中編3
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ノックの勘違い

大学進学に伴って上京し、僕はアパートを借りた。

間取りも普通で、玄関を入れば右手にユニットバス、突き当たりにフローリングのリビング。

家賃も都内では一般的、駅から遠いことがネックだが、初めての一人暮らしとしてはそれなりに気に入った。

そんな折に体験した今でも気味の悪い話

入学式を終えると色んなオリエンテーションが始まり、サークル勧誘のビラがあちこちで乱舞。

新しく始まる生活に想いを馳せながら、慌ただしい4月が過ぎ去った。

5月に入るとそれなりに慣れてきて、サークル活動に力を入れるようになり、グッタリとして帰ることも多くなった。

いつもなら遅くに帰ってくると、シャワーを浴びて即ベッド、落ちるように眠っていたのだが、その日に限って何故だか眠りに落ちない。

ベッドに入って1時間は経ったか、12時頃にやっとウトウトし始めて、まどろみの中をさ迷っていると、ある異変が起こった。

『コンコンコン コンコンコン』

誰かがドアをノックするのだ。

一瞬、我に返って思考を巡らせた。オートロックのエントランス、インターホンを使わずにノック、だとすると同じアパートの住人?

同じアパートに訪ねて来るような知人は誰も住んでおらず、ましてや苦情を言われる様なことに心当たりはない。

いまだ一定のリズムを持ち、催促するかのようなノックは静かに続く。

気味が悪くなって、布団を頭まで被り、ノックを無視して眠ってしまった。

朝方ふと目を覚まし、回らない頭で時計を見ようとした時、待っていたかのようにまた、あのノックが始まったのである。

先程と全く同じ様子で打たれるノックに、強い恐怖を感じた僕は、耳を塞いで夢の中へ逃げようと必死だった。

その間も扉を叩くノックの音は一定のリズムを保ったまま部屋の中に響き、震える僕に更なる恐怖感を助長させた。

気付くと、いつの間にか眠っていたのか、恐ろしさに気を失ってしまったのか、高く昇った日の光が眩しく目に入ってきた。

頭がぼーっとした中、昨夜の事を思い出していたのだが、いたずらにしてはタチが悪すぎるし、不審者なら警察にも届けなければならない。

何かの手がかりが残されていないかと思って玄関のドアへ向かい、ドアポストなどを一通り見てみたのだが、手がかりは一切ない。

その日はそのまま学校へ行き、昨夜の事を一日中考えていたのだが、夢をみていたなんてものでもなく、はっきりとした現実として記憶にあったのに、何となく違和感があった。

夜遅くに帰宅する途中も、その違和感が頭を過ぎり、部屋の前まで悩んでいた。

余計に気味が悪くなって、部屋に入るため扉を開けた。

しかし、鉄の扉が重く閉じた時、全身に鳥肌が立ち、同時に凄まじい恐怖が蘇ってきた。

玄関の扉をノックすれば、どんなに静かにノックをしても『ゴンゴン』と金属の音がするはずなのだ。

昨夜のノック音は金属なんかよりも軽い音だった…

つまりあの扉以外は考えられない…

頭の先まで鳥肌が巡り、冷たい汗が背中を流れたその瞬間

玄関で震える僕から程近い距離あるユニットバスの扉から

『コンコンコン…』

とノックの音が響き、すでに恐怖の絶頂だった僕はそれ以上を受け入れられずに気を失ってしまった。

当然ながらその部屋は引き払いました。

少し残念そうな大家さんに、あの部屋のことを聞いてみても、不思議そうな顔をするだけで、特に何があったという訳ではないようでした。

今はあの事件のトラウマからなのか、バス・トイレ別の部屋でないと友人の部屋にも泊まれません。

怖い話投稿:ホラーテラー タケミカヅチさん  

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