中編4
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3両目1番扉

これは高校3年生の時俺がに体験した話。

その日は塾の模試で朝から夜までみっちり試験を受けてくたくたで帰っていた。センター試験を1ヶ月前に控え体力的にも精神的にも限界だった。

NMB駅に着いた時、待っている電車は人が多く座れるスペースがなかったので次の電車まで見送ることにした。

数十分たって次の電車が来たんだが、ドアが開くやいなや一目散にイスの端っこに座って寝る体勢に入った。

模試の疲れもあってか壁に顔をつけてもたれた途端、もう夢の中。

後から電車に入った人から見たら爆睡して寝過ごしてる人に見えたんじゃないかな?

経験したことある人も多いと思うけど疲れきった体で寝た場合、どこか高い所から落ちる感覚に陥って体がびくっと痙攣して起きることが俺にはよくあった。 そん時も多分それだったんだ。家の階段から落ちる夢を見て俺は痙攣して壁に豪快に膝と頭を打ち付けて目を覚ました。

自分の中ではだいぶ寝た気がしたんだが電車はまだ発車していなかった。

その頃になると大体の椅子に人が埋まり立っている人もちらほらいたような気がする。

寝ぼけ眼で車両をグルッと見渡した後、すぐにまた夢の中に戻ろうとしたんだが目の前に座っている小学生くらいの少年が奇妙すぎてちょっと見つめていた。

何が奇妙ってまずその服装。その日は12月の半ばでかなり寒くて俺も試験前に風をひかないようにとコートにマフラー、マスクをして完全防備をしていたんだがその少年は坊っちゃん刈りで青と白のボーダーのポロシャツにカーキ色の短パン。靴下はキャラクターがプリントされた白い靴下で運動靴をはいていた。

そして俺の上を一点にじーと見つめ三角座りをしていた。

たまたま俺の前は車椅子の方専用のスペースで椅子がなかったのでその少年は床にすわっていた。

その時は眠気が勝ってしまって、少年のことなんかどうでもよくてまた眠りについた。どうせ冬にいきって半袖短パンを着て元気アピールしてる子供だとおもったからだ。

今度は結構ぐっすり寝たようで次に起きた時はN駅に着いた所だった。

このN駅ってのは結構大きな駅でいつもここで人がいっぱい乗車してくるんだがこの日も例外ではなかった。ドアが開くと2列に並んでいた客がぞろぞろと入ってきた。

疲れた顔したサラリーマンや塾帰りの同士達、そして無数におばさん。

運悪くうるさい大阪のおばさん集団が乗ってきたせいで俺の睡眠は妨害され寝るのを諦めた。

目の前でごったがえすおばさんの隅に俺は見つけてしまった。

男の子を。

もうその時は全身に寒気がした。

なんていうか恐怖で寒気がしたんじゃなくて驚きすぎてってやつ。

しかも寝る前に見た格好とまったく同じ、三角座りして一点をじっと見つめてるんだ。

絶対この子頭おかしいよってかどこみてんだよっておもいつつ、上を見上げるとなんだか気まずい感じがして見れなかった。

そうこうしてるうちに次のF駅で人が乗ってきたもんだからおばさん達が奥につめだした。

おいおい!!その子気付けろよ!!

って言いたい所だったがそんな勇気もなくただハラハラしながらその少年とおばさんを見ていた。

その頃になるともう俺の眠気なんかどこかに飛んでしまってこの奇妙な少年を観察することに熱中していた。

ただ、俺の視界に映るのはおばさんの足、足、足。

かろうじて少年の綺麗な三角座りが足の隙間から見えるくらいだった。

これ、絶対おばさんの足と少年の顔何回か当たってるよなぁ…

おばさんも悪いけどお前もそこにずっと座ってないで移動しろよな…

とか思ってるうちに最寄り駅のI駅についたもんだから俺はテスト用紙がパンパンにつまったカバンをもって立ったんだよ。

それで電車降りる時に少年がどんな状況か見てやろうと思ってチラッと見たんだ。

もうその光景が信じられなくて俺は数秒、ドアの前でぼーとしていた。

横から見てわかったんだが壁際にもおばさんたちがいたんだよ。

要するに少年とおばさんが被ってるってわけ。

でも三角座りだけは見えてる。

え?どうゆうこと?

頭の中がパニックになった。

その時、ようやく気づいたね。そいつが人間じゃないってことが。

扉が閉まる音がしたんであわてて外に飛び出してただ震えていた。

それで電車は次のT駅に向かう為に発車するんだが、俺の方が進行方向にいるもんだから横をそいつを乗せた一角が通過するんだよ。

人間ってのは不思議なもんで怖い怖いって思っていても好奇心で見てしまう。

俺もそうだった。

横目でチラッと中を見てみた。

目があったよ。

下半身は俺とは逆方向に三角座りしてるくせに顔は窓越しにこっちを見ていた。大人でも座りながら窓の外を見るとだいぶ首を伸ばさない限り見えない。

だがそいつの顔は俺からすべて見える状態だった。

顔はまったく変わらずあの一点を見つめる感じ。

ただ、その一点が今度は俺に向いていた。

電車が動きだして視界から消えた瞬間多分俺は叫びながらダッシュしたと思う。

そこからのことはよく覚えてないというか、なんというか気付いたら駅を出て自宅への道のりを全力で帰っていた。

あれから3年がたったがあの日以来少年を見ていない。

ただ、あの日から俺もあの車両には乗っていない。

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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