これは昭和二十年代の話です。
香川県の四国八十八カ所の八七番札所の
長尾寺の御神木の大楠木に開いたウロに住み着いた古狸がいました。
その狸は賢い事で有名だったそうです。
お寺の裏に淋しい細道があるそうなんですが、そこを夜提灯を持って歩いていると
「今晩は!!」
と、突然後ろから声をかけられたそうです
後ろを振り向いても誰もいない
恐々とまた歩き出すと
また声をかけられる
という話です
その声は一つ前の代の長尾寺の住職の声にそっくりで、皆は住職が化けて出たと震えあがったそうです。
ですがある日、住職の化けの皮がはがれました。
仮にE-さんとします。
ある日のE夜-さんがその細道を歩いていると少し先を提灯で足元を照らしながら歩いている人がいました。
他に人が居るという事で安心しながら家路に着いていたそうです。
すると、不意に前方から
「今晩は!!」
と声がして、前を見ると歩いていた人が後ろを振り向き提灯で照らしていました。
そしてその人のすぐ近くに狸がいたそうです。
しかしその人は狸には気付かずE-さんに近付いてきて
「今、誰かに今晩はと声をかけられた」
と話しました。
E-さんはそこで今あったことをその人に説明して二人で笑いあったそうです。
説明した内容は
今さっきあんたの後ろに狸がいた。
先代の住職は生前、御神木に住み着いた狸を可愛がっていて、その狸が愛着のある先代の声をかりて悪戯をしているんだろうと
大体こんな内容です。
一通り話し終えた時には勿論、狸はいませんでした。
悪戯がバレだしてからは狸は悪戯をしなくなったそうです。
誰も狸を憎みもせず、捕まえずに放っておいたそうです。
死期が近付いてきたのか、狸はいつの間にか居なくなったそうです。
何故、「今晩は!!」なのかは謎のままですが。
全国どこでもありそうな話ですけどね。
怖い話投稿:ホラーテラー クルミ割り人形さん
作者怖話