中編3
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酔っ払い

はじめまして。

とても長いのですが、私なりに怖いと思った出来事です。

いつもバイト帰りに通っている線路沿いの道には、線路と道路を仕切る柵があり、柵の隣にはガードレールがあります。

居酒屋のバイトをしているので帰りは2時~3時の間で、いつも自転車で通っていました。

その日、バイトが終わり自転車に股がると、不運な事に後輪がパンクしている事に気が付きました。

仕方なく自転車を押して帰る事にしましたが、夜中に一人で歩くのが怖かったので、友達と電話で話しながら帰る事にしました。

線路沿いの道に差し掛かった時、話題が夜空の話になりました。

「今日星が良く見えるよ」

友達にそう言われ、目の悪い私はメガネを探すため自転車を一旦とめて鞄にあるメガネを探そうと、友達に断ると耳から携帯を離し両手を自由にしました。

携帯を離した事により訪れる静寂。

その時初めて近くで人の声がしているのに気が付きました。

振り返ると、ガードレールの下から人の足が出ているのが目に入りました。

とても驚いたものの、よく見てみると、柵とガードレールの間に誰かが座っている様でした。

ガードレールの下から膝下が覗いているので、どうやら体育座りのように膝を曲げているのだと思いました。

そして目を凝らしてもっとよく見てみると、その人はガードレールに手を掛け目から上だけを出してこっちを見ながら、「おい、おいおいおいおい」と小さく呟いています。

(酔っ払いだ!こえーーーー!!!!)

驚いた私はパンクしている事も気にせず自転車に飛び乗り全速力で家に向かいました。

いきなりパンクしているはずの自転車に乗って走り出した私に、携帯越しに友達がすごく心配してくれていました。

何事もなく家の前までたどり着くととりあえず友達に何があったか説明し、電話を切りました。

そして、自転車を持ち上げ段差を上り一息ついた時、鈴の音が聞こえてきました。

(えっ?付いて来た?)

さっきまでは酔っ払いだと思っていたのに、この時は生きている人間じゃなかったのかもと思い始めました。

その瞬間、私の足に何かが触れました。

悲鳴こそ上げませんでしたが、驚きで本当に体がびくっと飛び上がりました。

しかし、それは室内飼いのはずのペットの猫でした。

(ちょ、驚かせないでよ~!てかどっから外に出た?!)

この出来事で、心は和み、猫が迷子にならなくて良かった、さっきのはやっぱりただの酔っ払いか、と安心しました。

次の日、学校に行くため昼間に線路沿いの道を歩いていると、昨日の事を思い出しました。

(そういえば昨日の人ちゃんと帰れたのかな?)

昨日まさに酔っ払いが居た場所に目を向けると、私は愕然としました。

あまり意識した事がなかったので知りませんでしたが、なんと、柵とガードレールの間は20センチ程しかありません。

とても人が膝を抱えて座れる様な余裕はないのです。

今思うと、その道は対して暗くないはずなのに、私の記憶にはガードレールの下から見える足と、それに掛けている手、そしてこちらを覗く目以外は暗くて見えず、全く覚えていません。

あれは人だったのかなんなのか…。

特に何かをされた訳ではありませんが、私にはとても怖かった体験です。

長々とすみません。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

怖い話投稿:ホラーテラー スリットさん  

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