短編2
  • 表示切替
  • 使い方

恋い初め

恋い初め

…「おもいぞめ」と読み、年が明けて最初にした恋のことをいう。

旧年から持ち越した恋には当てはまらない。

もちろん「初恋」とは違う。

****************

雪女(ゆきおんな・ゆきめ)の物語を知っている人は多いだろう。

雪深い山で遭難した若者が美しい山の怪(やまのけ)、雪女の情を受ける。

「幾経る年(いくふるとせ)のこれがまことにおもいぞめ」(何年ぶりかに人を好きになりました、というような意味)

などと言って雪女は男を誘惑したという。

雪女と契り無事に下山した男は、しばらくして訪ねてきた美女と恋に落ち夫婦(みょうと)になる。

子宝にも恵まれ幸せな日々を送っていたが

「今宵の儀、努々(ゆめゆめ)口外無用」

という雪女との約束を破り、女房に昔語りをしてしまう。

…という話。

この物語を扱った書物の多くは、怒った雪女が夫を殺そうとするが子供たちのことを思うとそれもできず、泣きながら山に帰ってゆくというシーンで終わる。

しかし実際には夫は殺され、まだ幼い子供たちまでも残らず命を奪われるという惨い結末だった。

しかも夫は約束を破ってなどいなかった。雪女の浮気が真の原因だった。

普通の人間である夫は、当然のことながら年々老いてゆく。

女房は妖怪であるので老いない。いつまでも若く美しい。

雪女は若い男を漁り歩き、不貞を重ねた。

それが夫の知るところとなり、惨劇を呼んだ…

これが真相なのだが、民話として語り継ぐには先に書いたような結末が良とされたのだろう。

雪女は不老不死である。

今でも若く美しい男を漁って人間(じんかん)を徘徊している。

雪の降る夜に知り合った女性、ことに「おもいぞめ」などという古い言葉を使う女性には用心した方がいい。

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

Concrete 59189e6fb4d79119a63e92183ffb92aeb8f46031afd97d5db060811ce15c35e6
閲覧数コメント怖い
21800
  • コメント
  • 作者の作品
  • タグ