中編5
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動物園(親心)

大好きな動物園シリーズ。私の一番好きな作品は動物園(自己)です。

みなさんはどの作品が好きですか?

そんな大好きな世界観を一度でいいから投稿したい。

そう思っているところ、原作者の方の動物園を自由に使ってくださいという太っ腹な一言で気が付けば話を作っていました。

そんなただのファンの厚かましい投稿ですが、楽しんでいただければ幸いです。

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「すまん。」

「いいんだ。父さんは悪くないから泣かないで。」

あれ以来ここに来てからずっと繰り返してきた。

そしてこれからもずっと…。

もう、どれくらいの時間がたったのかもわからない。ただ今も変わらず同じ事を繰り返している。

俺はここに来る前はサラリーマンとして必死に働いてきた。

妻は息子が15歳の時に病気でこの世を去り、帰りが遅い俺とはほとんど顔を会わせることもなく息子は毎日寂しい思いをしながら過ごしたんだろう。

妻が死んでからは毎朝お金を机の上に置いて家を出ている為、仕事が終わり家に帰るとまず机の上を見てお金がないことを確認し、今日もちゃんとご飯を食べたんだと安心する。

話をしようにもいつしか息子の部屋には中から鍵が付けられて閉ざされており、二人が顔をあわせることはなくなった。

学校にも行かなくなり、ほとんどの時間を家で過ごしているようだ。

鍵が付けられたと気付いてからしばらくした頃、俺が休みの日に外出せず家にいると、一日中部屋から出てこなかった為、それ以降の休みの日には昼になると息子の部屋の前で

「出かけてくる。夕方には戻るから。」

そう言って机にお金を置き、家から出る事にしていた。

俺は息子と向き合っていくのが怖かったのだろう。

何かと理由をつけて逃げ続けていた。

お互いの心の壁というべきか、その鍵がかかった扉がいっそう二人の距離を分けたまま時間だけが過ぎていった。

妻が死んでから十年目の命日に墓参りから帰ると机の上にはお金が残ったままだった。

何かあったのかと思い、ドアごしに息子に話し掛けてみるが返事はない。

机の上にお金が残っていたことなんて一度もなかっただけにまさかと思いドアをけやぶって中に入った。

そこには血で染まった一枚の手紙と赤い床の上で横たわる息子がいた。

手紙には『父さんごめん。先に母さんのとこに行く。』とだけ書かれてあった。

生きていく目的も、気力も失ってしまった俺は息子を追って二人の所に行くことにした。

この世に未練なんてものは一つもなかった。

…。

気がつくと薄暗く、檻が続く生臭いところに俺はいた。

「では本当にあなたがやるんですね?」

園長と名乗るその男に私は「はい。」とだけ返した。

ここが地獄である事と自殺をした為にここに来て、これからどうしていくのか一通りの説明を受けた。

自殺の罪は重いようだ。ここに来た以上はもう二度と妻には会えない。

妻はこことは違う別のところ。

天国にいるということも聞いた。

少し安心した。優しい妻で、笑顔が可愛くて、いつも一生懸命だった。

そんな妻がこっち側のわけはない。

「では私についてきてください。あなたの息子さんは先ほど話したようにこの先にいます。」

息子は部屋にこもりきり、人との関係を避けて人生を送ってきた事により、自分の人生を疎かにしてきた罪に対する罰を受けるようだ。

そんな状況で日々を過ごす息子の苦しみを理解しようとせず逃げ続け、寂しい思いをさせてきた俺にはその罪にふさわしい罰をお願いしたところ、園長から一つの提案があり、その罰を迷わず受けることにした。

「着きましたよ。では道具はここにありますので早速お願いします。」

そう言って園長は立ち去っていった。

檻の中に裸で体育座りをして息子は座っていた。

道具箱を開けて中を確認すると中には金槌と五寸釘がかなりたくさん入っている。

左手で釘を取り、右手で金槌を握り締める。

左手の指先にひんやりした感触が手に伝わってくる。

釘の先を息子の背中にあて、金槌を振り上げる。

そして、重力に任せて金槌を振り下ろし、息子の背中に打ち付ける。

園長から釘は半分くらいのとこまで打ち込むように言われている為、釘の真ん中位まで打ち込んだ。

「カン!カン!」

「バキッ!!」

息子は叫び、激痛に歪んだ顔で涙する。

鉄の道具入れに入っている五寸釘を全て背中一面に打ちつくすと檻の前にぶら下がっていたプレートのハリネズミという文字が頭に浮かんだ。

これが地獄か…。

打ち付ける場所が悪ければれば骨が折れるので、痛みが少しでも減ればと、できるだけ骨と骨の隙間に打ち込むようにした。

そうすれば力を入れず、打つところを見なくても釘が入っていくんだ。

背中に五寸釘を打ち続け、打つ釘がなくなれば今度は抜いていく。

叫び声からすると打ち付ける時よりも抜くときの痛みが大きいようだ。

そんな息子の叫び声を聞いて気がおかしくなってしまいそうな俺は自分の耳の中に釘を打ち込んだ。

これで息子の叫び声を聞かなくてすむ。

息子の激痛に歪んだ顔を見ない為に目にも三本づつ打ち込んだ。

だが、見えなくとも、聞かなくとも飛び散る血の感触と、痛みでのけ反りかえり、激痛に悶える動きで、息子の痛みが伝わってくる。

それでも俺はこの罰を選んでよかったと思っている。

今まで息子から逃げてきた俺はこれからはずっと息子と向き合っていくんだ。

目から出た赤い涙が顔をつたっていく。

「すまん。」

「いいんだ。父さんは悪くないから泣かないで。」

息子が他の誰かにこんな目にあわされるなんて考えたくもない。

そんなことになるくらいなら俺がやったほうがいい。

自分の手で…。

これでよかったんだ。

見回りに来た園長はそんな二人を見て次の日に一枚の看板を用意し、そっと『ハリネズミ』と書かれたプレートの横にぶら下げた。

園長はプレートを下げ終わると二人を見た後にもう一度書かれた文字を見てボソリと呟いた後、静かにその場を立ち去った。

「親心ってやつか…。」

そのプレートには『ウサギ』と書かれてあった。

怖い話投稿:ホラーテラー 動物園シリーズのファンさん  

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素晴らしい作品だと思います。