中編3
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幽霊屋敷

『幽霊ホテル』『幽霊マンション』を見てたらなんか

私も幽霊目線に挑戦したくなりました

原作者様、不快に思われたのなら申し訳ありません

「おかぁさん、ごはんまだぁ」

いつもの休日の夕飯時

子供が居間でご飯の催促をした

「もう少しでできるから、ちょっと待ってね」

と、母親は答えた

その台所は、最新のシステム化された台所とは比べるべくもない

その決して使い勝手が良いとは言えない台所で

母親は、忙しそうに手を動かしているがあくまで楽しそうだ

「ご飯の前に手を洗いなさい」

「はーい」

我ながら幸せな家族だと思う

俺の役割はこの家族を守ることだとつくづく思う

最近、ここの家にはいろいろなものがやってくる

広めな庭には、よく小学生が入り込み野球をやったり

野良猫や野良犬が迷い込んできたり

それならまだいいが

夜になると不良たちが家の前にたむろしたり

酷い時になると深夜に勝手に敷地に入り込んでくる

若者のグループやカップルが居る

そんな時、俺は少し奴らを脅してやることにしている

まぁ、脅すといっても別に特別なことをするわけではない

物音を立てたり、急に大きな声を出してみたりするだけだ

最近の若者はだらしない

「やっぱり!!噂本当だったんだ!!」

などと言いながら敷地から走り出ていくのだ

どうやらは俺は、最近、近所で有名になっているらしい

しかし、そんなことはどうだっていいと思っている

なんといっても物騒な世の中だ

その中で家族が幸せに安全に暮らしていけること

それがおれの唯一の願いなんだ

家族は俺の一部であり

俺もまた家族の一部なんだ

とにかく俺は家族を守らなくてはならない

「あなた御飯よ~」

母親は、父親を呼んだ

どうやら、ご飯ができたらしい

「おー、今いくよ」

父親はそれに答えた

家族3人のいかにも幸せそうな、夕御飯が始まる

俺はこの風景が一番好きなんだ…

そんなある日

ついに俺一番恐れていたものが来た

工事作業員と近所の神社の神主だ

奴らは四隅に青竹を立て、注連縄で囲って祭場を作ると

その儀式を始めた…

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「では、地鎮祭も済みましたし、工事着工したいと思います」

「では、お願いします」

俺は、現場監督さんにそう短く答えた

今日から遂に、我が家の新築が始まる

ふと妻の方を見ると、妻が目を拭っていた

「どうした?」

「いえ、なんでもないの…」

「なんでも無い事ないだろう。今泣いてただろ?」

「笑わないでね…自分でもおかしいと思うんだけど…

 地鎮祭やってるときにね…

 地震で倒壊する前の家が見えたのよ」

「家が…?」

「ええ、それにそこで生活する私たちが」

「俺たちがか?ははは」

「笑わないで言ったじゃない」

「だっておかしいよ、あの地震で俺たちが死んだっていうのなら

 ひょっとしたら、それは幽霊かもしれないけど

 あの地震で家は壊れてしまったが

 幸い、俺たち家族に被害は出ずに

 こうして元気に生きてるじゃないか」

俺は5歳になる息子を抱き寄せた

「ええ、そうなのよ」

「そうなのよって…君言ってることがおかしいぞ」

「まぁ、聞いてよ

 何となくなんだけど、あれは倒壊する前の『家自身』と

 それに刻まれた私たちの生活の記憶だったんじゃないかなって思うの

 地震で倒れた後も、廃材が撤去された後も

 家はひょっとして、それに気づかずにずっと私たちを守ってくれていたんじゃないかってね

 そしたら、なんだか泣けてきちゃった」

「…なるほどなぁ。

 ひょっとしたら本当にそうかもしれないぞ」

「え?」

「この家が倒壊して俺たちがここから移って廃材が撤去された後すぐに

 ここが不良のたまり場になったりしたらしいんだけど

 その直後に、ここ幽霊が出るって噂が立ったんだ

 ひょっとしたら、それは幽霊になっても家が必死に

 俺たちを守っていてくれたのかもしれないなぁ

 

 

 

 だとしたら、まさに『幽霊屋敷』だ」

 

 

 

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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