中編3
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アイツと‘ソイツ’

俺が小学3年生の頃だった。

 「ただいま!」

今日で一学期も終わり、楽しい楽しい夏休みがスタート!!

テンション上がりまくってた俺は、母さんが作ってくれた焼きそばとおにぎりを食べて

誰と遊ぶかも決めずに外に遊びに行こうとしていた。

弟「にいちゃん、遊びに行くと?」

これは、俺の弟。四つ下で、もうね、誰が見てもかわいい奴でね、メロメロだった。

今でも弟に甘いのは秘密だ。

 「どげんした~?おいと一緒に遊ぶ?」

弟「うん!にいちゃんがよかなら遊ぶ!」

かわいい奴め!遊んでやるに決まってるじゃないか!

 「よかよ~。なんばして遊ぶ?」

弟「今さぁ、自転車ば練習しよっけん、手伝ってくれん?」

向上心の強い奴め!お前は大物になるぜ!

 「よし!分かった!練習ば手伝ってやろう!」

弟「ありがと!行こうぜ~!」

急いで着替えて(制服制の学校だった)、外に出た。

外は快晴。青く広がる空と、磯の香り。

皆さんにも覚えがあるのではないだろうか、

あの、夏休みに入って間もなくの解放感を。

弟「もう補助輪は外したけん、にいちゃん後ろばもっとってくれん?」

 「Ok!わかった!」

弟はヨロヨロしながらも、足を地面から放してこぎ出した。

 「おお!よか調子ぞ~!男は度胸!こいでこいでこぎまくれ!!」

弟「よ~し!にいちゃん!一回手ば放して!男はオキョウ(?)だぁ!」

 「よ~し!!わかった!放すぞ~!行け行k・・・・あ、アイツだ。」

 

弟「乗れた!!!」

一学期の通知表をもらい、去年よりよかったな~、母ちゃんに褒められるかな~、

とか考えながら、家に向かっていると、弟がヨロヨロ自転車に乗りながら現れた。

あいつ、自転車乗れるようになったんだな。

弟「・・・・・にいちゃん?」

俺「お~ただいま!お前、自転車乗れるようになったんか!?」

弟「え・・・うん・・・・え????」

俺「どげんした?つか、誰かに手伝ってもらったん?」

弟「え・・・やけん・・・え?にいちゃんに・・・?」

俺「は?」

弟「え、だってほら・・・あそこに・・・。」

弟が指差した先に、

俺がいた。

ソイツは、こっちを見ているのか、いや、にらんでいるのか。

俺だった。確かに俺だ。

あっけにとられ、しばし呆然としていると、そいつはニコッなのか、ニヤッなのか

一笑して、フッと煙のように消えた。

家に帰ると、かあちゃんまで「????」という顔をして

母「あんた、さっき着替えんやったと???」

この後も、かみ合わない話を永延とされた。

俺は、焼きそばも食ってないし、ランドセルも下していない。

実際、焼きそばは手をつけられずにテーブルに乗っている。

弟は‘誰’と、自転車に乗る練習をしたのだろうか。

もう少したってから‘ドッペルゲンガー’なるものを知った。

なんでもドッペルゲンガーに会うと、死ぬ、とか、寿命が縮む、とか

よくない影響があるらしい。

今年、19歳になったが、もちろん死んでないし、今のところ影響はない。

しかし、寿命が縮む・・・せめて、曾孫の顔を見て死にたい。

ドッペルゲンガーなのかどうかもわからないが、弟を可愛がってくれたので、

憎む必要もないし、怖がる必要もないのだろうが、やっぱり怖い。

その時のことを弟に聞くと

弟「あぁ~なんかね、うろ覚えばってん、いつもよりやさしいなって思った気がする。笑」

俺の愛情表現はドッペルゲンガー以下か!と突っ込みを入れながら、今度ほしがってた財布を誕生日に買ってやろう、と

なんとも兄馬鹿なことを考えていたのは秘密だ。

俺は幽霊を見ることがある。しかし、それとは別の‘何か’をみたのはこれが初めてだった。

過去に神様っぽいものとの体験もしているが、それはまた別の話。

こうなれば妖怪や鬼など、空想上のモノと思われている奴らもいるんじゃないか、と

俺のオカルト好きを加速させた話でした。

怖い話投稿:ホラーテラー 罰天さん  

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