短編2
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出てくる。

初めて「それ」に気付いたのは半年前だった。

寝苦しくて、俺は真夜中に突然目覚めた。

冬もはじまるというのに寝汗をかいていた。

もう一眠りしようとしたが、なんだか頭が覚醒しはじめたみたいで、仕方なく枕元のタバコに手を伸ばし火をつけた。

煙を吐き出そうとしたとき違和感に気付いた。

喉のやたら奥の方になにかがつまっているような、いないような…?

気にしながら、咳払いを繰り返してみるが進展はなく、結局違和感はなくならず、その日はそのまま眠りに落ちた。

翌朝目覚めると違和感はなくなっていた。

ただ、

それから夜中に必ず目が覚めて、いつも違和感を感じイライラする毎日を迎えてしまう事になってしまった。

そんな毎日にいい加減うんざりして、病院に通ったが、何も異常はないらしく、原因不明。

寝なければ何もないだろうと起きている事が多くなり精神的にもかなりやられていった。

年もかわった頃、ある異変に気付いた。

喉の奥に感じていた違和感が、少しずつだが、あがってきている。

その頃には舌を反らせてみれば、舌先にあたるようなところまで違和感の元凶を感じるようになっていた。

舌先で確かめるそれは、つかみようのない形のように感じられた。

尖っているようで丸く。薄く毛のような物を感じる。

鏡で確認しても視認できないが確実にそこにあるような違和感。

指を突っ込み、引っ張りだそうとしても、なぜかそこに感じるのに、掴めない。

俺は薬なんてやってないし、今でも自分の精神状況は疲弊こそしているが、しっかりしていると思っている。

昨日の晩、いや今日の事になるのか。

はっきりちがう事があった。

「モウ スコシダカラ」

声が聞こえた気がして目覚めた。

いつにもまして口のなかに何かをかんじた。

初めて「それ」が口のなかで動いた。

(虫!!!)

気持ち悪くて、吐き出そうとする行動に意味はないと知りながら嗚咽に似た悲鳴を絞りだすが何もでてこない。

あわてて指を突っ込む。

初めて「それ」に触った。つかめたのに出す事ができない。

質感はあるのに出そうとひっぱるとなぜか掴みきれない。

あわてて鏡で確認した。

じっと正面を見据えるようにそれがいた。

そこで気を失ったんだと思う。

気付いたら朝だった。

今日も夜がやってくる。

俺は寝ない。

明日も。

もう次がある気がしないから。

あれはきっと俺にはもうどうしようもないんだと思う。

だからせめて寝ないでいようと思う。

怖い話投稿:ホラーテラー 10時08分さん  

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