短編2
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葛藤(かっとう)

温厚に振る舞う私でも、どうでもよくなることだってあるんだよ。

何故、私が攻められねばならないのか?

わからない。

こんなにも皆のために我が身を犠牲にして働いているのに。

こんなにも苦しい思いをしてきたのに。

私は黒いジュラルミンケースを見つめていた。

ゆっくりと蓋を開けてみると、中には赤いボタンが1つだけあった。

これを押せば、全てが終わるのか……。

私の指先が無意識の内にそのボタンの上に乗っていた。

妻よ、今まで私と付き合ってくれて……ありがとう。

息子よ、お前の成長していく姿を見届けてやれなくて……すまない。

友よ、君がいてくれたから今の私があったのだ……あの世でまた会おう。

覚悟を決めた私はボタンを押そうとした。しかし、押せなかった。

押す勇気が無かったわけではない。決心は固かったはずだ。

理由は分かっている。私は自分だけの力で生きてきた。そう思っていた。

だが、こうして人生を振り返ってみると、数多くの方々に支えられてきたという事を思い出したのだ。

私は何を悩んでいたのだ?答えは始めから決まっていたではないか。

例え挫(くじ)けても、そこから這い上がって頑張ればいい。それがダメでも別のやり方を模索して色々試してみればいい。

それが私の生き方だったではないか。それが人生を楽しむという事ではないか。

悟りを開いた私は嬉しくなった。モヤモヤした気持ちは何処にもなかった。そう、一言で言うなら油断していたのだ。

「へっくしっ!」 ポチッ

「あ……。」

ゴゴ…ゴゴゴゴゴゴ……

20XX年 世界は核の炎に包まれた

怖い話投稿:ホラーテラー ゆうなさん  

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