短編2
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昼間の心霊現象

知り合いのお姉さんが昔勤めていた職場での話。

お姉さんはインテリアデザイナーで、家具屋さんに勤めていた。

そこは百年以上も続く老舗で、元は地主の一族経営。

倉庫が三つあった。

所々土地を売ったので店舗から道路を挟んだ離れた場所に倉庫があり、時々台車を手に店員が行く。

そこで一番嫌がられていたのが、第一倉庫。

二階建てで、剥き出しの昇降リフトがあり商品が並んでいる。

お姉さんが一人で取りに行くぐらいだから小物。

大体は一階で用事は済むし、仕事としては簡単な作業だがなんとなく第一倉庫に行くのはいつも嫌だったらしい。

鍵を開けてシャッターを押し上げると、家具が傷まないようにと普段から真っ暗にされた中に入る。

手動というか持ち上げるのでシャッターは一メートル少ししか(身長の関係で)開かず、そこから入る天然の明かりを頼りに品番を確認していた。

電気はあるがつけるまでもなく、大体は薄暗い中でやるらしい。

ぎぃ、と音が響いた。

確か上には昔倉庫の管理人がいた時に使っていた管理室があった。

そのドアがしまってなくて音をたててるのかなと、気にしないでいると不気味な感じがした。

上から視線を感じる。

見てはいけないと思い、商品を台車に積んですぐに倉庫を出た。

シャッターを下ろし、鍵をかけているとカリカリと小さく音が聞こえ、お姉さんは手を止めた。

開けっ放しで商品を探してたから、猫でも入ってしまったのだろうか。

探るために耳をシャッターにつけた。

「開けて」

と耳に直接声を吹き込まれるかのような感じがして、どんっと中から体当たりされるような音がした。

悲鳴をあげる事も忘れて離れたが、異様だった。

今は昼間で、すぐそこには通行人もいて車も行き交ってて。

心霊現象が起こるような環境じゃなくて、日常そのままがある。

勿論、お姉さんは逃げ帰り古株の配送のおじさんに泣きついた。

「あー、第一ね。昔は〇〇家の蔵でさぁ」

流行り病になった人を隔離するのに使ったんだよ、と聞かされた。

まあ、いろいろとあるんだけど結局は身内だから平気だよと。

一族の人はそうかも知れないけど従業員は違うから。普通に怖いからとお姉さんは思ったらしい。

ちなみに会長がなくなり、相続税の関係で第一倉庫は売られて今は無関係な人が経営するラーメン屋になっている。

地域では流行りのラーメン屋だが、心霊現象はないのか少し気になった。

怖い話投稿:ホラーテラー 八須さん  

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