短編2
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追いかけてくる

空はどんよりと曇っていた。

その日は妻の実家から荷物が送られてくるという事で、家路を急いでいた。

電車を降りバス停に向かったが、あいにくバスは出発したばかりだった。田舎なので次のバスまで一時間近くも間がある。急いでいたのでタクシーを拾い、家のある町名を告げた。

陽気な運転手はあれこれと話しかけてくるが、適当に聞き流していた。

「あれ。とうとう降って来ましたね。」

見るとフロントガラスにポツポツと水滴が落ちてくる。ワイパーの動きをボーっと眺めていた。

突然、

「あっ」

という叫びと急ブレーキ。それに続き軽い衝撃があった。

「すみません。ちょっと確認して来ます。」そう言って運転手は車を降り、後方へ走っていった。

しばらくして運転手は戻って来た。

「猫を跳ねたみたいです。真っ黒な猫でした。まだ子猫だったのに。かわいそうな事をしました。」

そう言うと、再び車を発進させた。

十分程走り、家まで続く暗い一本道に入った頃だろうか。それまで色々話しかけてきた運転手が、急に静かになった。車のスピードも速くなる。よく見ると微かに震え、頻りにミラーを見て後方を気にしている。

「まさか、そんな…」と呟き始めた。

「運転手さん。どうしたの。スピード出過ぎてない。」

話しかけるが、返事は無い。相変わらずチラチラとミラーを見ている。

後方に何か在るのか。咄嗟に振り向いた。

降り頻る雨の中、よく見えないが後続車との間に何かいる。

真っ黒な子猫をくわえた、真っ黒な親猫が追いかけてくる。

思わず前を向く。

「さっきからずっと追いかけてくるんです。スピードを上げてもぴったりと。」

震える声でそう言うとまた車を加速させる。

「ほら、まだついてくる。」

振り返るとクロネコも同じスピードで走っている。

運転手は震えながらスピードを上げていく。少し距離があいた様だ。

「もう追ってこれないだろう」

「いや。運転手さん。落ち着いて。」

声を掛けるが、聞き入れない。

「運転手さん、前。」

猛スピードの車は急カーブを曲がり切れずにガードレールへ突っ込んだ。

「大丈夫ですか。」

後続車の運転手が声をかけてきた。

「何か凄いスピードでてましたけど、何かあったんですか。」

クロネコヤマトのドライバーは不思議そうな顔をしていた。

怖い話投稿:ホラーテラー 廿卅さん  

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