中編4
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閉じ込められた男

新しい家はベランダが広く、中も西洋の雰囲気を醸し出しているとてもよい家でした。

ただ1つ、僕の部屋にある奇妙な扉を除いては…ね。

僕の部屋のクローゼットのドアを開けて、更にその奥に小さいドアがあるんです。

たとえば電子レンジとか、旅館にある金庫あたりの小さいドアです。

とっての部分はザラザラに錆びていて、握っただけで手に錆がこびりつく、

気味が悪くて僕は開ける気にもなりませんでした。

父が気になるとはりきって開けようともしましたが、長い間誰も住んで居なかった家だったので

扉が歪んでしまっていたり、錆のせいで腐食していたりして、どうしても開きませんでした。

それでも「業者を呼んであけてもらう。」と父は張り切っていました。

僕はそんな気味の悪い扉、開けなくてもいい。と思う反面、

中に何が入っているのか分からない扉がある部屋で過ごさなければいけない。

僕の心は不安でいっぱいでした。

引っ越してきて二日がたったでしょうか。

ついに父が「明日、業者が来る。もしかしたら宝石でも入っているかもな。」と

ニヤニヤした顔で僕に注げてきました。

明日になれば…この不安も消える…。

そう考えて、僕はベットにもぐりました。

気味が悪いのでベットは部屋の隅に移動して、クローゼットから一番はなれた位置にしていました。

もしも寝ているときに物音でも聞こえたら・・・いやですからね。

眠りについてどれぐらいしたでしょうか。

ふと…目が醒めたんです。夜中に。

時計を見ると午前三時半。物音1つしない薄暗い電球の下、一人きり。

さすがに僕は恐怖心には勝てず、ぶら下った電気の線を引きます。

カチカチ。

あっさりと電気はついて、明るい部屋が映し出されました。

「あ……!」

僕は背筋が凍りつくかと思いました。

クローゼットが開いているんです。閉めたはずなのに。

電灯に照らされたクローゼットの中に、あの錆びたドアがぼんやりと浮かんでいます。

恐くて恐くて、僕はあわててクローゼットを閉めようと扉にとびつきました。

その時です。

カリカリ・・・カリカリ・・・カリカリカリカリ・・・

扉の内側からドアを引っかく音が聞こえてきたんです。

爪で大根おろしのギザギザした所を引っかくような、そんな痛た痛たしい音でした。

何かが、ドアの向こうにいる・・。

引っかく音はだんだん激しくなっていき、ベリっと何かがはがれる音が…聞こえました。

「お…お父さん…!お母さん!!」

あまりの恐怖にクローゼットの扉から手を離せないでいる僕は、その場で叫びます。

けど、どれだけ待っても、どれだけ叫んでも…誰もこないんです。

まるで扉に声が吸い込まれているみたいに。

ギャリッ・・・ギャリッ・・・ガチャ・・・

扉からの音が変わりました。

ノブを…ノブを回してるんだ…!

大丈夫…大丈夫…あのドアは開くはずがないんだ…開くはずが…

ガチャガチャ…ガチャガチャ…

ノブが何度も回って、僕はそれを見守ることしか出来ませんでした。

やがて、音は更に不気味に大きさを増していきます。

まるでドアに体当たりしているような。

ギシギシと扉が軋むのが分かりました。

ギッギッ。

ギッギッ。

僕は目を疑いました。

あれだけ父が力を込めても開かなかった扉が、少しずつ錆を落としながら開こうとしているのです。

「ひっ…!」

僕はなさけない声を上げてクローゼットのドアを閉めました。

本当なら中の扉を閉めようとするべきでしたが、それは恐くて出来ません。

閉めた扉の向こうから、ギッギッギッと音がしばらく続き、バァン!!扉が…開いた音でした。

何かが、あの小さな扉から出てくる。ゴキゴキと間接が鳴る音が聞こえました。

「あぁあぁあああああぁああぁぁ……」

この世のモノとは思えない声がクローゼットのドアをびりびりと震わせます。

寒気で体中の血が凍りつきます。

「お父さん!お父さん!!」

僕は泣きながら必死で扉をつかんで、それが出てこないように叫びます。

ギシ・・ギシ・・・

ついに中の【なにか】がクローゼットの扉を掴みました。

同時にものすごい力で扉を開けようと押してくるのです。ギッギッギッギッ!

「ぎゃあぁあッ!」

少し開いた扉の上の方から真っ青になった血の気のない腕が飛び出し、

ばたばたと水を得た魚のように暴れるそれに僕は絶叫しました。

更に足元から顔のようなものが這い出してきたとき

上から手。下から頭。こんな人間・・・いるはずない。。

そう思いながら僕は気を失いました。

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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