中編3
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HIV

高校2年生の時、クラスメイトにA子という子がいた。A子はいつも読書をしていて今にも消えてしまいそうなとっても地味な子。虐められてた訳じゃないけど、誰にも相手にされない空気みたいな存在だった。ある日、私が学校に着くとクラスのみんながなんだかザワザワした様子だったので友達に話を聞くと

「A子いんじゃん?あの地味な子。あの子さ…HIVに感染してるらしいよ…」

HIV…後天性免疫不全症候群をひきおこすウイルス、通称エイズ。それを聞いた私の口からおもわず声が出た。

「うわ…汚っ…」

A子が登校してきたのはそれからしてすぐだった。当然、みんなA子に近寄ろうとしないし(普段からそうだったが)、席が近くの子達は机を目一杯離し、それでも泣きそうな目をしていた。A子はそんな周りの様子を知ってか知らずか、別段変わりもせずいつも通り読書をしていた。放課後、好奇心を抑え切れなくなった男子達が帰ろうとするA子を呼び止めてこう言った

「A子…おまえさ、エイズにかかってんの…?」

A子の顔が確かに強張ったのを見た。みるみる青ざめていく。

「え…やめてよ…。そんな訳ないじゃん…ハハ…」

「あっ!ワタシ前にA子が中年のおっさんとホテル入っていくの見たよー」

私は、わざとクラス中に聞こえるように声を大きくしてそう言った。マジ…?A子って援交してたの…?うわぁ。見かけによらねーな。きたね~。クラスメイト達が騒ぎ始める。A子は完全に俯いてしまっていて、すすり泣いているようだ。そしてそれは事実の肯定を表していた。ざまぁみろ、A子。私は心の中でほくそ笑んだ。

A子の援交を初めて目撃したのは1ヶ月ほど前。最初はお父さんかな?と考えたが気になってつけてみるとそうでないことが分かった。そしてそれを私は友達に話した。

「んで、そのままホテル入ってってさ~。本当気持ち悪い…同じクラスで空気吸うのも嫌だよ。」

「ん~どうする?クラス中にばらして学校来れないようにする?」

「それも、いいんだけどさ。それより少し脚色した方が効果的じゃない?」

「脚色?」

「うん。例えばね…」

次の日からA子を学校に来なくなった。その間にも私達は、あの子はセフレが何人もいる。色んな性病にかかってる。風俗で働いてる。ありもしない噂をドンドン流していった。

「キモいから学校に来ないで」「何万稼いだの?」「お願い、移るから早く死んで」「まだ死なないの?」色んな人がA子にメールを送りつづけた。そして数週間後、「A子さんが亡くなりました…。」クラス担任が重い口調でそう言った。母親と一緒に自殺したらしい。何で母親も?そう思ったがA子が死んだことが嬉しくて、嬉しくて、あまり気にもしなかった。

「A子さんはーエイズが発病して死んじゃいましたー。みんなもくとーう!」

クラスメイトがふざけてそう言い、みんな笑っていた。

…その日の帰り道、私はレイプされた。突然、黒いフードを被った男に刃物で脅され路地裏に連れ込まれてのことだった。被害者は私だけでは無かったが、何週間後かにすぐ犯人が捕まり、私は犯人を聞いて妙に納得した気分になった。それはA子の兄だったからだ。

「母も、妹も、居なくなってしまって…母と妹を死に追いやった奴らが憎かった…。復讐してやろうと思った。」

A子の兄はそう言っていたそうだ。何、馬鹿なこと言ってんでしょーね。あんたの人生、もう終わりよ。そう考えていた時、警官が衝撃の事実を教えてくれた。なんとA子は本当にエイズだったのだ。正確には母親からの遺伝だったらしいのだが、

「それであの、言いにくいんですが…お兄さんとA子さんは肉体関係にあったそうです…。それで、その、念のために病院に行ったほうが…」

そうなんだ…でも、私には、関係ないよ…。私の顔から笑みがこぼれるのを警官が不思議そうに見ていた。

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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