中編5
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いわくは本物

俺の実家から車を二時間程走らせた所に、オカルトマニアなら誰でも知ってる廃屋〈青い家〉がある。

この廃屋を知らないようなら、以後俺の前でマニア面するんじゃねぇ。今人気お化け屋敷ランキングなんてのをやったら間違いなくベスト3に入る超怪奇物件なのだ。

廃屋というと、やれ荒井さん家だの、ホワイトハウスだの、いまいち信憑性に欠ける話が多いが、この廃屋、そんじょそこらの廃屋とはモノが違う。

第一建っている場所が、宅地造成される前までは正真正銘の墓地だったのだ。

これはその廃屋がある○○市に住む奴に聞いた話だ。

その辺りは昔、山と田んぼしかない糞田舎だったらしいのだが、30年程前、大規模な土地開発計画が持ち上がったのだ。

しかし、その計画が頓挫しかねない邪魔物がその地にはあった。

墓地だ。

開発事業の主な目的は、一戸建てに住みたくても住めない都民にニュータウンとしてアピールし、土地を売り出す事にあった。

町の中心に墓地なんかあると高く売れなくなるのは自明の理だったのだ。

一体どんな交渉でその墓場をただの平地に出来たのか、どれ程の金が動いたのか知る由もないが、とにもかくにもその墓地は地図上からは完全に姿を消した。

ただ、いくら大金を積まれても、墓石を壊すような条件を飲むとはとても思えないので、殆どの墓石はちゃんとした手順を踏んで他の墓地に移されたに違いない。

しかし、墓の所有者と連絡がつかなかった場合、その墓石はどうなったのだろうか。無縁仏だってあった筈なのだ。

これは俺の想像だが、おそらく一ヶ所に集められたのだ。

土中に眠るものはほったらかしで墓石だけを狭い範囲に。

そんな不気味な土地、いくら安くても買うような酔狂者はいない。

しかしその土地の所有者は何とかして売ろうと考えた。

さすがに全てを処分するのは躊躇われたので、墓石の中でまともな物だけを残しあとは地中に埋めた。

そして出来た空き地におしゃれな家を建て、売りに出したのだ。

そんな土地、売る側も売る側だが、買う方もどうかしてる。

家の敷地内に墓石があるのだから。

その家の裏に回ると、この家を買った人間の無神経さが良くわかる。

裏側の窓から苔むした墓石が真正面に見えるのだ。

まあ、おそろしく安かったのだろう。

墓石がしゃれたアンティークに見えたのかも知れない。

ここからは3年前、青い家について調査した某ホラーサイトの管理人の話。

若い夫婦がその家を買ったのは今から10年以上前。近所の住人によると、とても明るい奥さんだったらしい。

しかし、その奥さんはもうこの世にはいない。

話が聞けた近所の住人の家も現在廃屋となっているらしい。

近所の住人も土地開発後その地に越して来た方で、以前そこが墓地だったという事実は知らされていない様子だったという。

こんな土地の売り方は違法なんじゃないかとその管理人が吐露していたが俺もそう思う。

ただ、半端なく安かったのは事実だったようだ。

青い家が建つ前は長いこと空き地だったそうで、そこにひっそりと墓石が立っているのを不気味に思いながら毎日眺めていたらしい。

そこに家が建つのを見て正直驚いたという。

出来上がった時見に行ったら墓石がそのままだったので更に驚いたそうだ。

売れるわけがない、と思っていたら若い夫婦が越して来たので自分の目を疑ったという。

旦那さんは無口な感じだったが、奥さんの方はとても明るくて、良い人が越して来たね、と内心喜んでいたらしいのだが…

ひと月もしないうちから奥さんの様子が変わっていったという。

旦那さんが出勤した後家に入らず、外をうろつき始めたというのだ。

おしゃれだったのに一切身なりに気を使う事がなくなる。

髪はいつもボサボサで常にぶつぶつ独り言を呟いている。

精神を病んでいるのは明らかだったという。

一度

「どうしたの?家に入らないの?」

と訊ねた事があった。

奥さんは今にも泣きそうな顔をして話したそうだ。

「主人に言っても信じてくれないんです。家にいると大勢の声がするんです。一階にいると二階から。驚いて階段をかけ上がると今度は下から。怖いんです。一度家に来てくれませんか?」

丁重に断ったという。

ここからはあまり詳しくは書けない。

その奥さんは首を吊って亡くなられた。

すぐに旦那さんは家を出て行かれたそうだ。

そして

空き家になって、近所の人にもはっきりと分かるくらいの異変が始まったという。

無人の筈の家から、多くの人が宴会をやっているかのような声が聞こえ始めたのだ。

そら耳なんかでは絶対にない!と、

何度も繰り返していたという。

俺がそのいわく付き物件を初めて知ったのは、〈うらをとる〉という議題の、とある心霊フォーラムに出席した時だった。

タクシーの運転手が女の幽霊を青山墓地におろす。

ホラーファンでなくても一度は聞いた事のあるような心霊話。

果たして真実か?

そんな体験をしたドライバーが本当にいるのか?

いるなら捜せ!

まあ、簡単に言えばそんなディスカッションの場だったWW

そこで青い家をメジャーな廃屋にしたタクシードライバーの目撃談が取り上げられた。

「夜中、その家の前を通りがかったら、その家からネグリジェ姿の女が飛び出して来て手をあげた。あまりにも普通に人間に見えたものだから、車を止めてドアを開ける。女はこれまた普通に乗り込んで来て、市役所へ、と一言呟くと目の前で消えた」

ざっとこんな感じの談話らしかった。

裏をとってきました〜!

知り合いのホラーサイトの管理人が(前述した管理人)意気揚々と壇上に上がった。

「そのドライバーは実在してました。しかし、真実はこうでした」

そのドライバー、自殺した女性を何度か乗せたらしい。だから、可哀想で見たままの事を言えなかったらしいのだ。。

真実はこうらしい。

夜中、家の前を通りがかったら、ネグリジェ姿の女がいきなり飛び出して来た。手をあげないので客なのかどうか判らず、スピードを落とし様子をうかがった。

あ!!

その女の首が異常に長い。

全身鳥肌状態で急ブレーキを踏む。

!!!

女が首をグラグラ揺らしながらこっちに向かって来たんだ。顔は空を見上げてるって感じで闇に消えてた。ネグリジェの上に長い首だけがが乗ってる、そんなのが向かって来たんだ。

それはフロントガラスを通り抜けて後部座席に座った。いや、見たわけじゃないから座った気配がしたとでも言おうか。

!!!

気付くと車を沢山のモノに囲まれていた。

奴らはみんな笑ってやがった。腐った奴らがみんな歯を剥き出して笑ってやがったんだ。

「市役所へ」

後ろから声がして意識が遠のいた。

その運転手、同僚に起こされるまで気絶していたらしい。

水色のペンキは所々剥げてはいるが、青い家は売れないまま今現在もその妖気を周囲に撒き散らしている。

怖い話投稿:ホラーテラー 蟹鍋さん  

 

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