中編3
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恐怖の石

ありがた迷惑な人、皆さんのまわりにもいないだろうか?

例えば「会社でボールペンのインクがなくなった⇒翌日ボールペンを10本くらい買ってくる」

「肩が少し痛くて『パソコンが打てない』とぼやく⇒頼んでもいないのに、湿布薬を何枚も買ってくる(しかも会社の経費で…)」

…といった具合だ。

この話は、上で記したような「ありがた迷惑な人」ではなく、「宝石」のお話。

ある宝石は持っていたら願いが叶う、と評判だった。

しかし、その反面「恐怖の石」と恐れられていた。

その宝石の効果は俗に言う「幸福ストーン」の類とは一味違い、願いをこめれば100パーセント絶対にその願いは叶う、というおすみつきだ。

…ただ、その叶え方に問題があるために「恐怖の石」と呼ばれているのだった。…

…ある看護師は脳外科の手術室勤務だった。

当時の脳外科の手術は、開頭手術(電動のこぎりで頭を切って手術を行う)という方法が主流だった。

そのため、脳外科の手術は他の部位と違い、とても時間がかかる。

彼女は毎日毎日遅くまで仕事三昧の日々を送り、「いい加減、こんな仕事辞めてしまいたい」と思うようになっていた。

実際に上司に辞職願を出したこともあるが、彼女はベテラン看護師で代わりもいなかったため、それは認められなかった。

そんなある日、彼女は久しぶりの連休で旅行に行き、怪しげな露店で「ある宝石」を手に入れた。

露店の主は「この宝石を持って願いをこめれば必ずその願いは叶いますよ。ただし…願いは正確な内容にしてくださいね。」と宝石の説明をした。

もちろん、それが「恐怖の石」であることまでは知らせなかった…。

家に帰った彼女は宝石を見ながら、「ほんとかなぁ」と半信半疑だった。

そして、いつもと変わらぬ日々を送っていた。

辛い毎日。彼女の精神的な疲労も蓄積する一方だった。

ある日、我慢できなくなった彼女は宝石に願いをこめた。

馬鹿馬鹿しいとは思いつつも、主の「必ず」という言葉がつよく記憶に残っていたためだろう。

「仕事を辞めたい」と願ってみた。

「叶わなくて当然なんだけど…」

そういう気持ちがあったせいか、その願いは「仕事を辞める」という、とても漠然とした内容だった。

翌日、いつもどおり彼女は手術室に入った。

そして、またいつもどおり、医師が使う開頭用の電気のこぎりの準備をしていた。

すると、スイッチも入れていないのに、急に電気のこぎりが動き出した。

ベテランの彼女でもそれは初めての事態で、つい、(それとも勝手に?)手でのこぎりを止めようとしてしまった。

結果、彼女は5本の指を失った。

そのため、彼女は仕事をすることが不可能となった。

つまり、「仕事を辞めたい」という願いは見事に叶ったわけだ。

しかし、それによって支払われた代償はあまりにも大きい。

当然、彼女は入院した。

その看病には彼女の母親がついていた。

母親は高齢で彼女を出産したため、今はかなりの年齢になっていた。

毎日毎日彼女の病院まで足を運び、疲労がたまっているのは明らかだった。

そんな母親を見て、彼女は「お母さんにもっと楽をさせてあげたい」と思うようになった。

そして、その思いを宝石を持って願いにこめた。

翌日、彼女は自殺した。

母親は彼女の看病から解放された。

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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