中編7
  • 表示切替
  • 使い方

歌舞伎町

俺にはいくら長い年月が経とうとも忘れられない事がある。

その出来事は俺が今まで持っていた色んな既想概念をぶち壊し、何もかもを奪いさっていった出来事だ。

はっきり言って文才も何もないし、無駄に長くなる。それ以上に話し自体もつまらないかもしれない。

ただ自分の気持ちの整理の為だけに書かせて頂く。

自己満ですまんが最後まで付き合ってくれれば嬉しい。

1998年7月俺は大阪にいた 。

勤めていた会社は当時では珍しい水商売専門の経営コンサルタント、とは言っても簡単な話しが「立ち上げ屋」だ。

物件選びから内装の発案、従業員の募集及び教育等を代わりに引き受ける。

そんな会社だ。

ある日の事、社長が突拍子に口を開いた。

「誰か東京行きたい奴おるか?」

あまりに突然の事なので、従業員は皆ポカンとした表情である。

そんな中1人の従業員が勢いよく手を挙げた。

「はい!俺行きたいです!」

後輩のSだった。

Sとは高校からの付き合いで、高校時代から何かと後ろをチョロチョロついてきた可愛いが多少めんどくさい後輩だ。

高校を出て友人のつてで今の会社に入り、一年後たまたまSが同じ会社に入ってきた時はしこたまびっくりしたのを覚えている。

そのSが俺の前で高々と手を挙げている、嫌な予感はしたが予感はすぐに現実となった。

「T(俺)さんと行ってきます!」

Sはそう言うとクルッと後ろを振り向きわざとらしく俺にウインクをしてみせた。

「こいつ…」とは思ったものの、特に東京行きを拒む理由も無かったので「じゃあ俺も行きます」と答え早速明後日から東京へ行く事に。

東京に向かう新幹線の中で終始Sはハイテンションで、「東京ってどんな所なんやろ?」とひたすら俺にもしも話しをふってくる。

Sのマシンガントークを一旦遮り、東京に着いた後のスケジュールを2人で再度確認をする。

そうこうしている内に東京に到着。

俺達2人は大久保という所にある社長の自称「別荘」に向かった。

「別荘」に着いた俺達は唖然とした。

「只のアパートや…」

Sが呟く。

しかし実際どの角度から見ようが只のアパートだった。

とりあえず社長に確認と東京に着いた報告の為連絡をする事に。

社長との通話は五分程で終わった。

社長の言う事には、まず「別荘」は目の前にあるアパートで間違いなく、昔お金が無い時に東京に働きに来た際借りたらしい。

愛着がわいてしまった為に今でも解約できないでいるとの事だった。

俺達もまぁ寝る場所があるだけありがたいという結論に至り、とりあえず中に入った。

部屋の中は日当たりが良かったのか長い間放置されてる割にカビ臭くもなく、俺達はどことなくホッとした。

荷物を置いて2人してタバコに火をつけ、一息を入れる。

「俺不動産関係でいいんですよね?」

Sが口を開く。

2人で決めた役割分担は、Sが物件選び、俺がケツ持ち(面倒が起こった時に出てきてくれるその筋の方々)との顔合わせという感じだ。

タバコを吸い終わった俺達は早速行動を開始した。

歌舞伎町に着いた所で別行動、Sは不動産屋へ、俺は待ち合わせの為小さな喫茶店に向かった。

なるべく急いだつもりだったのだが、相手方はもう到着していた。

パッとみた感じはヤクザには見えない、しかし決してひ弱そうではない。

しいて言うなら爽やかに男らしい?うまく表現できないがそんな感じ。

「Tくん?初めましてUです。おおまかに社長から話しは聞いてるから、早速行こうか。」

どこに行くんだろうとまごまごしている俺に気付いたのか、

「歌舞伎町案内してやるよ」

とニコッとしながら言った。

その後ぐるっと歌舞伎町を周り、「何かあったらいつでも」と言って携帯番号を教えてくれた。

Uさんと親しくなるのに時間はかからなかった。

生粋の犬タイプの人間であるSはすぐに周りの人間になつくのに対して、俺は結構な人見知り。

相談できるのがUさんしか居なかったのだ。

仕事がうまくいかず、酔った勢いで泣きながら電話した事もあった。

Uさんは本当にヤクザには珍しいタイプの人間で、俺みたいな一般の人間の相談に乗ってくれて、時には優しく、時には厳しく接してくれた。

挙げ句の果てに「お前は弟みたいなもんだ」と、家に招待してくれ、奥さんと子供に会わせてくれた。

奥さんは優しくて、「ご飯くらいならいつでも食べに来ていいからね」と言ってくれた。

お子さんもよくなついてくれた。

