何だよ?守ってくれてるんだろ…!?それなら問題はないだろ!?」

アキは、なんて優しいやつなんだ。恋人が、以前の恋人の子を若くして身籠り、おろしている事実 を黙っていた事を、責めるどころか、彼女の無事だけを願っている…

僕は、この先が更に話し 辛くなりました。

「なんなんだよNIKO!?黙ってないで何とか言ってくれ……」

「…うん。その子はミカちゃんをずっと守っているよ。何から守っているかって言うと……その子の父親……ミカちゃんの前の彼氏だよ……」

ミカちゃんは、目に涙を浮かべている。

「…なんで………」

「その人も亡くなっているだね…今…僕の後ろにいる…」

【クックックックッ………】

再び、あの笑い声に頭が痛くなる。

「…なんで…死んでも…私をおいまわすの…」

「…追いまわす…?どうゆう事だミカ…?」

アキが、ミカちゃんに問うが ミカちゃんは泣くだけで、話せる状態ではありません。

「おそらく…彼は…恋人でもあったが…気持ちが大き過ぎて、やがてミカちゃんはそれが、段々怖くなり、距離を置いた…その後…妊娠が発覚したが…」

「…そんな…」

アキが肩を落とす。

「死んでからも、ミカを泣かせるのかよ…NIKO…お前の後ろにいるんだよなそいつ…?」

「うわぁぁぁぁあ―!!!!」

僕の返事を待たずに、アキは立ち上がり 見えない相手に殴りかかりました。

「やめろアキ…!落ち着け…!」

僕は、泣きながら拳を振るうアキを必死で抑えました。

「…くそぉ…どうすりゃいいんだよ…NIKO…」

僕はとりあえず、二人を落ち着かせた後、ミカちゃんから話しを聞きました。

その恋人と出逢ったのは2年前で、強い

アプローチに負けて

付き合い出したそうです

始めのうちは、優しくて 何よりも自分を一番に思ってくれている事を幸せに思えていました。

しかし、メールの返信が少し遅れたり、友達と遊んでいて 電話を取り損ねたりしただけで、

人が変わった様に怒る彼の事が次第に怖くなりはじめました。彼の行動は段々エスカレートしていき、ミカちゃんが友達と遊んでいる場所に偶然を装って現れたり、部屋の明かりが消えるまで外で見張っていたりするようになり、耐えられなくなったミカちゃんは、別れを告げました。その後もストーカーまがいの事が続きましたが、ミカちゃんの両親が相手の親に話しをつけて、それもなんとか収まりました。

彼が亡くなった。

その知らせを受けたのは、彼の両親と話してから 5日後のことでした。

その時 ミカちゃんは

彼の子供を身籠っていて、本人はかなり悩んでいましたかま、両親に押しきられるようにして、

子供をおろしました。

遺書はありませんでしたが、現場状況と目撃者の 話から自殺と断定され、 彼の部屋の引き出しには、「ミカ愛してる呪う呪う…」の文字が、ノートいっぱいに書きなぐられていたそうです。

話しを聞き終わった僕は、これからどうするかを 考えていました。

宮下さん(僕の右目の事で、相談に乗ってくれ、対応する術を教えてくれていた霊能者の方)に、相談するしかない。

「ただいま~!」

その時、弟が学校から帰宅して居間に入ってきました。

「あっ!アキ君こんにちわ!」

【…グフッ…ヴゥ……】

その時、後ろの方から、男の苦しむような声がしました。

【…あっ!】

僕は、直ぐに気づきました…弟だと。

【グソォォオ゙……ヤメロォ…!】

普段は見えない弟の守護霊?が、その時初めて見えました。後に宮下さんに聞いて知りましたが、神様の1人で 何故弟を守っているのかは、宮下さんにも分からないと言っていました。

弟の後にいる、その神様から後光のような光が放たれ、男はひたすら苦しんでいます。

やがて男の姿は見えなくなり、その神様の姿も薄れゆく後光と共に見えなくなってしまいました。

「兄ちゃんさぁ、冷蔵庫にあった俺のメロン食った?」

「…?えっ…あぁ…多分、母ちゃんだろ……」

「マジかよ~!楽しみにして帰ってきたのにぃ~!」

その後、全てを聞かされたアキが、八百屋から メロンを買って来て弟に渡しました。

弟は「…なんで?」って顔をしていましたが、

とても喜び、そのメロンを半分に切り大人食いを堪能していました。

残りの半分は、僕ら3人で頂きました。

その日以来、僕は何度か、右目を使って弟を見ましたが、あの時の神様の姿は見ることが出来ませんでした。

その後、ミカちゃんが 身の回りで変な人影を見る事はなくなり、

ちゃんと水子供養も欠かさず行なっていると言っていました。

ちなみに、現在 二人は結婚して、もうすぐ女の子が生まれるそうです。

あの子の生まれ変わりならと、切に願っています…

怖い話投稿:ホラーテラー NIKOさん  

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