短編2
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自宅前のサンタ

小学生の頃に突然サンタをよく見るようになった。

きっかけは分からない。

クリスマスでもないのに赤い服を着て

俺の家の前をうろちょろしてた。

母さんに聞いても相手にされない、

父さんに聞いても冗談がうまいと笑われるだけ。

そういえばサンタって子供にしか見えないんだっけ。と俺は思った。

ある日サンタが一人増えた。

赤い服を着た女の人だった。

サンタってじいさんだけじゃないんだなって俺は思った。

そういえばもう一人のサンタもじいさんというよりはおっさんだった。

どちらも物言いたげな顔をして俺をじっと見ている。

かなりの人見知りだったので俺は話し掛けなかった。

また一人サンタが増えた。

どうして皆俺の家の前に集まるんだ。

なんで母さんは追い払わないんだ。

その時あることに気がついた。

皆どこかで見たことがあるような気がしたんだ。

でもなかなか思い出せなかったので俺は諦めた。

次にやってきたサンタで俺は完璧に気がついた。

きっと皆俺の知り合いなんだと。

ばあちゃんが癌で死んだ。

俺はかなり泣きじゃくったのを覚えてる。

そのばあちゃんが俺の家の前に立っていた。

赤い服を着て、俺のことをじっと見つめている。

もう家の前はちょっとしたパーティーみたいになっていた。

俺はばあちゃんに話しかけた。

ばあちゃんは口を開かなかったが、手を差し出してきた。

覗いてみると、ビー玉のような透明の玉があった。

「くれるの?」と聞いたらばあちゃんが頷いた。

俺はばあちゃんから玉を受けとった。

他のサンタが順番待ちしてるかのようにばあちゃんのうしろに並んでいる。

皆、少しずつ色の違う透明なビー玉を俺に渡してきた。

手渡されるときそのひとたちが誰だか不思議と分かった。

3歳くらいのときに住んでた所にある駄菓子屋のおっさんと隣に住んでたお姉さんとおじいさん。

よく俺の相手をしてくれた。

全員分受けとって玄関の方に歩いていく途中、振り返ってみた。

もう誰もいなかった。

その時の俺には判断できなかったが、きっと皆亡くなったんだと思う。

ここからは勝手な解釈だけど、もしかしたら俺が渡されたあのビー玉は彼らの魂が入っていたんじゃないかって思ってる。

今でもたまにサンタが俺の家の前に現れる。

俺はビー玉を受け取る。

そして今でも全部大事に引き出しの中にしまっている。

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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