東シナ海に浮かぶ島。僕はその島のジャングルに向かった。
目的はジャングル縦走だ。
一日目は観光ルートを進み、二日目から本格的にジャングルに踏み入れた。
ジャングルの夜は本当に真っ暗闇だ。
目が慣れると、うっすら見えると言う事もない。
僕は野宿で日本一周しているので暗闇に恐怖する事はない。
しかし、この島の闇は恐怖を感じる。
それは、この島の歴史が、そうさせれるのだろうか‥
この島に秘密の飛行場があったという。
建設には近隣の国から外国人が従事し、死んでいった。
死亡原因は劣悪な労働条件、マラリア、そして秘密保持の為…
不安な夜を五回繰り返し迎えた朝、島の反対側の海に出た。
この島には一周道路は無く、この浜に立つにはジャングルを抜けるしかない。
やはり、この浜にいるのは僕一人だ。
僕はテントを設営し、一番リラックスできる格好、つまり素っ裸になった。
僕は銛を手にし海に入った。
手付かずの自然が残る海で、贅沢な時間が過ぎてゆく。
ふとテントの方を見ると、人影が‥
手に大型のナタを持った裸の黒人だ!
ヤバい!僕の直感は逃げろと言っている!
しかし、今の僕は素っ裸だ。
装備も無くジャングルに入るのは自殺行為だ!
闘うしかない!
僕は銛を引き、しっかり握り締めた。
海から上がると、そいつは、ゆっくりと振り返った。
「よっ!どっから来たん?」そいつは馴れ馴れしく話し掛けてきた。
イカれた黒人だと思った、そいつは陽気な関西人だった。
僕の直感はアテにならないようだ。
その夜、その関西人、名倉武人とシマー(泡盛)を飲んだ。
武人は、ここで一人で一年間過ごすと言う荒行に挑戦しているのだと。
日付を教えてやると、とっくに一年は過ぎていた。
寂しくないのか?と聞くと「ああ‥友達なら、ようけおるからね‥みんな死んでるけどね…」
意味深な言葉にぞっとした。
夜が更けてくると、何か気配を感じる。
耳元で何かノイズを感じる。
すると武人が「三合瓶を少し離れたとこに置いとき」と指示してきた。
僕は指示にしたがった。
するとノイズが止み静かになった。
武人曰わく「奴らは酒が大好きやねん」
次の朝、不思議な事に、未開封の三合瓶が空になっていた。
武人の『友達』が飲んだのだろう…
僕に霊感が無い事に感謝した。
これが名倉武人との運命の出逢いだった。
怖い話投稿:ホラーテラー マア坊さん
作者怖話