僕には『ピギー』と言う相棒がいる。
僕の脳が作り出した幻覚に過ぎない、豚の幽霊だ。
僕の家は築百年を越える赤瓦の武家屋敷だ。
門をくぐるとマジムン(魔物)返しの壁がある。
『ピギー』はそこを越える事が出来ない。
と言うことは『ピギー』はマジムンなのだろうか?
『ピギー』を見るようになって数ヶ月が経ち、僕は『ピギー』に奇妙な友情を感じるようになっていた。
僕がバイトに行ってる間、『ピギー』は一人いや一匹で僕の帰りを待っているのだ。
マジムン返しを越えられなく屋敷から出れないからだ。
『ピギー』は僕が好きなようで出掛ける時、すごい悲しい表情を浮かべる。
マジムン返しの壁は僕の胸の高さ程なんで、『ピギー』を抱えれば外に出してやれるんじゃないかと思った。
やってみると案の定、屋敷の外に出れた。
その日からバイト先に連れて行くようになった。
やはり僕の作り出した幻覚だから、誰も『ピギー』が見えないし、触れる事も出来ない。
異変は、その日に起こった。
バイト仲間が僕に近づかないのだ。
お客さんの中には、顔を背け鼻口を抑える人もいた。
昼に店長に帰れと言われた。
「お前、なんか獣臭い お前にお客さんを任せられない 明日は風呂に入ってから来い」
ショックだったが原因はすぐ分かった。
『ピギー』だ。
でも不思議だ。 僕以外に見えない触れれない、幻覚の豚が、臭いだけは周囲に影響を及ぼすのだから。
僕の家の風呂は露天風呂なのだ。
露天風呂と言えば聞こえは良いが、実際はホームセンターに売っているプラスチックの湯船が庭に転がってるだけだ。
『ピギー』を露天風呂で綺麗に洗ってやると、凄く喜んでいた。
豚は非常に綺麗好きなのだ。
次の日から僕の悪臭は消えたので、やはり原因は『ピギー』だったのだろう。
怖い話投稿:ホラーテラー マア坊さん
作者怖話