長編15
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別荘で

これは高校生の時の話だ。

三年生になり、俺も含めて友達もそれぞれ進路が決まって来ていた。車の免許を取ったことで、遊びの行動範囲が広くなった俺たちは、夜な夜なドライブを楽しんだ。

そんなある日だった。

友達の柏木から電話だ。こんな時間に。木下は同じバイト先の奴で、中学からの友達だ。

そんな友達からの電話はいつもの俺ならすぐに取る。だが今時刻は深夜1時、眠い。

もう寝る準備万端。俺の中の睡魔はそう簡単にやられちゃくれない。すまんな。柏木。

3コール。

10コール。

一度切れた。

だがすぐさまコール。

しつけえ!

「・・・もしもし?」

「もしもーし、和泉、お前今暇かぁ?アハハ」

暇じゃない。今から睡魔に身を任せ幸せを謳歌するんだ。思うんだけどグッスリ寝れることって本当に幸せだと思うんだ。

睡眠は俺の中でも結構重要なアレだ。アレ。上手く言えないけど。

「いや、あんまり暇じゃないかも。」

「えー?マジで?ハハ、うるせぇ。」

誰と話てるんだ、こいつ?俺の至福の時を邪魔しやがったくせに。ちゃんと話しやがれ。一応聞く。

「なんだよ?今誰かと一緒?」

「あー、今日のシフトのメンバーでどっか遊びに行こーってなったんだけど、

Y先輩が帰っちゃってさ。今女子二人と俺一人なんだわ。

んでお前誘ったって訳なんだけど。いや、忙しいなら別にいいんだぜ。」

せっかくお前のお気に入りのハルカちゃん来てるのになー。

柏木は電話の相手の俺だけに聞こえる声でわざとらしく言った。

「すぐに行かせて頂きます!」

睡眠?なにそれ美味しいの?

バイト先に徒歩で向かった。バイト先までは大体歩いて15分位だが、その時の俺は軽い足取りで、10分程度で目的地についた。

バイトの店先に白いミニバンが停まっていた。柏木の車だ。

コン、と窓を叩く。

「あ、和泉クン。」

ああ、愛しのハルカちゃん。

暗い現代のオアシス。

焦ったら駄目だ。

いつものクールな俺を出すんだ。

「あっ、ハルカちゃん。こっ、こんばんは。」

何が、こっこんばんは、だ。噛みまくった。あはは、とハルカちゃんが控えめに笑った。

口に手をあてて笑う姿も可愛い。マイエンジェル。バイト先で、このおしとやかな笑顔に心を打ち抜かれたのである。

「おー、和泉。はえーなw。」

柏木が助手席から顔をだす。

ああ、運転は俺なわけね。

当たり前だろ。誰のおかげで今の状況なんだ?と言いながら柏木がウインクする。キショイ!

とは言えない。一応、ハルカちゃんのことは感謝しないといけないからな。

んで、これからだけど、

柏木が後ろの席の女子を見て言う。

「うわー、なんか柏木くんエロい顔してるーww」

ハルカちゃんの隣のノゾミが大きい声で笑う。大人しめのハルカちゃんとはうってかわって、ノゾミは良く言えば明るくて場を和ますムードメーカーみたいな奴だ。いやいや、と柏木が俺を叩きながら笑う。

じゃぁ、あそこは?とハルカちゃんが言った。

あの呪われた別荘の話、知ってるよね?

