中編3
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ピンクのトレーナー

小学校2年生ある放課後、桜が満開に咲く滑り台でクラスメートと鬼ごっこをしていた。

追っかけたり逃げたりと大興奮で遊んでいるうちに、いつしか体が暑くなり、薄手のピンクのトレーナーを脱いで滑り台の手摺りにかけておいた。

友人達との遊びは展開し続け滑り台から違う遊具へと移動していった。

すっかりと日が暮れ、十分に遊ぶことができたのでその日は解散となった。

家に着き、ランドセルを置いて、手を洗いにいこうとすると母に呼び止められた。

「今日、おばあちゃんからもらったばかりのトレーナー着てたじゃない。どうしたの?」

その言葉にはっとし、自分の服を見るとブラウスのままだった。

学校に置いてきてしまったのだ・・!と幼い私は落ち込んだ。

その晩、夢を見た

うららかな春の陽射しの元、桜の花が満開に咲いている。

ちょうどその下の滑り台に私は立っていた。

滑り台を滑ろうとしゃがむと今日忘れてきてしまったトレーナーが、ちょうど真ん中辺りにちょこんとあるのを見つけた。

私はトレーナーがあったことにとても安心し喜び、スーパーマンのような格好で滑りだした。

トレーナーまであと少し、あと少し。

と、手を伸ばし、トレーナーを掴もうとしたその直後、

ドンッ

と、トレーナーの中から人形の手が物凄い勢いで出てきた。

そうしてその細く堅い手は私の足を掴んだ。

私の手が先にトレーナーに触れようとしていたはずだったのだがいつの間にか私の片足を人形の手がしっかりと掴んでいた。

私は泣きながらその手から放たれ、滑り台を降りようともがくが、ぐいぐいとトレーナーに引き寄せられる・・

うっうっ。。という自分の泣き声と共に目が覚めた。

私は、布団に突っ伏しており手は夢の様にバンザイをしている状態だった。さらになかなかの寝相の悪さで、膝から下まで大きく布団からはみでて畳の上に出ており、隣で寝ていた母親を見上げる状態になっていた。

まだ泣き止めない私は、自分の足を引き寄せ、パジャマをまくりあげると、ちょうど人形の手に掴まれていた辺りが、あかーく太い、ミミズばれになっていた。

その日、学校へ行きトレーナーを探したが思いも虚しく見つけることはできなかった。

それから1年後の春。

クラスも変わりそんなことをすっかり忘れていたある全校朝礼の日、私は前に並ぶ友人とコソコソと話しふざけあっていた。朝礼が終わり解散モードになる頃、恒例の連絡事項として落とし物がいくつかあげられていた。

すると、その中にあの時のトレーナーが出てきた。

はじめはまったく分からずに聞き流していたがよく見るとあの時なくしてしまったトレーナーだと気がついた。

名乗りをあげ確認しにいくとあの当時とほぼ同じ状態のままの新品のトレーナーだった

一方で私の体も大きくなり着るのは難しくなってしまっていたのだが・・

その後着ることはないままきれいなままそのトレーナーはいつしか我が家から再びなくなっていた。

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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