短編2
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悪臭

僕には『ピギー』と言う相棒がいる。

僕の脳が作り出した幻覚に過ぎない、豚の幽霊だ。

僕の家は築百年を越える赤瓦の武家屋敷だ。

門をくぐるとマジムン(魔物)返しの壁がある。

『ピギー』はそこを越える事が出来ない。

と言うことは『ピギー』はマジムンなのだろうか?

『ピギー』を見るようになって数ヶ月が経ち、僕は『ピギー』に奇妙な友情を感じるようになっていた。

僕がバイトに行ってる間、『ピギー』は一人いや一匹で僕の帰りを待っているのだ。

マジムン返しを越えられなく屋敷から出れないからだ。

『ピギー』は僕が好きなようで出掛ける時、すごい悲しい表情を浮かべる。

マジムン返しの壁は僕の胸の高さ程なんで、『ピギー』を抱えれば外に出してやれるんじゃないかと思った。

やってみると案の定、屋敷の外に出れた。

その日からバイト先に連れて行くようになった。

やはり僕の作り出した幻覚だから、誰も『ピギー』が見えないし、触れる事も出来ない。

異変は、その日に起こった。

バイト仲間が僕に近づかないのだ。

お客さんの中には、顔を背け鼻口を抑える人もいた。

昼に店長に帰れと言われた。

「お前、なんか獣臭い お前にお客さんを任せられない 明日は風呂に入ってから来い」

ショックだったが原因はすぐ分かった。

『ピギー』だ。

でも不思議だ。 僕以外に見えない触れれない、幻覚の豚が、臭いだけは周囲に影響を及ぼすのだから。

僕の家の風呂は露天風呂なのだ。

露天風呂と言えば聞こえは良いが、実際はホームセンターに売っているプラスチックの湯船が庭に転がってるだけだ。

『ピギー』を露天風呂で綺麗に洗ってやると、凄く喜んでいた。

豚は非常に綺麗好きなのだ。

次の日から僕の悪臭は消えたので、やはり原因は『ピギー』だったのだろう。

怖い話投稿:ホラーテラー マア坊さん  

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