――――その別荘は、十数年前ある金持ちの夫婦が山の上にひっそりと立てた大きな家。その夫婦は子供には恵まれなかったが、幸せな生活を送っていた。かに思えた。

だが、男には浮気相手の女がいたのだ。女はとても美しく、男は女の虜だった。

浮気相手の女は、金持ちの男に妻と別れるように何度も言った。

だが、男はなかなか別れられず、ついには妻を殺す計画を立てる。

男は妻に、十年目の結婚祝いは、別荘ですごさないか?と提案した。妻は結婚当初に比べ冷たくなってきていた夫のこの言葉に感動し、喜んで承諾した。

そして、その日が来た。別荘の寝室で髪をといでいた妻の背中を、後ろから何度も刺した。

何度も、何度も。

そして男は、冷たくなった妻の遺体をその別荘のどこかに隠した。

男は、浮気相手の所に向かった。男にとっての幸せな生活が続いた。

ところが、それからしばらくして男の周りに血だらけの妻が現れるようになった。

食事中、ふと気付くと隣に座って妻がこっちを見ている。

その顔は血に染まっている。が妻の顔は笑顔だった。

会社からの帰宅途中、テレビを見ている時。

妻はどこにでも現れた。

やがて、男の周りに不幸な出来事が起こるようになる。

男の会社は倒産し、多額の借金が出来て、しまいにはあれほどまでにつくした浮気相手の女にまで逃げられてしまった。

浮気相手の女は、夜な夜な血だらけの男の妻が家の中に出ると怯えていた。

男は何もかもを無くし、破滅した。どこにいても、何をしていても、妻は現れた。男は気が狂いそうだった。

男は気がつくと、あの別荘に来ていた。

どこからか、妻の声が聞こえた。

「待っていたわ。」

男はその別荘で首をつって死んだ。

―――ところどころ疑問に思う点もあるが、これが、俺がY先輩から聞いた、その呪われた別荘の話。

このあたりのほうでは、けっこう有名な話らしい。ただ、その別荘に行く奴はあんまりいない。

というか別荘がどこにあるのかかがわかっていないらしいのだ。

そもそも本当にあるのかどうかも怪しい。

でも、場所分かんないでしょ?と俺が言うと、柏木が誇らしげな顔で「俺、その別荘の行き方、Y先輩から教えてもらったぜ。行ってみる?」

1時間くらいで行けるよ!と目を輝かせながら言った。

こいつのオカルト好きに火がついたみたいだ。もう他の場所は駄目だな。

といっても、ほかに行く所もないので、その別荘に行くことにした。

四十分ほど車を走らせると、あたりの景色からは建物が少なくなっていき、さらに十分ほどでほとんど建物は消え、山道に入った。夜の山は光などなく、深い闇が広がっている。

ある程度進んで、柏木が そこで止めろ、と言った。

車を道路脇のスペースに停め、車から降りる。

「ここからは歩いてじゃないと行けないんだ。」

夜の山をほいほい歩くなんて、危ないどころではすまないかもしれなかった。蛇や熊なんか出たら、それこそ幽霊なんかよりも怖いだろう。

暗くて何も見えやしない山道を、少しばかりの月明かりと携帯用の小さなライトだけが照らしていた。

胸のあたりまでのびた草木が生い茂る獣道を、足元を照らすのもおぼつかない小さなライトの光を頼りに、恐る恐る歩を進める。

にもかかわらず柏木はずんずんと草をかき分け進む。

車を止めたところから数分歩いた所で、柏木が足を止めた。

「あれだよ、あれ。」

指をさす方角にライトを向けた。ツタの様な植物に覆われて、よくわからないが、確かに家だ。草や木に覆われているが、それはどっしりとした存在感を放っていた。

結構な大きさがあった。二階部分と思われる所の窓からは草やツタの葉が顔を出していて、その様子は不気味さを際立たせている。

「やっぱ怖くなってきた、どうしよう・・・帰りたい。」

いつもは元気なノゾミが弱気になっている。珍しい。

「でも、ここまできたら・・・ねぇ?」

