短編2
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今年も祖父の家に行く。

そう思うと、少し憂鬱になる。

毎年、お盆や正月には祖父の家がある田舎に行き、親戚一同で集まるのだ。

そこで、じいちゃんに会う。

正直、あまり会いたくはない。

昔は大好きだったが、今は僕にとって怖い存在である。

別に怒ったり癇癪を起こすわけではない。

孫である僕に優しくしてくれるし、お小遣いもくれる。

本当に優しくて、そんなじいちゃんが大好きだった。

あの体験をするまでは…

僕が小学生の時、お盆で田舎に帰っていたときだった。

その時はばあちゃんが亡くなってから随分経っていて、じいちゃんは一人で暮らしていた。

久しぶりに僕達に会って嬉しそうなじいちゃん顔を覚えている。

日が暮れるまで従兄弟達と山や河原で遊び、その日はみんなで夕ご飯を食べた。

その夜のこと。

みんなが寝静まった夜中、僕は目を覚ました。

眠かったが、トイレに行ってから寝直そうと思い、僕はトイレへと向かった。

トイレは客間から少し離れた、じいちゃんの寝室の方にある。

僕が廊下を歩いていると、じいちゃんの部屋から明かりが漏れていた。

「じいちゃんまだ起きてたのか…何してるんだろう?」

ちょうど寝室の襖がわずかに開いていたので、そこからこっそりと覗いてみた。

じいちゃんは起きていたが、普段とは何か様子が違った。

布団の上にあぐらをかいて座っているが、その手にはドライバーが握られていたのだ。

「ドライバー?何に使うんだろ?」

と、疑問に思っていると…

じいちゃんはドライバーを自分の首筋に突き立てた。

だが、ドライバーは刺さるどころかスルスルとじいちゃんの首に入っていく。

「!!」

驚く僕の前で、じいちゃんはドライバーをクルクルと回し始めた。

その時だった。

よく見ようとして体を乗り出した時、僕の額が襖に当たってしまった。

「しまった!」

と思ったが、次の瞬間にはじいちゃんが襖を開けて恐い顔で立っていた。

『なんだ、お前か。』

とじいちゃんは言うと、いつもの優しい顔に戻った。

『いいか、今見たことは忘れなさい。』

「うん…」

と頷くと、じいちゃんは優しく僕の頭を撫でた。

次の日も普段と変わらないじいちゃんだったが、やはりどこか怖かった。

その祖父と今年もまた会う。

だが、最近になって気付いたことがある。

僕自身、自分の首筋にドライバーを差し込みたくなる衝動に駆られる気がするのだ…

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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