中編4
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幽霊病院

『幽霊屋敷』の投稿者です

前回、『幽霊ホテル』『幽霊マンション』を見て

私も幽霊目線に挑戦したくなり投稿したのですが

不評だったので再度挑戦します

「で、先生。僕の病状はどうなのでしょう?」

私以外にその診察室には医者と患者そして、奥の部屋に看護士が一人いた

「正直なところ言うと、良く解りません。」

医者は答えた

「原因はなんなのでしょうか?」

「申し訳ありません。検査した結果を見る限りではどこが悪いのか…」

「そうですか…」

患者は19歳、最近高校を卒業したばかりの青年だ

青年は、医学的には神経系と思われる病気を患っていた

症状は、日常生活の中で突然、幻覚・妄想の類を見聞きし

錯乱状態に陥った後、意識を失うといったものである

初めて、症状を引き起こしたのが五か月ほど前だ

青年にとっては大学受験シーズンの直前だった

時期が時期だけに青年はすぐに病院に行ったが原因不明

次に症状が現れたのがその一か月後

その次は二週間半後、さらにその次は一週間後と段々その感覚が狭まっていた

最近では週に2~3回ぐらの頻度で発症している

青年は大学受験を諦めざるを得なかった

青年に身寄りは居ない

幼いころに施設に入れられたのだが

運良く、身元を受け入れてくれる人が現れ

今は養父、養母と一緒に暮らしている

大学受験を控えた高校3年になった時

青年は、自分の環境を顧みて大学進学を諦め働くことを決意したのだが

養父も養母もそんな青年を逆に怒り、なにがなんでも大学まで通わせようとしてくれたのだ

しかし、そんな好意を受けたにもかかわらず

青年は大学受験をすることすらできなかった

青年は心苦しく感じた

養父はそんなこと気にせずに今は、病気を治すことに専念するようにと言ってくれたが

青年は、これ以上はもう迷惑はかけられないと思っていた

病気が治ったらすぐにでも働くことを決意していた

「しかし、この病院に通い始めて、そろそろ半年になります!

 その間に何度も検査をしました

 それなのに何もわからないというのはおかしいじゃありませんか!!」

青年は声を少し荒げて言った

「ええ、ですから。こちらとしても、継続的に努力はしているつもりです。

 最近ではどうやら神経系の病気であることまでは解ってきています」

「僕の病気は、そんなに珍しいものなのでしょうか?」

「いえ、そういうわけではありません。

 あなたのような病気で苦しむ方は存外いるものです

 しかも、その症状は一様ではなく多岐にわたっています

 そのためにかえってその病気を特定することは難しいのです」

私は、医者の顔をじっと見た

どの口でそのようなことが言えるのだろう?

青年の病気の原因は私だ

高校時代の健康診断の際に私はこの青年に取憑いた

そのせいで青年は苦しんでいる

少なくとも現代の医療では原因の特定などできな筈だ

「…すいませんでした

 少し、最近焦っているのです。自分のこの病気の得体の知れなさに

 そして、いつ治ることができるのか?という不安に」

「いえ、こちらこそ。力不足で申し訳ありません」

「それで、次の診察はいつになるのでしょうか?」

「ええ、そうですね。次はまた来週にしましょう。

 ただし、病状にまた変化があったらすぐに来てください」

「わかりました…では」

青年は立ち上がり、診察室を出て行った。

私も、それに続き病室を出ようとした…

「オイ…」

その瞬間、私の手を何者かかが掴んだ

いや、むしろこの場でそんな事ができるのは一人しか思いつかない

私は半ば確信しながらその手をつかんでいる者を確認した

やはり、それは医者だった

医者はぐいっと私を引き寄せ顔を近づける

そしてこういった

「早くしてくれなきゃ困るじゃないか

 本当は高校卒業までに済ましてくれと頼まれてるんだぞ

 とにかく何の証拠も残さず済まさないと

 保護者から保険金の分け前はもらえないんだ、解ってるよな?

 解ってるなら、次の診察までに必ず済ませろ、いいな?」

病院は、もっとも人の死が近い場所だ

昔はこの病院でも色々なことが起きたと聞いている

それは私がこの病院で一患者として死ぬもっと前の話だ

だか、いつの頃からかそこで働く者はそれらに対する対抗手段を講じ

ついには、彼らはそれらを支配し、利用する方法を編み出した

そして、それらは私利私欲のために利用される

中にはこういう医者もいる

そう、ここは『幽霊病院』

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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