とハルカちゃんが俺をみて言った。正直なところ、俺も帰りたかった。バカみたいだが、ここに来るまでこの家が本当にあるのか疑っていた。だが現物を見てしまったのだ。

しかも予想を超える不気味さでそれはあった。

しかし、ハルカちゃんの手前、帰りたいなんて言えるわけもなく。

「そうだね。五分くらい中見たら、あいつも満足するだろうし。

それに、あの話だって本当にあったかどうかも疑わしいからな。大丈夫だろ。」

ノゾミに言ったようで自分にも言い聞かせていたのかもしれない。

「ほら、和泉君もそう言ってるから。」

「和泉がそう言うなら・・うん。」

ノゾミにも可愛い所あるじゃん・・。と、このとき少し思った。

そうこうしているうちに、柏木はすでに家の玄関に立っていた。

「早く入ろぉーぜー!!」

玄関と思われる所にも、ツタの葉がびっしりとついていて、ドアノブにもそれはしっかりと巻きついていた。

「・・・じゃあ、開けるよ?」

ツタの巻きついたノブを強引に捻る。ゴキッ、ブチッと嫌な効果音が静かな空間に響く。

「・・・・開いた。」

思えば、廃墟に来ているのに、わざわざ玄関から入るなんておかしかった。鍵が空いていることも、疑問に思うべきだった。

でもその時はみんな恐怖や好奇心で、そんなことにまで頭が回らなかったのだと思う。

家の中は意外と綺麗だった。綺麗と言っても、ごみが散乱していないとか、廃墟にありがちなスプレーの落書きが殆どないとか、そういうものだ。

床からは雑草が生えているし、壁にはツタだらけで、人が住んでいけるような状況ではない。だからこそ廃墟なのだが。

家のところどころには、ここに住んでいたであろう夫婦の家具や用品が散乱していた。ぼろぼろになる前はさぞかし上等であったろうソファーや、植物に覆われる前なら高級そうな箪笥など、散乱しているのは持ち主が金持ちであったことを思わせるものばかりだった。

「やっぱ、あの話本当だったんだよ・・・!」

柏木がワクワクを隠しきれない様子で部屋を見ている。この状況を楽しめるのはコイツくらいしかいないな。と思った。

すると、ハルカちゃんが口を開いた。

「なんかドキドキするね!」

意外にもハルカちゃんも楽しんでいる様子だった。

「この怖さがたまんないよな!」

柏木が答える。

「そうだね。あそこの部屋見てみよう!」

「ここは風呂場だ!」

「ここはトイレみたいだね!」

「ここは・・・」

「あっ、ここは・・・・・」

2人がだんだん興奮しているように思えた。俺とノゾミを置いて2人でどんどん進み、一階の部屋を全部2人で見回ってしまった。俺は怖がるノゾミを落ち着かせながら、2人の後についてまわってた。もう少し、ノゾミに気を使ってやってもいいのに。少しイラついていたと思う。

「ねぇ・・もう帰らない?・・」

ノゾミが俺の手を引っ張る。

「なぁ、柏木、ノゾミもこう言ってるし、そろそろ帰らねぇ?」

柏木の肩に手を置いて言った。

だが柏木は俺に見向きもせずハルカちゃんを見て言った。

「ハルカちゃん、寝室、行ってみない?」

「いいね!いってみよう?」

ハルカちゃんが楽しんでくれるなら睡眠を減らしてもかまわない。少しなら怖い思いをしてもかまわない。

ただ、人が殺されたかもしれない部屋に行くのなんて御免だし、なによりノゾミがこれ以上ここにいれそうもない。

「寝室って・・・話じゃ、奥さんが殺された部屋だよね・・・?

いくらなんでも、そんな部屋に行くのは・・・ちょっと・・。それに―――」

俺が言い終わる前に柏木が言った。

「なんだお前?ここまできてビビってんの?」

カチン、ときた。

「最後まで話聞けよ!さっきから2人だけでどんどん進んでさぁ。なんか2人おかしいよ。ノゾミも帰りたがってるんだ。さっきから泣きそうだし。俺ももうそろそろ歩くの疲れたよ。ここ来てから三十分くらい経ってるしさぁ、もうけっこう見回っただろ?もういいじゃん。」

