中編3
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開かない扉

これは私の同僚のDの体験した話です。

Dとは大学生の頃から知り合いで、大学は違いましたがよく飲みに行ったりしていました。

私もDも怖い話が大好きで、よくどこからか話を仕入れて酔った勢いで盛り上がったりしていました。

その日も居酒屋でたわいもない話をした後、私のマンションでビールと枝豆をつまんでいました。

いつものように怖い話が始まり、その日は何故だか開かずの扉だの知らない世界に繋がっている扉だの、とにかく扉に関する怖い話で盛り上がりました。

怖い話も飽きてきて、ちらっと時計を見ると既に日付を越えていました。

「D、お前んとこ奥さん怒ってんじゃないか?」と私が時計を指さして言うと、Dは慌てて帰りの準備を始めました。

私は独身だったので何時まででも平気でしたが、Dは家庭を持っていて、しかも完全なる恐妻家だったため時間的に完璧アウトでした。

家に連れ込んだ私にも責任があるので、「何かあったら俺も謝るよ」と言ってDを見送りました。

次の日会社に来たDはものすごく顔色が悪く、いつものような健康な雰囲気が感じられませんでした。

「奥さんに怒られたのか?」と私が聞くと、

「それの方がまだよかった」青い顔でその後の出来事を語りはじめました。

私の家を出た後Dは無事家には着いたらしいです。

そして恐る恐る玄関の扉に手をかけ、ゆっくり引いてみたところ、鍵もかけられてなかったと言うことでかなり安心したと言っていました。

しかし玄関に入って靴を脱いだとき、なぜか異様な雰囲気を背後に感じたらしいのです。

そりゃあ真夜中なので静かなのは当たり前ですが、その静けさがそれだけの理由に感じられなかったとか。

つい先程まで私と怖い話をしていたということも手伝って、いい年をして身震いをしたと言っていました。

振り返ると、そこにはいつも何も意識せずに開いていたリビングへ繋がる扉がありました。

Dの家は1階は廊下がなく、玄関からすぐにリビングに繋がる扉があります。

何故かその扉から、得体の知れない悪寒を感じたらしいです。

もちろん奥さんも子供も寝てしまっていて、リビングは真っ暗でした。

Dは立ち尽くしてしばらくその扉をじっと見ていたらしいのですが、そんなことをしていても拉致があかないと思い、意を決してドアノブに手をかけました。

しかしいくら扉を押しても、ビクともしなかったらしいです。

そこでDは私が話した開かずの扉の話を思い出したらしく、パニックになりました。

とにかく開け開けと必死に扉を押したらしいのですが、結局開かずDは助けてくれと念じながら一晩玄関で過ごしました。

次の日の朝、いつのまにか寝てしまったDを奥さんが見つけて起こしました。

「そんなところで寝てたら風邪引くでしょ、この酔っ払い」と半ば呆れ顔で言われたのですが、Dは昨日起きたことを奥さんに全て話したそうです。

すると奥さんが血相を変えてDに聞きました。

「あなた…この扉を押したのよね……」

そんな深刻な顔の奥さんを初めて見たDはビクビクしながらも首を縦にふりました。

すると次の瞬間、Dは奥さんから思いもよらない言葉を耳にしました。

「そりゃ引かないと入れないわよ」

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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