2年前、私は今のアパートに住み始めた。
このアパートでは、少し変なことが起こる。
夜の12時ちょうどに、誰かが私の部屋をノックするのだ。
最初、インターホンがあるのに変だと思った。
空耳かとも思ったが、念のためにドアを開けて外を確認したが、誰もいなかった。
ノックは毎晩続いた。
誰が叩いてるのか気になって、レンズを覗いて待ち構えてみた。
12時、音だけ聞こえたが、レンズの向こうには誰もいない。
恐くなって、その日は慌てて布団に潜った。
でも、次第に慣れるようになった。
寝ていたら気付かないぐらいのノック音なので、気にしなければ生活に支障はなかった。
ノック音は私の生活の一部になった。
ある日、友人を部屋に呼んだ。
二人でだらだら酒を飲んでいると、12時にノック音が鳴った。
友達ははっとして、私を見た。
「なんだ、いまの」
私は、12時のノック音の話をしてやった。
「ノック音?」
「うん。最初はびびったけど、今は慣れて愛着までわいてきたよ」
「何言ってんだ」
友人は赤ら顔で私を睨んだ。
「俺にはノック音なんて聞こえなかった。…おかしくなったカセットテープみてーな声で『オジャマシマス』って、聞こえた。」
12時のノックは、今も続いている。
怖い話投稿:ホラーテラー えすさん
作者怖話