短編2
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図書室の女子生徒

 美術部の顧問の先生による、私の母校の幽霊話だ。

 世間一般的には「オタクが漫画の模写ばかりしている部活」もしくは「不登校生徒や幽霊部員ばかりの部活」と思われがちな美術部であるが、私の母校は違った。

 高総文祭や各種甲子園直前となれば、朝は早くから登校し粘土をこね、昼休み返上で構想を練り、放課後は遅くまで絵筆をとる。下手な運動部よりハードな部活だった。

 下校時刻が遅くなると、先生が鍵を閉めねばならない。先生はよく遅くまで残ってくださった。

「あ、そういえばねぇ、昔、美術室に幽霊が出たんだよ。女の子の」

 ある日、話し合いが煮詰まった頃、先生はぽつりと言った。先生は司書室に机を置いていたから、授業が無い時は大抵図書室にいたし、放課後は図書室に鍵をかけて帰る役目だった。

 私が入学するより前の話らしい。先生が帰ろうとすると、図書室で女子生徒の人影を見つけた。「早く帰りなさい」と言っても返事はない。姿を探しても見えない。

 はて見間違いか、と先生は美術室に顔を出し、美術部員にも帰宅するよう声をかけた。すると、美術部員達の様子がおかしい。

「先生、変な女の子がいた」

 もしや、と先生は思った。美術部員達が言うには、その女子生徒は美術室をふらふらと行ったり来たりして、ふらりといなくなったらしい。

 あまりに堂々としているから、誰も何も言わなかった。が、誰もその女の子に見覚えがない。

 先生は「もしかして、こんな女の子だったか?」と聞いた。先生と美術部員達が言う女の子の特徴が一致した。

「ブレザーの下にベージュのカーディガンを着た女の子」と先生は言う。年配の男性教諭の創作だとしたら、あまりに生々しい。

「でも、生きてる女子生徒だったかもしれないですよ」

 私は怖がりであるから、幽霊が身近に存在するなど考えたくない。怪談は好きだが、幽霊はお話の中の存在でいい。

「いいや、幽霊だよ。だって、今でもたまに図書室にいるから。いつも、同じ席に座っている。みんなが怖がるから、どこの席かは教えない」

 先生は言った。

 私は大急ぎで帰る支度をした。

 幸か不幸か私は三年間その女子生徒と遭遇することは無かった。

怖い話投稿:ホラーテラー 元美術部員さん  

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