中編7
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目があっただけ

あれは約5年前、自分が専門学校に通っていたときの実体験です。

当時の俺は昼は学校。夜はバイトという毎日を過ごしていた。

そんな平凡な毎日を送っていたのだか、それはある日突然やってきた。

いい忘れたのだか俺には霊感なんてのは一切ない。

心霊スポットと呼ばれる場所にも行ったことはあるがまぁなにもなく…て感じ。今まで生きてきた中で一番恐怖を感じた出来事だった。

なんか話の順番がおかしくなったな…

元に戻す。

ある日の金曜日だった。

バイトを終え、独り暮らしのワンルームマンションに帰宅したのは午前1時を少し過ぎたころだった。

明日は学校も休み。バイトは夕方から。

風呂は明日起きたらでいいか〜などと考えながらテレビをつけてベッドに横になった。

しばらくすると眠気に襲われる。

テレビと電気を消すとすぐに眠りについた。

夏になるまえの涼しい季節風通しのいい部屋で、窓を開けていれば安眠は保証されていた。

まぁ真夏になればエアコンは必要だが。

どれくらい寝たんだろう。ふと目が覚めた。

時間を確認しようと携帯を手探りで探す。

あ〜たしか机の上…と思い体を少し起こした。

そのとき、カーテンが風でふわっと舞い上がった。

自然と目はそちらへ…

ん?なにか見えた?

カーテンは元に戻っていく。網戸の向こうに確かに人が立っているように見えた。しかしここはマンション2階。人の立つスペースはない。ふつうに見間違えだと思った。

携帯を取って時間を確認。午前2時47分。

全然寝てない。

携帯を枕元に置きまた寝ようと目を閉じた。

網戸が開く音がした。

その瞬間体が動かなくなった。

目は開けるが頭は動かない。

カーテンが風でふわっと舞い上がる。

女だ。女が窓枠に手をかけ部屋に入ろうとしている。

頭はパニック。冷や汗がジワッと背中を濡らす。

カーテンが元に戻る。

そこには完全に部屋に入ってきた女がいた。

足が見えている。

カーテンが膨らんでいる。スーっとカーテンを、ゆっくり腕で動かしている。

姿が見えた。

女。部屋には豆電球の明かりしかないが、その姿は鮮明ですごくはっきり見えた。

顔は髪で隠れて見えないが、綺麗な茶髪の『今どき』という言葉がピッタリな容姿の女がそこに立っていた。

女は床を滑るように近付いてきた。

ベッドの横に立つ女。

女から目が離せない俺。

女は着ているワンピースをはらりと脱いでしまった。

???

一瞬恐怖が薄まった。

しかしその『薄まった恐怖』はまたすぐ『濃く』なる事になった。

女が顔を近付けてきた。

髪がかかっていた顔がはっきり見えた瞬間、本当にチビるかと思った。

目の部分は穴が二つ空いているだけ。

鼻は切り落とされた様になっていた。

そして口。太い蛸糸の様なもので綺麗に縫われていた。

そして女は俺の上に股がった。

俺は仰向けで女は俺の胸の辺りに顔を押し当て、開かないであろう口でなにかモゴモゴ言っている。

全く聞き取れない。

そして顔がバッと此方を向いた。

その瞬間『あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙』と声をあげながら口を開こうとしだした。ブチブチと真ん中から口が開いていく。

女の声とブチブチという音が本当に今でも忘れられない。

そして口が完全に開く。

唇には糸がプラプラとぶら下がっている。

そして女は一言掠れた声で『も〜らった…』っと言った。

その時は恐怖でその言葉の意味を考える余裕はまったくなかった。

そして女はスッと立ち上がり脱いでいたワンピースをまた着て窓から出ていった。

文章では表しにくいんだが一挙一動が本当に人間の動きじゃなくて。

コマ送りで見ている様だった。

女が部屋から出ていった事で金縛りは解けていたが俺は暫くベッドから起き上がれずにいた。

そして時間が経つにつれ恐怖がまた沸き上がってきて。兎に角、一人でいることが堪らなく怖くて、携帯と財布とタバコを持って、鍵もかけずに近所のコンビニまでダッシュした。