そんなUさんの優しさが力となり、仕事も順調に進むようになっていった。

社長の指示もありここは一気にと言う事で、店舗を三店舗ほど増やす事に。

従業員もだいぶ数が増えていたので、物件選びはSと一緒に行く事にした。

お抱えの不動産屋で何件かピックアップしてもらう。

この不動産屋もSが従業員と仲良くなってくれたお蔭で、いい物件を優先的に見せてくれる。

しかし時期が悪かったのかいまいち目を引く物件が無い。

「片っ端から直接見に行きましょう!」というSの意見に賛成して物件巡りを始めた。

一件目、二件目、三件目とまわってみるが、やはり目を引く物件は無い。

やっぱり無いのか…といった雰囲気になった時にふと不動産屋が口を開いた。

「あっ!あそこまだ空いてるのかなぁ?」

俺とSは同時に「どこ?」と聞く。

その不動産屋によれば、立地も条件もいいのに、どうしてなのか空いてる事が多い物件が一つあるとの事。

なんで先に言わないんだと冗談で頭をはたき、その物件に向かった。

ガチャン

鍵が開き扉がすっと開く。

「寒っ」

ここでも俺とSは同時に口を開いた。

半端じゃないくらい、いや洒落にならないって言った方が伝わりやすいと思う。

「俺ここ無理や。」と言ってSが店を出た。

俺はここまで着いて来てくれた不動産屋の手前、店をぐるっと見る事に。

おかしい。明らかにおかしい。

月に一度は掃除を兼ねた設備点検が入っているのに床には大量の虫の死骸、気温は6月にも関わらず鳥肌が立つ程。

何よりも自分の中の第六感がその空間にいるのをためらう。

なんとか店を一通り見終わって外に出る。

Sがうずくまっていた。

額に粒状の汗をつけて顔は真っ青。ガクガクと震えている。

「どうしたんや?!」

急いで駆け寄り声をかけるが、「帰る…帰りたい…帰る…」とただそれだけを繰り返している。

その光景を見ていた不動産屋がビルの前にタクシーを呼んできてくれた。

帰る途中もSはガクガクと震え、俺の手を千切れるんじゃないかという力で握っていた。

アパートに着きとりあえず布団の上にSを寝かせる。

汗はスーツがびしょ濡れになるほどかいているのに体温は冷たい。

あり得ない状況だった。

医学の心得なんて全くない俺でもはっきり異常な状況だってわかるくらい。

とりあえず必死に看病をする。

後ろで携帯が鳴っていたが対応できず、明日以降に折り返せばいいと思っていた。

ビーーーッ

次の日呼び出し音で目が覚めた。

体が尋常じゃないくらいダルい。

変わらず玄関からは呼び出し音が鳴っているが、無視して携帯をチェック。

「着信+」の表示が出ていた。「着信+」というのは着信が10件を越えたときに表示されるもので、俺自身も過去に一度しか見た事が無い。

着信はすべてUさんだった。

それを見た瞬間の事だった。

「おい!中にいるんだろ??何かあったのか?」

Uさんだった。

まだダルさの残る体を起こし、玄関に向かう。

ガチャンと鍵を開けると勢いよくドアが開いた。

「何してやがったんだコノヤロー!」 とUさんが至近距離で怒鳴る。

「すいませんでした」と謝り昨日あった事をUさんに説明しようとした時だった。

「何したんだお前…」

さっきまでのUさんとは様子が違った。

何かに怯えたようなUさんの様子を見たのは後にも先にもその時だけだった。

俺が「えっ?」と言うのと同時にUさんが俺の手をぐっと掴み走りだした。

百メートルくらい走った頃だろうか、徐々にスピードが落ちて来た。

フゥーと息を整えたUさんが口を再び開いた。

「お前達何したんだ?」

俺は何も言えなかった、何も分からなかったから何も言えなかった。

そうして口ごもっている俺にUさんは続けた。

「信じるか信じないかはお前次第だけど、寝てるお前の連れを5人の男と女が見下ろしてた。はっきり言うがあれはこの世のもんじゃねぇ。ヤクザがオカルトめいた事を言うのは変かも知れねぇけど、俺には見えんだよ。分かんだよ。」

Uさんは一息でそれを言い切ると、またハァハァと息を走らせた。

申し訳ないんだけど一回切る。続きすぐ書くから堪忍してくれ。

怖い話投稿:ホラーテラー たこ焼きさん  

Concrete 59189e6fb4d79119a63e92183ffb92aeb8f46031afd97d5db060811ce15c35e6
閲覧数コメント怖い
1,2260
2
  • コメント
  • 作者の作品
  • タグ