僕はレンタカー屋でバイトしていた。
いつものように、空港まで、お客さんを迎えに行った。
お客さんは感じの良い老夫婦だった。
話しをすると、ツアーパックにレンタカーも含まれているが、高齢で運転に自信が無いとの事。
運転代行サービスは無いかと訊ねられ、できたら僕にやって欲しいと言われた。
丁度、明日は休みだったので、引き受けようとした。
すると、僕の相棒の豚、ピギーが「ブヒブヒーッ」と泣く。
ピギーは僕の作り出した幻覚の豚なので、他の人には聞こえない。
どうやら、ピギーは止めておけと言っているようだ。
僕はピギーの忠告に従う事にした。
次の朝、ピギーと朝の散歩に出かけた。
いつもの散歩コースを歩いていると、ピギーが道をそれて走り出した。
追いかけて行くと樹没した御嶽に出た。
何となく神聖な気持ちになる。
ピギーを探し、キョロキョロしていると、なんと名倉武人がそこにいた。
相変わらず真っ黒で、モジャモジャ頭だ。
『ジャングル』で会って以来久しぶりの再会だ。
翌日、返却時間を過ぎても老夫婦は現れなかった。
それは自殺したからだった。
観光地の岬から飛び降りだった。
観光地と言う事もあり、目撃者も多数あり、すぐに自殺と断定された。
僕は少しも驚かなかった。
こうなる事は昨日、武人から聞いていたからだ。
武人は何故だかピギーの言葉が解るらしい。
武人は語る、ピギーが言うには、あのアッチー(爺さん)は自殺する為に、この島に来たのだ。
一人で死ぬつもりだけどアッパー(婆さん)も、もってかれる。
アッチーの死を望む気持ちに呼応しマジムン(魔物)が集まってる。
アッパーのマブヤー(魂)まで黒く染まっている。
僕「助けないと!」
武人「やめとき‥死体が一つ増えるだけや」
僕「…」
武人「良かったな。ピギーが止めへんかったら、マア坊のマブヤーも黒く染まってたで」
それは死ぬと言う事なんだろう。
その日、武人を家に招いた。
門の前まで来たが、武人は家に入らなかった。
「俺はこの門より先には入れんわ」
武人はそう言って去って行った。
怖い話投稿:ホラーテラー マア坊さん
作者怖話