それまでそんな友人や知人なんて居はしなかった。
けれども一度会ってみたいものである。
霊能力者。
私は小さい頃から不思議でなんだかわからないことをいくつか見ている。
そう何度もある訳ではないが。
そんなことをどういう人に聞けばいいのか幼い頃にはわからなかったが、
大きくなるにつれて、ああいったことに答えられるのは霊能力者という人くらいだろうということだけは、わかってきていた。
ただ、どこに行けば会えるのか? どういったきっかけで会えるのか? わからない以上これは、運に任せるしかなかったわけだが。
そんな時、会社で新入社員式があり、私の部署にもひとり加わることになった。
それから会社での付き合いがはじまり、いろいろとアドバイスもしたりした。そんな時だった。
7月も半ばに差し掛かり、会社でもうちわを多用するようになったある日のことだった。
ふと、こんなことを私は口にしたのだ。
「あ〜あ、なにか涼しくなるような話でもないか。」
するとその新入社員は、
「えっ、先輩。そんなこと信じるんですか?」
と真剣な顔で聞かれたので、
いろいろと不思議なことを話したりした。
当時は怪奇現象のまっただ中に居たといっても過言ではない。
ただ、不思議と怖いという感じはなく、ときどきいたずらなんかをされたりするので、
それで困っているんだ。という話をしたと思う。
するとその新入社員は、
「それは先生に視てもらったほうがいい。」
「先生?」
私は聞き返した。するとこんなことを言い出したのだ。
「霊能力者です。」
って。
「へっ?」と言っているうちに新入社員くんは、携帯電話を取り出し、先生のところに連絡を入れているではないか。
「おいっ、ちょっ、ちょっ、おっ・・・!」
と言っている間に、お客様が来られた。
いろいろお話をして、商品についてお聞きになり、どうもありがとうございます。と言って振り向くと、
「8月の第二土曜日、先生の所まで行ってください。」
新入社員くん、こんな時はとても素早い!
シフトを見て決められたのだ。
行くのはよかったが、場所が場所だけに遠すぎる。電車を2本乗り継いで、タクシーを使って6時間近く掛かってやっと着いたのである。
霊能力者さん家。
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霊能力者さん家は海辺に近い、一戸建ての家だった。
家を見ると、新入社員くんが腕を振って待っている。
中に通されて、部屋の一室に。そこは6畳の間であった。
窓には欄干に花が飾ってあり、日当りのよい間取りとなっている。
新入社員くんとその部屋に座り込み、ふすま一枚隔てた所から声が聞こえてくる。
聞くと、新入社員くんのお母さんとお姉さんだと言っていた。先に相談をしているのだそうだ。
私は、あまり話をしない新入社員くんを横に置いて、部屋を見回した。するとびっくりした。
(あれはこの門のことだったんだ。)
新入社員くんが霊能力者さんと会う日取りを決めてから、その日に至るまで20日くらい日が開いていた。そんな時、私は会社の仮眠室で横たわり、夢を見たのだ。
それは真っ暗な、白い霧のようなものが垂れ込める場所で、私は何者かに引っ張られているのか、それとも押されているのか、もの凄い勢いで路地を進んでいるのだった。
場所は道路ではなく路地だ。地面が見えて、周りに一戸建ての家が建ち並んでいる。
ちなみにこの場所は、今回霊能力者さん、先生と呼ぶが、先生の家に来た道順とはなんの関係もなかったと思う。
ただただ私は狭い路地をもの凄い勢いで進んでいる。走っているのではないと思うが、細かい曲がり角や直線の道をまるで糸にでも引っ張られるかのように突き進んでいく。
そして細かい曲がり角を抜けて、そして
ピタッ!
と止まったのである。
目の前にあるのは、どこかの神社かお寺の入り口のすぐそばで来て止まったようだ。
門があった。
しっかり閉まっていて、中からは開くような気配すら感じられない。
【あれ〜いつ開くんだろ。】
なんて考えていたら、私の目が開きました。仮眠から目が覚めたのです。
変な夢だったな〜、おかしな夢だったな〜。
なんて思わしめる夢は、必ず後に何か出てくるということを、小さい頃からの経験で知っていた。
そして当日、先生の家の神棚を見て、「あの門だ」と感じた訳です。
そして新入社員くんのおばさんたちの話が終わり、私の番になったのです。
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お仏壇の前にあるテーブルを挟んで、私が仏壇の正面に、私から見て右手に新入社員くん、左に先生が座っています。
先生は60歳近いと思われるのだが、その声が、見掛けの年齢を裏切っていた。
大きくハキハキ喋るおじさんだった。
まず私に紙と鉛筆が渡された。
先生は、
「これに、生年月日と名前を書きなさい。」
スラスラと書き込むと、先生に手渡しました。
新入社員くんから聞いていたのですが、先生は、どうしてここに来たのか、ということをその紙に手を平行に持っていき、ゆっくり右に、左に動かすだけでわかるというのだ。
私はたいした理由があるわけではないので、(なにを言うのだろう・・・)とじーっと待っていた。すると先生開口一番こう言われたのだ。
「あんたはふたつの意思を持って生きておる」
驚いたのなんのって!
私はそれについては今まで誰にも話したことなどなかった。それにその「ふたつの意思」というのは私は「もうひとつの性格」ととらえていたのだ。
先生に「ふたつの意思」と言われて、(ああ、この先生にならわかるかもしれない。何もかも包み隠さず話ができる人に出会うことができた。)
そして、私は話し始めました。
まず、この身体に入る前のことから順を追って話し始めました。
〈続きます〉
怖い話投稿:ホラーテラー 秋帆さん
作者怖話