ここまで言えば帰るだろう。口調もキツめに言ったつもりだった。

「なんだ、ただビビってるだけかと思ったら、嫉妬までしてたのかよ?てか、ここまできたら行っとくべきだろ?」

びっくりした。そして、怒りが込み上げてきた。

「そうじゃねぇだろ!そんなことはどうでもいいんだよ!ノゾミ見てなんも思わねぇの?お前いつからそんな酷い奴になったんだよ?空気読めよ!」

怒鳴ってしまった。

ただでさえ静かな部屋が、静まり返った。

「私もう嫌・・。もう帰ろうよぉ・・・」

ノゾミが泣きそうな声で言った。

「じゃあさ、私と柏木君で寝室見てくるから、和泉君とノゾミはここで待ってて。すぐ見てすぐ戻ってくるからさ。それならいいでしょ?」

ハルカちゃんが言う。

俺も熱くなりすぎた。一旦落ち着こう。

「わかった。早く見るなら大丈夫。」

「ノゾミもそれなら大丈夫だよね?」

ノゾミが頷く。

それを見て、柏木とハルカちゃんが寝室があるであろう二階へ向かった。

2人が二階に行って、数分して

ドタン!バタン!っていう物音が聞こえた。

なにかあったのか?と思い身構える。

数十秒で慌ただしく階段を降りる音とともに2人が降りてきた。

その顔は、先ほどまでの意気揚々としてものではなく、

顔面蒼白でひどくやつれたように感じた。

「なにかあったのか?」

俺が言うのと同時に柏木が

「はやくこの家から出よう!はやく!」

と只事じゃない様子でまくしたてた。

「いいから早く帰ろう!」

ノゾミも俺もわけがわからないままハルカちゃんと柏木に引っ張られ、

そのまま車まで走って帰る。途中、草が顔をかすめたり、

石につまずいて転びそうになったが、柏木とハルカちゃんの様子を見ると、

走るのをやめるわけにいかなかった。

ノゾミはちゃっかりと一番前を走っていた。

車についても、2人は押し黙ったままだった。

柏木は自分から運転席に座り、全員が乗ったことを確認すると

猛スピードで山を降りた。

ある程度走り、景色に建物が戻り始めた。

運転が落ち着いた所で、覚悟した俺は、

運転席と助手席に座る柏木とハルカちゃんに聞いた。

「なにがあったんだよ?」

聞くことはこれしかない。

だが、答えを聞くのにも少し覚悟が必要だった。

「二階に上がってね、すぐに寝室を見つけたの。

なんで寝室ってわかったかというと、

部屋の中央に、ボロボロになったベッドがあったの。

そしたらね、そのベッドのすぐ横の床に、黒いシミがあったの。

大きな大きなシミ。

すぐに血だと分かった。あぁ、ここで殺されたんだ。って。

後ろから、グサッと。血が、大量に出て、止まらなくて。

それでも、何度も、何度も、刺されて。

グサッ、グサッ、って。」

運転席の柏木が、ハルカちゃんの言葉に反応するかのように

ギュッ、ギュッ、とハンドルを強く握ったのがわかった。

「そしたら、ふと、ベッドをどかしてみたくなったの。

不思議なことに、柏木君も同時に同じことを思ったみたいだった。

2人で協力して重いベッドを持ち上げたわ。あんなに重たいものは久しぶりにもった。

あんなに重たいものは女一人で持ち上げるなんて絶対に無理よ。

絶対に。

2人でベッドを持ち上げて裏返したの。

そしたら、ベッドの裏側いっぱいに、何かで引っ掻いたような跡と、

赤黒い文字で、こう書いてあったの。

待っているわ。待っているわ。

待っているわ。待っているわ。

待っているわ。待っているわ。

待っているわ。待っているわ。

待っているわ。待っているわ。

待っているわ。待っているわ。

待っているわ。待っているわ。

待っているわ。待っているわ。

待っているわ。待っているわ。

待っているわ。待っているわ。

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待っているわ。待っているわ。

待っているわ。待っているわ。

待っているわ。待っているわ。

待っているわ。待っているわ。

待っているわ。待っているわ。

待っているわ。待っているわ。

待っているわ。待っているわ。

待っているわ。待っているわ。

待っているわ。待っているわ。

待っているわ。待っているわ。

待っているわ。待っているわ。

待ってイるわ。待ッてイルわ。

――――――モう待てナい。

その文字を見た瞬間、サァ――――ッと何かが引いていったの。

私、何やってるんだろうって。こんなの、興味なんかまったくなかったのにって。

柏木君を見たら、柏木君も同じ顔してた。だから、2人で一目散に降りてきたの。

怖かった。なんであんなに興味がわいたのかも、今考えても分からないの。」

一時間ほど車を走らせ、ハルカちゃんとノゾミをそれぞれ家に送ったあと、

俺の家に着き、車を降りようとした時だった。

柏木が俺の手を掴んだ。

ギョッとした。

まだなにかあったのか・・・・?

