短編2
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犬です。私は幼い頃箱に入れられ捨てられているところを今のご主人が拾ってくれました。その頃から6年が経ちました。

ご主人の家はご主人と奥さんと息子の3人家族でした。

当時、8歳だった息子さんも中学生になっていました。みんな私を大変可愛がってくれました。それはそれは幸せに暮らしていました。

ある日、学校から帰ってきた息子さんの背後に見知らぬ女がいました。私は本能で女に向かって吠えました。

しかし、女は私を睨むだけ。息子さんから離れようとしません。

息子さんは吠える私を叱り自分の部屋に行ってしまいました。次の日、息子さんは高熱を出しました。奥さんが病院に連れて行きましたが、息子さんの病状はよくなるどころか日に日に悪くなっていきました。ご主人と奥さんは心配で夜も眠れないようでした。

私が息子さんの部屋に行くと息子さんの顔をあの時の女がのぞき込んでいました。私は息子さんを苦しめている女が憎くて力の限り吠えました。女はやはり私を睨むだけでした。

私は飛びかかり女の腕に思い切り噛みつきました。女は苦しみ私を振り払おうと腕をブンブン振り回しました。私は飛ばされタンスにぶつかりました。多分、右前脚が折れました。

でも、私はあきらめません。再び女に飛びかかります。渾身の力で女の首に噛みつきます。女は苦しみながら私の背中を手で貫きました。私は今まで感じたことのない痛みを感じました。

ですが、私は最後の力を振り絞り女の首を深く抉ってやりました。

女は凄まじい悲鳴をあげ消え失せました。

力つきる間際、ご家族への思いが溢れました。

私はご家族に拾われて幸せでした。

ご家族に名前もつけてもらいました。

初めて名前を呼んでもらった時、うれしくて全速力で駆け寄りました。

ご家族には感謝してもしきれません。

最後にもしも、私の死を悲しみ泣いてくれるようなことがあれば犬冥利に尽きるというものです。

怖い話投稿:ホラーテラー 鯖さん  

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