短編2
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耳取峠

私が小さい頃に誰かから聞いた話。

昔、ある村に役人の男がすんでいた。

その男には妻子があり、子煩悩な男はたいそう子を可愛がり、美しく優しい妻と幸せに暮らしていた。

ある時、男は村の金持ちの老人と自分の上司の不正を見つけてしまった。

正義感の強い男は、二人を呼び出し不正を問いただした。

その夜、家路を急いでいると自分の家の方が妙に明るい。

急ぎ帰ると、我が家がごうごうと音をたてて燃えていた。

村人たちの助けもあり、火はなんとか消えたが妻と子は助からなかった。

さらに男に不幸が襲う。

なんとあの上司に不正の濡れ衣を着せられたのだ。小さな村故に、力のあるものが弱いものを貶めても誰も救ってはくれなかった。

男は命をもって罪を償うこととなった。

命絶たれる直前に、妻子を殺し火をつけたのは自分だと上司に聞かされた。

絶望のなかでさらに追い討ちをかけるように、村人たちの罵声が聞こえた。

あんなに自分を慕ってくれた村人達が、誰一人としてかばってはくれなかった。

男はお前たちの話は聞きたくないと、耳を引きちぎりこと切れた。

男が死んでからしばらくして、上司と金持ちの老人が死んだ。

二人とも恐ろしい幻聴に悩まされ、耳を引きちぎって死んだそうだ。

二人が何を聞いたかはわからない。だが、その二人の死を目にした村人たちは、次は自分ではないかと恐れた。

そして一人二人とこの地を去り、この潰れた村の辺り一体を耳取峠と呼ぶようになった。

怖い話投稿:ホラーテラー 匿山名美子さん  

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