続・大雨の深夜、タクシーで

中編3
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続・大雨の深夜、タクシーで

いやぁ…まいった!

やっと帰り着いた… もうヘトヘトだ。あぁ… こんなに濡れちゃったし、全身ドロドロだよ。うわぁ!靴の中ってこんなに水が入り込むもんなんだね… しかも、寒い… 身も心も真冬のように寒い…

怪異蒐集なんてやるもんじゃないって思った。とんでもない罰当たりだ。なんかね… やっぱり幽霊・心霊って存在する…うん、もう間違いないよ。

心霊写真撮ってやろうと思って、今日有名な霊園に出向いた。しかもこんな深夜に… 

俺には霊を感じる力なんてないって思い込んでたから、一人きりでも怖くないし、そんなのに付き合ってくれる物好きなヤツ、まずいないよね。

う、うん…? 写真? そりゃあ撮ったさ!最初から最後タクシー乗るときまで、くまなく撮った。さまよう霊魂をこのカメラに絶対収めてやろうって… ちょっと待って… 今見せてやるから…

あぁ… 写ってねえよぉ… あれだけ撮ったのに、結局ゼロかよぉ… 踏んだり蹴ったりだ!今日一日何だったの…!? 骨折り損のなんちゃらか…

いや… でも見ちゃったからなぁ… もう十分だよ。もういいわ…

そう… あの運転手。怖いもの見たさに飢える俺の野望、かなえてくれやがった…

運転手、○○通りの事故見てから変なこと言いだしたんだ… 同業者は痛いだろう、ありゃきっと死んじゃった… しまいには自分の事故体験まで… 誰も尋ねてないのにさ。

トラックに突っ込んで、車も自分もグチャグチャに潰れたのに、痛くもかゆくもないっていうからさぁ… オッカシなおじさんだなぁ? 素直にそう思ったよ。だから、 

『運転手さん… それで、ど、どうなったんですか?』 って聞いたのさ。そしたらさぁ…

「実は私もわからないのです… 気がつけば、この通りです。」

って、笑いながら俺に言ったんだよ。

俺、はぁ…? って、それしか返す言葉なかったよ。だって、そうだよね!?

なんで、その状態で生きてんの… ? 普通思うでしょ?

それで、ついにその時がやってきたわけだよ。人生初…

「お客さん… 私ね、それからですよ。こんなことできるようになったの。」

って、顔を俺の目の前に持ってきた。ニュって首が伸びた…

俺、一瞬息できなくなって、瞳孔開いて、自分で自分の心臓の音聞こえたよ。体なんてカチカチになって、失禁しちゃったよ。運転手、

「あっ… ご、ごめんなさい!大変失礼しました。」

って、首を元に戻したんだよ… 俺そこからよく憶えてないけど、気がつけばタクシーから飛び降りて、びしょ濡れになってバシャバシャ走ってた… 狂犬に追われる子供みたいなもんだ。

おもむろに後ろ向いた時だよ。俺もうダメだ、殺される! って、本気で思った… 「お客さーん!お客さーん…!」って運転手、タクシーの天井から首のばして俺を呼んでたんだ。俺、思わずつんのめって、水たまりにヘッドスライディングしちゃったよ。

もう全身ずぶ濡れだし、真夏なのに寒気が止まらず、転んだままの体勢でただブルブル震えるだけだったよ… ひとっ子一人といない時間にだよ… 

それでも運転手、そんな俺に追い打ちかけやがった。俺が起き上がろうとした時だよ…

「お客さん。だいじょうぶですかぁ… ずぶぬれですよぉ… 」

俺、恐怖のあまりさすがにその声のする方向見れなかったよ… それから気絶した。

気がつけば、街路樹にもたれてた。雨は小降りになってた…

もう、心霊写真なんてどうだっていいよ。もうたくさんだ。いまからデータ全部消しちゃうよ…

ほら、やっぱそうだ!引き上げる直前、墓地前で撮ったのにタクシー写ってないよぉ! ちゃんとタクシーも撮ったはずだったのに…

俺がバカだったよ。もう二度と心霊スポットなんて行かない。怪異蒐集なんて絶対しない。あぁ、疲れた… もう寝るよ。

人間って暇な時、ろくなこと考えないもんだなぁ… あぁ、もう四時だよ。今日は休みでよかった… 

ところで、俺さっきまで誰と話してたんだろ…あぁ、寒い… 眠れそうもない。

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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