コンビニに着いた俺は本当に安心して、店内をウロウロしながら泣きそうになっていた。

回りから見ればただの挙動不審なんだろな、とか思いながら冷静になっていくのに然程時間はかからなかった。

しかし、やはりマンションに帰るのは怖かったので明るくなるまで立ち読みしているふりをして時間を潰した。

時計はもう午前6時を指していた。

コンビニを出てマンションの前まで来た俺はやはり怖くて部屋に入れずにいた。

あの女がいない事は分かっているんだかすごく怖い。

俺は迷惑を承知で友人のSに電話した。

…出ない。

諦めて切ろうとした時。

『あ゙い…』

俺『あっS?朝早く悪いけど俺んち来てくれへん?』

S『あ?Mかよ。お前バカじゃねーの?6時だぜ?いくわけねー。じゃ…』

俺『待って!!ほんま頼むわ!!頼むし来て!!』

来て。いかねー。のやり取りを何度かしてSがやっと折れて来てくれた頃にはもう7時を過ぎていた。

マンションの前で全てを話したがSは信じてくれない。

まぁそれが普通だろう。

俺が逆の立場でも信じがたい話だ。

とりあえず部屋に入ろうというSの言葉で部屋に向かう。

ドアを開けるといつもとなに一つ変わらない部屋。

俺が入るのを躊躇っているとSは部屋に入ってベッドにドカッと座り。

『なんもねーじゃん』と不機嫌そうに言った。

俺『いや、だから窓から出て行ったんやって。』

S『あっ本当に網戸開いてら…』

Sも俺の様子を見て少しずつ信じ始めたみたいだった。

S『お前が見たのが幽霊だとしてお前はとり憑かれてるってことか?』

俺『それはわからん…』

S『心当たりとかねーの?』

俺『まったくない。ずっと学校とバイトで最近遊びに出てないし…』

S『ん〜まぁゴチャゴチャ言ってても仕方ないしな…お祓いとか行ったらいんじゃね?』

俺『お祓いか…それって寺?神社?』

S『寺だろ?俺がじぃちゃんに聞いてやんよ。』

Sは実家に住んでいて。お祖父さんお祖母さんも一緒に住んでいる。

Sが家に電話している間に俺もバイト先に休むという連絡をいれた。

とりあえず少し離れたところに結構有名なお寺があるらしくそこに向かうことになった。

Sのバイクで向かったのだが少しどころか結構遠くて道に迷いながら着いた頃にはもう昼を過ぎていた。

寺につくと中からとても優しそうなおじいさんがでてきた。

このおじいさんが住職さんで俺の顔見るなり細い目をカッと見開いて。

『はやく入りなさい。』と本堂へ連れていかれた。

Sは別の部屋に通されてしばらく一人で待たされた。

その間とにかく俺は落ち着かなくてなぜか帰りたいというか。逃げ出したい気持ちでいっぱいだった。

大きめの仏像があったんだがそれがすごい威圧感というか、兎に角仏像にすごい睨まれているような気がしていた。

住『落ち着かないですか?』

と言いながら住職が入って来た。

なにかすべてを見透かされているようで気分が悪かった。

住『少し話をしましょう。あなたには女の人が憑いています。少し…いやかなり厄介な者で私一人では払うことがでません。今一人の方が此方へ向かっています。その方は大変な力を持っています。その方に見てもらえば安心でしょう。

その方が到着されるまであなたが逃げられないようにするのが私の役目ですね。』

聞き終えると俺は立ち上がっていた。

自分の意志ではなかった。立ち上がった自分にビックリした。

え?なんで?って感じ。

とつぜん住職さんがお経を読み始めてそっから先の記憶はない。

気がついたら夜でSと知らないおばさんと住職さんが俺を揺すって起こした。

おば『もう大丈夫ね!』

住『そうですね。もう心配いりません。』

2人に深々と頭を下げて俺とSは帰路についた。

Sはこう行った。

『お前は女の霊につかれてたらしい。もともと自殺した女の霊だと言ってたけどあれはいろんな人間の怒りとか哀しみとか怨みの塊みたいなもんだっておばさんが言ってた。

よくわかんねぇけど負の感情は負の念になんたらとか言ってたな。

それで化け物みたくなった女の霊は人間にとり憑いて命を削るようになったらしいぜ。

力だけで言ったら死神とかそういうレベルだって言ってたよ。

払うことはできたが消すことは不可能に近いらしい。』

俺『てかなんでそんなんが俺についたんやろ。』

S『おばさんが言うには目があったんだろうってよ。』

俺『は?それだけ?』

S『しらねぇけどそう言ってたんだよ。たぶん街とかにあの霊は普通にいて目があったとかそんなんで憑いて来るんだろーよ。』

俺『マジか…てかあの、も〜らった。ってどう言う意味なんやろ…』

S『そりゃお前、命だ。人間の命を削るんだからよ。』俺『えっ?俺死ぬわけ?』S『しらねぇけど命削られてるんだから寿命が短くなったんじゃね?』

俺『…』

みなさんも目のやり場にご注意を。

急いで書いたので伝わりにくいかもですが。

読んで下さった方々ありがとうございました。

怖い話投稿:ホラーテラー しげぞーさん  

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