中編3
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猫を轢いてしまった

去年の盆休みに母方の祖父母の家へ行ってきた。

午前中に坊さんにお経をあげてもらい、昼は隣町の料理屋で食べることになった。

移動手段は車。

しかし親戚のほとんどが集まり、人数が多かった(確か19人)ために7人乗り以上の車3台(俺のヴァンガードと従兄のアルファード、叔父のエルグランド)に分乗して行くことになった。

俺の車に乗ったのは運転手の俺と嫁、姉、義兄、姪、甥の6人。

左右を草村に囲まれた田舎道を走っていると、草村から急に何か小さい物が飛び出してきた。

急いでブレーキを掛けたが、間に合わず。

結構な衝撃が伝わってきたので(やっちまったなあ…)と思いながら同乗者5人が大丈夫なことを確かめて車を止め外へ出た。

案の定1匹の三毛猫を轢いてしまっていた。

首輪はしていないので野良猫のようだ。

乗り上げはしなかったので目立つ外傷は無かったけど、口から大量の血を流し、死んでいるのは明確だった。

妻が前を走っている二台に連絡して止めてもらい、俺は姉と義兄に「2人(甥と姪)に外を見せるな」と念を押し、たまたま車にあった新聞社を使って猫を道路脇に移動させ保健所へ連絡。

甥と姪は何を轢いたのかしきりに聞いてきたが、義兄が「捨てられてたゴミだよ」とか何とか言って無理やり納得させていた。

その後は普通に昼食を取り、祖父母宅へ帰った。

帰りに同じ道を通ったが、すでに処理されたようで、猫の死体は無かった。

携帯からなので、すまないけどこの辺で区切らせてもらう。

俺が恐ろしい体験をしたのはその日の夜中。

祖父母宅の座敷に布団を並べて寝ていた俺達夫婦と姉家族。

俺はふと目が覚めたので、枕元に置いてあったタバコを手に取り、縁側へ出た。

キリギリスが鳴く中、タバコに火を着け星を眺めてボーっとしていると、背後に人の気配を感じた。

振り向くと甥が立っていた。

起こしてしまったかと思い、「ガサガサしてごめんな。もう寝…」まで言ったとこで気が付いた。

無表情で立つ甥の目が異常なまでにギラギラ光っていた。

まるで動物の目だ。

(何かおかしい…)

そして甥が

「マァーォ」

と一声発した。

その瞬間昼間の猫のことが頭に思い浮かんだ。

全身に鳥肌が立った。

俺が固まっていると、甥はくるりと後ろを向いて座敷へ戻って行った。

しばらくしてタバコの灰が足に落ちたことでふと我に返った。

ビビりながら座敷へ戻ると、甥も他の皆もスヤスヤ寝ていた。

とりあえず俺も布団へ入り、冴えてしまった目をつぶって無理やり就寝。

朝起きてみると、俺と義兄以外は全員起きていた。

甥は子供向けの教育番組を姪とワイワイ言いながら観ていた。

その時甥に昨日の夜中の出来事を尋ねてみたが、甥自身は何も覚えていなかった。

しかし、甥が話す夢の内容を聞いて改めてゾッとした。

5歳の甥の話を要約すると、「夢の中に猫が1匹出てきた。逃げるので追いかけてたらその猫が車に轢かれた。車を運転していたのはおじちゃん(俺のこと。まだ25なのにおじちゃんはなあ…)だった。そこで夢は終わった」という感じ。

その日、俺は猫を轢いてしまった場所へ1人で線香を上げに行ってきた。

猫を置いた道端へ適当な石を並べ、その上に線香と町に一軒だけあるコンビニ(ド田舎なので)で買った猫缶も1つ置いてきた。

それ以降は特に何事も起きなかった。

甥も以前と変わらないやんちゃ坊主のままだ。

甥の悪戯の可能性もあるかも知れない。

しかし、5歳の子供がそこまで手の込んだ悪戯をするとは考えられない。

それに甥が「マァーォ」と言った時。

その声は人間が発するモノとは思えなかった。

皆さんにも是非気を付けて欲しい。

轢いたのが動物でも、ちゃんと誠意を持って成仏してくれと願うように。

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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