「その、和泉・・今日は、なんか・・・・ゴメン。」

ぷッ!あはは!

なんだよ!まだなんか怖いことあったのかって思っちゃったよww

「笑うなよ。悪かったと思ってんだよぉ」

いやいや、俺もキレちゃったし、俺のほうも悪かったよ、ゴメン。

「いやいや、あのときの俺は、なんか・・変だったんだよ・・。周りが見えなくてさぁ・・」

いいんだよ!またこうやって普通のお前に戻ってるしさ!

「うん・・。じゃ、またな!」

おう!

そういって、柏木は帰って行った。

いやぁ、今日は、えげつない体験をした、と思った。

こんな体験をしたのはこの時が初めてだった。

フゥ―、とため息をついた。

これでやっと、睡魔に身を任せられる。

疲れたこの身を癒す至福の時・・・・!

自分の家のドアを開けようとした時だった。

ブ――――――ン、ブ――――――ン。

ポケットに入っている携帯が鳴った。

電話だ。疲れているんだ。もうとらないぞ。

俺は寝るんだ。・・・・だが一応、誰からかの確認はしよう。

Y先輩だ・・・orz

もし俺が起きていたのに電話を取らなかったことがY先輩にばれれば、

只事ではすまない。それは今日の出来事よりも怖いことだ。

「もしもし・・・・。」

「おう!和泉!お前今から車出せねぇ?」

「えっ、今からですか・・・?」

「嫌なら無理しなくていいよ?べ・つ・に。」

「出せます!」

急いでY先輩の家に向かった。

Y先輩は珍しく家の前に立っていて、手には小さな荷物を抱えていた。

「おう、和泉。悪いな。このDVD朝までに返さないと延滞でさ。」

それだけの為に読んだのか。あぁ、俺の睡眠・・・・。

「ところで、お前よく起きてたな。珍しい。なんかやってたの?」

思えば、この人からあの話を聞いたから、別荘に行くことになったんだ。

「それなんですけど・・・実は、この前Y先輩が言ってた、あの別荘の話。

俺と柏木とハルカちゃんとノゾミと、行ったんですよ。」

Y先輩が急に黙りこくった。

車内に沈黙が流れる。

やっぱり、行っちゃマズいところだったのか?

「ッあはは!うわー!じゃあもうバレたか!」

急に先輩が笑いだした。

どういうことだ?

「いや、悪い悪い!あんまりお前らが俺の話信じるもんだからさ、

面白くてなかなか作り話だって言えなかったんだよ。」

いやー、まさか本当に行っちゃうとは!もう少し笑ってたかったのに。

Y先輩が笑いながら言った。

作り話・・・?

どういうことだ?

「じゃあ、あの話は?」

「だから、全部ウソだって!行ってみたんなら分かるだろ。」

いやいやいや、そんなはずはない。

「いや、確かにあの別荘、ありましたよ!Y先輩の話した場所に!」

「はぁ?俺が言った場所?あそこにはただひらけた草っぱらがあるだけで、

ほかにはなんも無ぇよ。何言ってんのお前?」

Y先輩の口調が少し荒くなる。

「あったんですよ、別荘。俺らはそこに入りました。

そして、柏木とハルカちゃんは変なものまで見てるんです。」

「お前、俺のこと脅かそうとしてんの?あそこにゃなにもないんだよ!」

じゃあ、俺らが見て、触って、入ったあの別荘は、

一体なんだったのか?

先輩のDVDを返却した、それから数日後。

あの四人とY先輩とであの場所まで言った。

もちろん、昼の明るい時だ。

そこには、先輩の言うとおり、何もなかった。

ただ清々しい程の草原が視界いっぱいに広がっているだけだった。

怖い話投稿:ホラーテラー ホラテラマンさん  

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