中編5
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S岡

初投稿長文です。

S岡=仮名。

ちょうど10年前、俺が中2の時の話。

俺には小学校の頃から幼馴染みのS岡というやつがいた。

俺たちは釣りが好きでいつも学校帰りは近くの池で一緒釣りを楽しんでいた。(もちろん子供だけで立ち入っていい場所ではない)

山の中で真横に墓があり外灯もないので夏場でも18時にはかなり暗くなる。

それでも水は綺麗で魚も大きいので俺たちはその池が大好きだった。

8月15日。お盆にも限らず俺たちはいつも通り釣りを楽しんでいた。

迷信深い親戚のオッサンやおかんからはお盆には水場に近づくなとキツく言われていたが反抗期の俺たちには関係ない。

16時くらいから釣りを始め気付けば20時になっていた。いつもなら21時くらいでも平気で釣りを続けていたがその日は明らかに違った。

突然突風が吹きゾッとするほど気温が下がった。霊感がなくても身動きができなくなるような恐怖。真横の墓からおびただしい数の目線を感じる。

墓参りの人たちではない。

それは頭がなく胴体からそのまま指や耳、一つだけの目玉、そして大きな口をもつ毛むくじゃらの化け物だった。

同時にS岡も異変に気付いていた。

「なんかヤベェ!!逃げっぞS岡!!」

俺は道具も持たずに走り出した。S岡も…

だだし方向は真逆。S岡はまっすぐ墓にいる化け物に向かっていった。まるで大好きな女の子に急いで会いに行くかのように。薄気味悪い笑顔で。

俺は声が出なかった…止めることなんて出来ない。最低かもしれないけどとっさに自分だけは生きなければと思った。

S岡を置いてとにかく走った。大人を呼ばないと!

幸いS岡の家は池から10分くらいの場所。家にはお盆帰りで親戚がまたくさんいるはず……だったのだが……

そこに家族の姿はなく代わりにさっきの化け物が屋根やら庭やらに溢れていた。

とにかく泣き叫んだところまでは覚えているのだがそこで気を失った。

気が付けば近所の病院のベッドの上。おかんが泣いていた。どうやら4日も目を覚まさなかったらしい。

それから警察を名乗る大人が現れてS岡の事や15日の夜の事を聞いてきた。

俺は正直にあの夜の事を話した。信じてはくれないのは解っていたが気持ちの整理をしたかった。

だがおかんの口からは驚きの声は出なかった。

「やっぱり……だからいったでしょ!?」

おかん「ザジ、アナタあの池で毛むくじゃらの体に指やら目やらがついてる獣見なかった!?」

俺「…………」

おかん「見たのね………」

恥ずかしい話、アレの事を口に出すのも怖かった。

その反面震えが止まらない自分が滑稽に思えた。

おかん「…その中に幼い女の子がいなかった?」

俺「………?いや、見とらんけど」

おかん「まぁ、命があっただけ良かったわ。アナタはブサイクだから見初められなかったのね。」

俺「は?」

(うちのおかんはKYな上に口が悪い。)

おかん「お母さん隠し事とか嫌いだから話すけど……アナタが見たのは『奇地(キジ)』と言う土地神よ。神といっても奇地(キジ)事態に力はなく力の強い者に従う付き人のようなものね。よっぽどのことをしないかぎり人を襲うことはないわ。………ただ…」

俺「ただ…?」

おかん「私もあまり詳しくは知らないけど昔から女の子の方に惚れられたら絶対に帰って来れないって言われてるわ。」

俺「帰って来れんて意味わからん。S岡はどうなったんや。」

すると傍らのガタイのいい若い警察官が口を開いた

「まだ見つかっていないんだ。」

その漫画の様な聞きなれない会話たちに不謹慎にも少し笑ってしまったが、大人たちのきつい眼差しにすぐに黙った。

自分はあんなものを見たのに友達が行方不明になったのはくだらない嘘に思えた。

だがそれも翌日には信じざるを得なくなったのだが………

俺はその日のうちに退院してしばらく家で安静に過ごすことになった。

8月20日

家に届けられた地方新聞の朝刊にS岡であろう中学生の失踪記事が小さく載っていた………捜索が打ち切られたらしい。(正直そんなにすぐに打ち切られるのも信じられなかった)

昨日警察官たちに言われた言葉を思い出した。

「事故だと思って忘れなさい。他人に口外してはいけないよ。」

―あれから10年。

勿論忘れられるはずもなく24歳になった今でもロクに一人で夜道を歩けません。

それ以上のことは固くなに教えてもらえなかったのですが、この間偶然にもあの池で女の子と化け物を見たとことがあると言う同郷のT尾先輩に出会いました。

見たら絶対帰ってこれないはずの女の子を見て生きているT尾先輩。

その時俺はものすごい不安に教われました。

T尾先輩いわく

「女の子は昔から祀っている水子の霊。これがガキを連れてくのはあまり考えらんねぇな。」

とのこと。

俺「………どういう…ことですか………?」

背中が妙にうすら寒くなった…。

T尾先輩「ザジ、オマエの話を聞く限り俺はもう一体いたんじゃねえかと思う。」

その瞬間、この10年どうしても心に引っかっていたものの答えが出た。

実はあの日、俺とS岡は奇地(キジ)を見る1時間ほど前に、女の子ではなく池の中から釣りをしている俺らを睨む老婆を目撃していた。

(その時はお互いゴミか木の枝だろうと思ったし、本物だとしても話のネタに出来ると笑っていた。S岡は面白がってルアーでわざと狙ってた記憶がある)

つまり、あの日、S岡を連れていったのは………

T尾先輩「今となってはもうわかんねーが女の子よりそのババーの方が危険だったような気がするな。」

俺「……どうしたら、いいですかね………」

T尾先輩「どうもこうもねーだろ。怖えならお祓いでもしてもらえ。」

俺「そうじゃなくて!!S岡の家族に伝えるべきですよね!?」

T尾先輩「やめとけ。どうしようもないことを思い出させて悲しませる必要はねーだろ。」

俺は何も言えなかった……

T尾先輩が正しいように思えたしそうじゃないようにも思えた。

(俺が遺族なら家族の死の原因をしりたいんじゃないのか………?)

申し訳ありませんがこんな終わりかたです。

これを書き始めたのはT尾先輩の言葉に自分で答えが出せないからです。

今、おかんやS岡の家族に伝えるべきかどうか迷っています………。ご意見よろしくお願いします。

怖い話投稿:ホラーテラー ザジさん  

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